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Lecture
平成17年物流講演会
負けてたまるか!中小企業
 
 
事業再生コンサルタント
立川昭吾
日時 平成17年2月3日
場所 ウェルシティ宮崎
主催 (財)九州運輸振興センター
(社)宮崎県トラック協会
後援 国土交通省九州運輸局
 
 皆さん、私のことは誰もご存知ないと思います。
 コンサルタントというのは日本で何千、何万といらっしゃると思いますが、その中で本人が直接小説になったのは私だけと思います。
 小説だけじゃなくて、まんが「少年サンデー」にも連載されて、それから私をモデルにして映画が3本できてるんです。今、私、東映の映画俳優として登録されている俳優さんなんです。
 
35才、子会社社長
 何で私はそんなふうになっちゃったかと言いますと、今、ご紹介いただいたように、私は35才まで全く普通のサラリーマンで、普通の生活をしていました。それがある日突然役員室に呼ばれまして、子会社の社長を命ぜられたんです。私は35才で子会社の社長をやることになりました。
 その時その会社の赤字が既に4億6000万円、もう全くどうしようもないとこまでいってたんです。私はサラリーマンでしたから会社なんて簡単だと思っていたんです。売上げを上げればいいんじゃないのって引受けちゃったんです。しかし、会社というのは4億円もの赤字を出しちゃうと絶対元には戻せないんです。それに気がつかなかったんです。利益を生むということは簡単じゃないんです。
 でも、何とかやっていたんです。そしてようやく3年から4年経って、月次でやっと黒字が出たんです。累損は解消できません。そしたらその時に親会社がおかしくなってきたんです。今度は自分の親会社、上場会社がおかしくなっちゃった。そうすると、どこからもお金を借りられない。絶体絶命になっちゃいました。そしたら簡単です、役員が「会社辞めたら」っていうんです。辞めたらなんて、私45人も雇って23年もやっていて、辞めたらなんて簡単に言われたら困るんです。これは困りました、すごく悩みました。
 結局、親会社の命令で私は平成3年に会社を清算、倒産させられました。
 
44才、倒産会社社長
 私は倒産会社の社長になりました。全部無くしましたね、お陰で。株や金、自己責任ですから全部無くなりました。アッという間に無くなりました。44才どうすりゃいいんだ。正直こんなことおかしいと思いました。そこで、もう一回勉強しようと思いました。会社ってよく判っていなかったんです。だから、勉強しました。包括根保証制度、連帯保証制度、ノンリコース、小切手・手形の不渡り時間なんか、会社の仕組みを一生懸命勉強しました。
 
講演中の立川講師
 
TSK設立
 そうしている内に東京商工会議所が、
「立川さんあんた倒産したんだよね。今、バブルが崩壊して相談にものすごく来るんだよ。悪いけどあんた窓口に立ってくれないか」
ということで、窓口に立っていたら、いっぱい来るんです、そんな相談者が。相談にのってる内に会社でも作ろうかと思い始めました。それで、立川総合研究、TSKを作ったんです。
 
映画「夜逃屋本舗」のモデル
 当時サラ金で皆、悩んでいましたから、「すみません。私サラ金で多重債務者なんですけど、どうしたらいいでしょうか」なんて、どんどん相談に来るんです。その頃、大体自己破産の仕方はわかってたんですが、私は弁護士ではありませんのでそれを教えると非弁といって弁護士法違反になる。だから教えられない。だから私は何を教えたか。逃がしたんです。夜逃げです。夜逃げに関しては私、日本で一番詳しいんです。多分夜逃げの方法で私にかなう奴いないと思います。
 ある日私の友達がやって来て、私の仕事を見ましておもしろいと言うんです。おもしろいから映画化しようと言うんです。それで映画「夜逃屋本舗」ができたんです。
 また、私、日本の中小企業の社長の奥さんや子供達を倒産の際のトラブルから助けてあげなければいけないと思って、「妻達の倒産回避マニュアル」という本を出しました。その本を映画化したのが「平成金融道マルヒの女」です。
 倒産してから10年です。もの凄く大きな変化です。私達よく失われた10年と言いますが、私と同じで、日本も激変していったんです。
 
来賓ご挨拶 九州運輸局次長 寺西達弥様
 
失われた10年、激変した10年
 今日は皆さんにまず最初の質問を致します。
 「貴方は今、不況だと思いますか」ここにいらっしゃる経営者の8割の方が不況ですと答えます。なぜなら我が国は85%が赤字になっていますから。貴方のお嬢さんや奥さんを呼んで、「不況ですか」と聞いてみます。
「え、不況。不況みたいね」
まるで他人事のようにいいます。
 この前、3人のイギリス人の社長を、シンポジウムをやるために東京に集めました。彼らは、イギリスでは日本はすごい不況だと書かれているから、大変なんだろうなと心構えをして来ました。
 新宿にある京王プラザホテルにお泊めしました。そこのレストランでランチを食べました。4000円です。どこも満杯です。2時間待ち、1時間待ち。
 ルイ・ヴィトン、グッチ、シャネルの店のある表参道に連れて行きました。若い20代の女の子が何十万円もするバックをバンバン買っていくんです、それも現金で。イギリス人のひとりが聞きました。
「ミスター立川、日本は不況ですよね」
「はい不況ですよ」
「こういうのは我が国では不況とは言いません。好景気と言うんです」
 新幹線に乗ってみて下さい。のぞみのグリーン車がドンドン増結されています。グリーン車満杯、自由席満杯、真中の指定席ガラガラです。
 バー、クラブみて下さい。1階の焼き鳥屋さん満杯、銀座辺りですと最上階のクラブ、水一杯で5万円ですが、満杯です、真中のお店ガラガラです。
 どうなったんですか、何が起こったんですか、ここが判らないと社会は判らない。
 
