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時代のコンセプト「カキノタネ」
 こういう時代の中でコンセプトがピシッと分かれました。「カキノタネ」と覚えておいて下さい。これで今の消費者は一発でわかります。
 今、消費者が一番大切にしているのが身体、健康、環境です。そしてお年寄りが多くなって介護です。これが消費者の一番大事なコンセプトです。
 「カ」は環境、身体、介護です。
 「キ」は綺麗、美容です、美しくありたい。これをヘルシー&ビューティー(H&B)といいます。健康でそして美しく、これにサプリメントがつきます。
 サプリメント。今年の長者番付1位から40位まで全部、見事にはいったのがこの人達です。今までの不動産とか、証券だとか全然いなくなっちゃった。アッという間に変わりました。
 「ノ」は呑気です、癒しです。1980年代の音楽、露天風呂、ブームです。
 「タ」は楽しい遊びです。健康で、綺麗になったら何をしたいですか。働きたくない、遊びたいんですよ。だから遊びというのがものすごく大事になってきます。
 「ネ」は年季です。専門特化したものがいいんです。あそこの商品じゃなくちゃ嫌だ。あそこのケーキじゃなくちゃ嫌だというのがこの時代なんです。これを今の若い人は何て呼ぶかというと、カリスマと呼ぶんです。カリスマ店員とかカリスマ美容師とか、カリスマ料理人とかは、皆ここからでてきたんです。専門特化した人、これがいいんです。
 「カ、キ、ノ、タ、ネ」これで覚えておくと今の消費者の流れ、動きというのが全部わかります。
 
銀行が変わる
 そして今もう一つ、消費者と共に大きく変わっていったのが、金融なんです。宮崎銀行、宮崎太陽銀行、みんなドンドン変わっていったんです。わからないうちに全然変わっていっているんです。
 さあ、4月1日から皆さんのところに、早い人は今日あたりから、銀行から、「社長。決裁性預金作って下さい」って言って来ますよ。
 普通預金と当座預金、そして新しく決裁性預金。決裁性預金は絶対ペイオフしない、だから皆そこに変えるんです。しかし、金利がつかない、だけど何億円でもペイオフしないんで、皆この決裁性預金に振り替える。ということは金融機関は今度は貸し出しのところが当然減りますよね。
 金融機関はルールがありまして、自分の銀行が持ってる月末の預金残高の自己資本比率が、地方銀行ですと4%から8%と決められてるんです。この自己資本比率で預金を割った額×10倍が金を貸していい額なんです。だから自己資本比率が低いと、低い額になってしまって貸せなくなってしまうんです。
 そこへもってきて、この4月1日から何と保証協会が貸出額を大幅に減額します。ですから昔はお金借りるとこは保証協会でした。もう駄目です。今度は合せ融資、部分融資といって2割〜3割必ずプロパーが入らないと駄目なんです。宮崎銀行が20%、保証協会が80%。ところが宮崎銀行は、皆さんのところが正常債券ならOKですけど、要注意だとか、要管理だと貸しません。そうするとどうなる、保証協会から受けられません。これが4月1日から始まります。
 
