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(5)マラッカの史跡について(見学日:2月24日)
 観光の中心となるのがマラッカ川の畔にあるダッチスクエア(ホテルから徒歩10分)である。海洋博物館もここから5分。スクエアにある歴史博物館のほか丘に登ればマラッカ海峡が一望できる。丘の上にはセントポール教会(ザビエルの遺体が一時安置された)があり、反対側を下りるとサンチャゴ砦(1511年にポルトガルが築いた要塞の一部)、スルタン・パレス(文化博物館)、独立宣言記念館などがある。
 また、マラッカ川を渡ると、100年前のペラナカンの家並みが残るチャイナタウンなどがあり、かつてのマラッカの人々の暮らしをかいま見ることができる。
 ちょうど訪問時は旧正月最後の日でお祝いパレードに出合い、華やいだ雰囲気にひたることができた。
 
 予定外であったが入館した。おそらく博物館関係者には海洋博物館より当館の方が見る価値があるのではないかと思われる。1階はマラッカにかかわる歴史的な実物展示と民俗関連(農業、漁業、川舟、水上家屋)の復元展示。2階は現代アートほか王室や人々の生活関連の資料などを展示してある。
 また、鄭和文物記念館も併設してあり、鄭和の航海に関する説明とマラッカとのかかわり、そして各国の鄭和研究についての取り組みなどが解説してある。ただし内容的にはいま一つ物足りない。
 この歴史博物館もマラッカコーポレーションが運営しており、昨日われわれが海洋博物館を訪問したとの情報が入っていたらしく、館長(Khamis氏)から声をかけられ挨拶を交わした。
 
応対者 担当:Dy Manager (Corporate Public Relations)
氏名:Valerie Mok
・概要
 コンテナ取扱量世界第2位のシンガポール。そのシンガポールのコンテナターミナルの運営と管理を行っているPSAを訪ねた。まずPSAビル1階のロビーにあるコンテナヤードのジオラマで解説を受けとあと、36階の小会議室で説明を受けた。事前に約10分程度のビデオ(日本語)を見せていただいた。窓からはシンガポール海峡やインドネシア領の島が見える絶景。シンガポールコンテナターミナルは極力人力を使わず、コンピュータ化され、流水式ゲート、すばやい積み替え、ペーパレスなどで、現在2つのヤードに合計で6つのバースが稼動している。同社はシンガポールばかりでなく10カ国で15のプロジェクトを実施している。このあと、コンテナターミナルをリムジンに乗って見学した。
 海外からの視察も多く、視察マニュアルがあり、ビデオの解説やコンテナターミナルの見学で約90分コースになっている。
・海洋博物館について(廃館)
 コンテナターミナルを主眼において訪問したが、かつて同社が経営し、現在は廃館してしまった海洋博物館(セットーサ島)についてもいろいろと話をうかがうことができた。今回応対して下さったValerie Mok氏は当時学芸員として博物館の運営に携わっていたとのこと。
 博物館はセントーサ島に1970年代にオープンした。近海で使われた木造船やジャンク、漁撈具、PSAの活動内容や船の模型、世界の海や船に関する切手、そして年代ものの蒸気動力によるクレーンなどが展示されていた。
 廃館になった理由として、セントーサ入島料が10Sドルと比較的高かったこと、博物館の位置がセントーサ島の中でもはずれにあり、しかもモノレールの駅がなかったこと、セントーサ島よりオーチャードなどの繁華街のほうが地元民や観光客に人気があったこと、などを上げられた。しかし、一番の理由は「人々の博物館への興味が薄かった」ことのようである。社内(当時PSAは政府組織の一部)にも博物館は金がかかるという批判があり、その後、マリタイムセンターができるので、ショーケースコーナーを設け、そこに資料を移す計画だったが、これも頓挫、現在に至っている。
 しかし、Mok氏はじめ社内、港湾関連の機関の間にも海洋博物館へのこだわりがあるようで、日本からの博物館関係者の視察、情報交換は大いに歓迎するとのことだった。
 
 おもに東アジアの歴史について、民俗衣装、装飾品、祭事、信仰について実物資料で展示。とくにイスラム、ヒンズー、仏教関連の経典や関連資料は充実。照明を含めて展示手法があまり日本ではみられない天井からのピンスポット方式などを取り入れている。館内も広く、ちょうど中学校が見学に訪れていた。
 また、ミュージアムショップはスペースが非常に広く販売品種も充実していた。
 
1. マレーシア国立博物館
 時間の都合上、展示全体をみることはできなかったが、水中考古学の成果による沈没船のコーナーは大変興味深かった。日本各地で見られる輸入陶器類との共通性も大で「海の道」を体感できる貴重な博物館であると思う。日本でも感じることだが、国立の館は地方の博物館の数十館に相当すると考えている。これはマレーシアでも同様に思う。マレーシアにはいりできるだけ早い機会に国立博物館を見学することは、その後のマレーシアの博物館施設を見学する上において有益である。
 