会場風景
 
 だから地方の会社がガタガタ始まってます。なぜかと言うと銀行が、3月末迄に地方の会社を振り分けしてるんです。要するに、残す会社と駄目な会社にドンドン振り分けています。
 今、地方の三大不良債権というのは、1位建設、土木、2位保険、旅館、ホテル、3位第三セクター、この順で悪いです。で、この部分を圧縮していくんです。東京三菱銀行は昨年ほとんどこの振り分けが終わりました。りそな銀行は政府のお金を入れましたんで、これもほとんど終わりました。UFJ銀行は東京三菱と合併のため、ほとんど終わります。そして三井住友銀行が2〜3日前から大騒ぎになってますね。要するに金融庁入り込みです。全部もう1回やり直しです、三井住友は。
 これが終わると5月、6月から金融庁は全国のいわゆる国銀行、宮崎県ですと宮崎銀行と思いますが、こういう県庁の出納をやっている銀行が全国に50位ありますが、この銀行に査察が一斉に入ります。そうすると、今まで訳のわからなかった債権が全部わかります。そして引当てをランク落しされるんです。今度は強制的に始末させられます。ですから競争と排除の時代が滅茶苦茶起きてくるんです。そうするとまた、ちゃんと商売するところがでてくる。世の中、失った者が出れば必ず儲かるチャンスがあるんです。
 都市銀行が、皆さんのところへ来ます。全国に支店を作り始めました。三菱銀行宮崎支店、今まであってもビルの8階とか9階にありました。どうしてだと言ったら一切、一般出納なんてやらない。貸し出し専門、中小企業貸し出し3000万円まで、小口金融です。そして無担保、無保証です。多い人だと7000万円位貸します。金利高いです。大体3%〜4%です。新生銀行でしたら6%〜8%位取ります。街金並みの金利を取ります。でも都市銀行が保証協会の枠を埋めていきます。
 もし皆さんの中で本当に会社苦しい方がいたら、都市銀行から借りて、保証協会の分を一気に払ってしまうんです、借り換えしてね。なぜかと言うと、保証協会とか国金とか、いわゆる政府系の金融機関は、倒産したり会社が駄目になると、残債務を放棄する方法がないんです。法律で決まってるんです。だから死ぬまで、子供の代まで払わないといけません。今は都市銀行や大手銀行から借りるとファンドというのがありまして、それが皆さんの借金を全部買い取ってくれるんです。そうすると連帯保証債務買い取りというものも一緒にやってくれるんで、だから、自宅は残るんです。
 ところが、そこに、皆さんの借金に保証協会とか国金とかが沢山ついていると買い取れないんです。ですから、なるべくそういうプロパー資金に移動させていくんです。今東京なんか、ドンドン移動させています。
 
事業再生ファンド
 皆さんのビルなんかを買うの簡単なんですよ。私共に連絡をくれればすぐ見積もって買い取ります。時価で金融機関と僕等で話し合って決めます。
 問題はその次なんです、エグジット、出口といいますよ。買うのは簡単なんですけど、私等が持っておくことは出来ないんです。皆さんが買い戻してくれないと駄目なんです。
 どれ位かというと一年以内なら大体10%+αです。私共の買った10%+αで買い戻してもらいます。10億円で買ったビル、でも今3億円しかない。私共は3億円で買って連帯保証も皆、買い戻すんですから、残債がなくなります。そうすると3億3000万円以上で買い取ってほしいんです。
 その時、何を調べるかというと、皆さんの会社の業態を調べさせてもらいます。営業利益プラス原価償却、これを金額だけを見るんです。営業利益プラス原価償却、これを借入金で割るんです。どれ位なってるかなあ。ここが10から30位の間だとすると、あなたの会社のキャッシュフローで借入金が返済できる限界は10年から30年かかるというふうに見ていくんです。そうすると、半分位は担保としてみると半分がなくなる。30年の方なら15年、40年の方なら20年、こんなふうになってくる。そうすると地方銀行が今許されているのは、10年から20年以内です。だから、その数字がこの中に入っていると助けてくれるんです。これが30年、40年になってくると、営業利益がマイナスですとか、原価償却とってませんなんていうと、これは銀行から捨てられます。
 ですから、この数字がある程度上がると、私共で3億円で買ったものをこの会社は10年で返せるとわかれば、ゴーサインを出します。そうすると、我々が行って買って来て、アッという間に資金を圧縮してしまいます。これが事業再生ファンドって言います。今こういうのが許されているんです。だから破産しなくても助かるんです。ところが、これが赤字で原価償却がとれてませんなんていうことになると、助けられないんです。そうすると何をさせるかというとM&Aといって合併させるんです。
 
M&Aの時代
 これから皆さんの産業は無茶苦茶なM&Aの時代に入ってくるんです。成熟産業ってのは、圧倒的に大きくする方法は一つしかない、合併なんです。運送業界ではM&Aの時代に入ります。金融機関が、このM&Aをこれからドンドン進めていきます。
 佐川急便さんの話をします。佐川急便さんに関っていて非常におもしかったのは佐川 清さんという人は1回も社長さんやったことないんです。「清和商事」という会社を作ったんですが、長男が社長になってまして、本人1回も社長になったことないんです。死ぬまで会長と呼ばれていましたが、自分が会社の代表になったことは一度もないんです。なぜかって言ったら、見事にM&Aをドンドンやっていたからなんです。東京佐川なんて、ご存知と思いますが、あれ渡辺運送っていったんですね。渡辺さんという人が運送屋してたんです、そしてM&Aしたんです。近畿運送も合併して大阪佐川にして、九州だけでしょう、自分で作ったのは。合併だけで大きくなったようなものです。
 
商売の基本
 商売というのは、あまり難しくないんです。商売というのは基本は簡単なんです。誰でもできるんです。なぜなら利権プラス暖簾、プラス技術、プラス情報、プラス運っていうんです。これがあれば誰でも成功するんです。
 利権、どこどこのJRに輸送業で入れるとか、JAに入れるとか、これは利権なんです。
 利権を得るためには何が必要か、暖簾です。これ信用なんです。信用がないと利権は取れないです。その信用はどうやって作るかというと技術かサービスなんです。ただアホみたいなことやってたって駄目です。本当にぎっちりやる、これが技術です。この、技術とかサービスというのはどんな業界にも必要なんです。
 そして情報です。今度はどこに新しいものがあるか、どこに新しいお客さんがいるか、これを情報といいます。そして多少の運が必要なんです。これがなければ商売は絶対に成功しないんです。
 