2. ペトロサイエンス
 マレーシアの石油資本による潤沢な資金をもって運営されているだけに、設備等が整っていた。日本の博物館施設にはうらやましいかぎりである。展示に関してはパネル・ジオラマを多用しているが、日本の博物館関係者には展示自体はそこまで見入るということは疑問がある。ただし、訪問時には見られなかったが、体験学習に高度なプログラムを取り組んでいるとの説明であったので、この部分は参考になる点があるようだ。
 
3. マレーシア国立歴史博物館
 1996年、マレーシア国立博物館から愛国精神を養うために設立された博物館であるが、歴史を専門に扱っているため大変興味深かった。特に館内説明してくれた教育普及担当の若い学芸員の整理されたコメントはありがたかった。ここ数年間に採用された若手学芸員が60%を占めるとのことで、今後の交流もますます期待できよう。展示の手法は、日本の国立博物館(東京・京都)などと共通していた。マレーシアの国立博物館は、様々な援助を通じて日本の国立(特に国立民族学博物館)と交流をおこなっているため、当然といえるのかもしれない。マレーシア国立博物館と同様に見学の価値があると判断できる。
 
4. マラッカ海洋博物館・マラッカ歴史博物館
 マレーシア国立博物館・同歴史博物館を見学して、マラッカ海洋博物館を見学してみるとどうしても内容的に見劣りしてしまった。資料的にも、国立博物館の資料のごく一部をあらためて見学するのと同様であり、全体で時間を割いて見学する必要性は感じられなかった。それよりはむしろマラッカ歴史博物館のほうが内容的にも多彩であり、マラッカに重点を置いた展示がなされており、手法的にも参考になる点があるように感じられた。また、マラッカは町並みそのものに十分な価値があり、いくら時間があっても不足する内容の濃さがあると思われる。日本・東アジアの交流史において大きな意義をもつマラッカは今回の目玉となる場所であると考える。
 
5. PSA(シンガポール)
 個人的にコンテナ埠頭にはいったことがなかったために大変興味深かった。クアラルンプール・マラッカと海運における歴史的な時代背景が頭にはいっていたため、現代における現状が認識でき、マラッカ海峡(広い意味での)の重要性が伝わってきた。海事関係博物館関係者にも圧倒的スケールで迫るものがあると思う。机上では理解できても、やはり現場での臨場感にはかなわないとつくづく考えさせられた。見学するのに十分な価値がある。
 
6. シンガポール文明博物館
 シンガポール文明博物館は、シンガポールそのものというより、シンガポールを中心にしたアジア各地の文化・歴史・風俗を展示した博物館である。入場前はそこまで期待していなかったが、内容は十分すぎるほど充実していた。また、豊富な資金のためか展示方法等、最先端のライティング等なされており見学に値する。また、今回みた博物館施設のなかで最もミュージアムショップが充実していたようである。この博物館でも学校教育と上手く連携しているようであった。
 
 見学博物館はマレーシア内5館、シンガポール内1館。また施設としてはシンガポールPSAコンテナターミナルを見学した。
 各博物館の展示内容についてその貴重度、重要度は素人ながら非常に必見の価値があるもと思われ、専門家である博物館関係者にとっては時間がいくらあっても足りないに違いない。同時に応対していただいた各館長や関係者からは、日本の博物館が抱える、あるいは取り組んでいる課題と同様の、たとえば入場者数の伸び悩みや学校教育との連携についての意見交換などができ、これについても直接日本の博物館関係者と意見交換することは貴重な情報交換になると思われる。各氏は日本の奈良や姫路(世界遺産姫路城)を訪ねたこともあり、日本の文化財や博物館に親しみをもっている。
 また、とくにマレーシアでは、本事前調査の申し込みを受けて各博物館の個人対応ではなく、博物館を管轄する連邦政府(国立博物館)やミュージアムコーポレーション(マラッカ海洋博物館)が窓口となって対応していただいた。
 さらに、シンガポールのPSAでは世界第2位のコンテナ物流の現場をかいま見ることができたほか、かつて同社が運営し、現在は廃館となったシンガポール海洋博物館についての運営上の問題や経緯を知ることができた。同社や海運・港湾関係者の間では今もって海洋博物館へのこだわりを捨て切ることができない雰囲気があり、海外の博物館関係者との交流は非常に貴重なチャンスであることと認識しているようである。
 以上の調査結果、ならびに時間的なことも踏まえ、次回の本実施の際には下記の博物館を見学したい。
・マレーシア 国立博物館 関係者との懇談
  歴史博物館 関係者との懇談
  ペトロサイエンス 自由見学
  マラッカ海洋博物館 関係者との面談
  マラッカ歴史博物館 関係者との面談
・シンガポール PSAコンテナターミナル 関係者との面談
    シンガポール文明博物館 関係者との面談
以上







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