直接金融に戻れ
 そこで私は最後に申し上げますが、丁度今から5年位前、私の会社に一人、29才の青年が訪ねて来ました。
「何やってんだ」
「ITやってます」
「ITやってる。どうなんだ」
「はあ、お金どこも借りられないんです。駄目なんです」
「で、見込みはどうなんだ」
「いや、絶対成功します。間違いないです」
「しかし、ITは危ないぞ」
「いや、自分達は絶対自信持ってます」
「ホントかね。じゃ、銀行が駄目なら、秩父に金持ちが一人いる。こんなの大好きなおやじだから、その人が金貸してくれたら本物だ。金出してもらえるか、行って来い」
 その後、僕は忘れてました。そうしたら何と2年後、1日で800年分の経常利益を出した男がいます。誰だか知ってますか、楽天、三木谷氏です。
 次に28才の青年が来ましたよ、同じように。
「何やってるんだ」
「ディスコやってます。女の子にミニ穿かせて扇子持たせてやってました。防衛大に行って、日商岩井に行って、いつのまにかこんなことやってます」
「儲かるかね」
「儲かりますよ、でも会社取られちゃいました」
「そうか、それで次何をやるの」
「何やったらいいでしょう。軽作業でもやりますかね。これから人材派遣でもやります」
そして人材派遣やっていた。
「売上げいくらになった」
「いや、まだ1億ちょっとですよ。また新しいことやりたいんですよね」
「やれよ」
「何がいいですかね」
「派遣の仕事やってるんだろう。人材派遣の仕事ちゃんとやればいいじゃないか」
「金がないんですよ」
「じゃ上場するか」
「上場。できませんよ、そんなの」
「いや、できるよ。今は簡単に出来るよ、昔と違って。教えてやるから」
 上場する基準、IPOって言うんですが、その基準の中に特殊なやつがある、それを使ってやるんです。一発でジャスダックに上場させちゃったんです。そして彼が30億円近い金を一瞬にして手にしたんです。丁度そこに福岡で介護をやっていた会社が売りに出ました。
「おい、折口君、これ買えや」
と言って買わしたのが「グッドウィルコムスン」です。アッという間に400億円ですよ、まだ30いくつです。
 新潟の三条というところに6軒のエステティックサロンやってた社長が私のところにやって来ました。
「助けてください。もうお金がありませんけど、私は日本一のエステティックサロンをやりたいんです」
「今どこにいるの」
「車の中で生活してるんです、税金も家賃もかからないから」
「駄目だよ。よし500万円作って来い、集めて来い」
「500万集めてどうするんですか」
「いいから黙って集めて来い。どんなふうにしてもいいから」
金を作るのに4つの方法しかないんです。金がなかったら、借りる、集める、売る、盗む、この4つしかない。
「盗んだら捕まるから、何でもいいから集めて来い」
「500万できました。集めて来ました」
「よし、じゃ行くぞ。まず、この車を売れ」
「売ってどうするんですか」
「これ売って、ベンツかBMW、中古でも何でもいいから買え」
「え」
「いいから買え。スーツも2万5000円のじゃ駄目だ。伊勢丹行って20万位のやつ買って来い」
「20万ですか」
「おお、そしてこの地区で一番いいマンション一つ借りる」
「はあ」
「よし行くぞ」
 今見て下さい。148店、従業員1800人、売上げ1010億円、日本で4番目のエステティックサロンになりました。
 お金じゃないんです、実は。借りることばかり考えると間接金融といって、有利子負債ばかり増えるんです。お金は集めるんです。戦前の社長は誰も金なんか借りなかったんですよ。
 金借りられなかった、銀行なんか来なかったんです、皆親戚や知人で集めたんですよ。そして自分の兄弟を集めてやったんです。だから日本は強かったんです。金を借りることを覚えちゃったのは昭和30年以降です。もう1回原点に戻ればいいんです。これを直接金融といいます。お金借りるのを間接金融といいます。これからは皆さん、直接金融を一番早く覚えた人が必ず成功する。どんな商売でもいいんです。一つやる。もし、喰えなかったら二つ、三つやってもいいんです。
 こういうのがあるんです。若い人が東京の有名な饅頭屋さんの饅頭を、福島県の白川で売ってるんです。白川の饅頭屋さんは東京では売れないですよ、だけど東京にある有名な饅頭屋は、全国に発信できる。これがインターネットです。
 今、場所や地域など全く関係なく動く時代なんです。こういう時代に、いかに自分が身体の向きをスパスパッと変えられるか、これが大事です。
 
会計と経営が共通言語
 ですからまず自分の仕事を一生懸命やることです。ただし条件があります。経理が弱かったら無免許運転です。これからの時代は、会計と経営が共通の言語だと思って下さい。特に若い方はこれがないと絶対駄目です。俺は経理に自信がない、運転に自信があっても経理に自信がない。漫画でいいんです、漫画で簿記をやって下さい、やり方は覚えなくていいんです。仕組みを覚えて下さい。お金はどうやって動いていくのか、その仕組みだけ覚えて下さい、これだけでOKです。共通言語、これがやれない人は駄目です。
 
柔らかい発想
 それからあと一つはM&Aです。徹底したM&Aを勉強して下さい。これが絶対これから勝利する。これから宮崎県の次の世代を背負っていく皆さんに、必ずM&Aのトップが出てきます、その中からこの業界のトップが出てきます。そして、もうちょっと何かやろうかな、他の産業もやろうかなと思う人は、全く異質のものでいいんです。あるお客さんで、お父さんは建築屋さん、息子さんはスポーツ屋さん、そして今の息子さんはITの情報機器の会社になっちゃった。会社は同じだけど名前はコロコロ変わっていって、創業70年になっちゃいました。いつも成長しています。子供の代になって変わっても成長しています。これ位の柔らかい発想をしないと駄目だということなんです。
 皆さんの業界は絶対になくなりません。運輸業界はどんなになっても誰か残ってやるんです。でも、このままでいくとあなたの会社がなくなる。これを忘れないで下さい。
 どうも有難うございました。







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