個人資産動き出す
 今、会社の経営じゃないお金が動き出したんです。日本は1400兆円の個人資産があると言われています。でも本当の預貯金は700〜900兆円位です。このお金が動き始めたんです。65才以上の人が2500万円持っています。夫婦で5000万円持っています。これ以下でしたら貧乏な人なんです。
 恐ろしいのは、このご夫婦が平均寿命男性78才、女性85才で、25年間生活できるだけのお金を残して死んでいる。それでどうなったかと言うと、50才代の団塊の世代がそれを相続してるんです。何も働かないでお爺ちゃん、お婆ちゃんが稼いでくれたお金をそっくり頂いて生活しているんです。
 
女時文化の始まり
 そして、平成7年、我が国に女時文化が起きたんです。この時から30年間女性と子供が全ての主流になっていく時代に入っていったんです。
 我が国は室町時代から文化史観的に言いますと50年間男性の時代、30年間女性の時代を続けているそうです。
 1995年から女性の時代に入ってきたんです。ちなみに男の時代、男時文化は戦争の時代だそうです。だから、昭和の50年間は戦争ばかりでした。そして女時文化は天地災害が無茶苦茶多いです、これが特徴だそうです。ですから、大きな災害とか地震というのは、大体この女時文化に起きているんです、関東大震災とか。確かに女時文化に入ってきているんです。
 では、これは何を表すかと言いますと、今日ここにいらっしゃる大半の方は、貴方が稼いだ金を使わずに死んでいきます。あなたのお金は、妻と子供が全部使っていきます。だから、車でも家でも何でも、女性の意見が最優先されちゃうということです。
 
開会挨拶 (社)宮崎県トラック協会会長 草水正義様
 
勝ち組、負け組
 この様な時代背景の中に、皆さん置かれているんです。もっと詳しくご説明しますと、年収2500万円取っている人のことをお金持ちと言います。今日本に8万人いるんです。1000万円の年収取ってる人は157万人いるんです。小金持ちと言います。年収500〜1000万円、これ普通の方です。そして、187万円以下の人、これは生活保護者です。
 だから大体の人がこの500〜1000万円にいるっていうことです。
 そしてこの金持ち、小金持ちの層が毎年毎年増えているんです。この不況の中にあって関係なく増えている。貧乏人は更に貧乏になり、金持ちはドンドン金持ちになっているんです。これが今の現実なんです。
 勝ち組と負け組がハッキリしてくるんです。平等ではなくなったということです。
 
「電光石化」
 さあ、皆さん、ではどういう業界が勝ち組になったり、負け組になっているかをお話していきます。まず製造業からいきます。
 製造業ははっきりしています。製造業は「電光石化」と覚えて下さい。電気、光、石、化学、情報、環境、自動車、精密工業、そして加工食品。これが製造業の勝ち組です。DVD、光電導とか超電導とか、電気関係のハイテクをやっているところです。それから光ファイバーとかいわゆる通信関係を使っているところ、情報、ITです。そして自動車工業、精密工業、自動車部品。そして新たに出てきたのが加工食品。日本の女性は昼食を作る習慣がなくなります。ほとんど外で買うようになります。ですから加工食品の分野がコンビニでもスーパーでも猛烈な勢いで増えています。
 
脱生活用品
 さあ、次は小売業です。小売業も完全に変わってしまいました。脱生活用品です。生活に便利なもの、生活に役立つものが売れなくなった。脱生活用品を売った人が勝ち組です。
 一昨年の商業統計で、一店舗で一番売上げを上げたのが新宿高島屋です。1200億円売上げがありました。生活に便利なもの、生活に役立つものを売っていたんです。
 ところが、この数字を一挙に追い抜いた会社、1800億円もの売上げを上げた会社があります。しかし商業統計に全く出てこない。誰も気がつかなかった、フッと脇から出てきました。東京ディズニーランド、東京ディズニーシー。物販の売上だけで1800億円。何を売っていたのか。片目のサングラス、ぬいぐるみ、何だコリャというような物、全く生活に関係のない物、すなわちおもしろいもの、楽しいもの、ファンタジックな商品が、生活に役立つ商品を追い抜いてしまったんです。
 
EGSS
 今度はサービス業、皆さんの業界も含めたサービス業、ここはどう変わったかというと、これも勝ち組ははっきりしています。これはEGSSといいます。EGSS、エンターテインメント、ゲーム、スポーツ、ソフト。この4つが主流の会社がもの凄く大きくなっているんです。
 エンターテインメント、もう普通のレストランやファミレスなんてやったって誰も来ません。どうやって楽しくおもしろくさせていくか。歌舞伎町で流行っている中華料理店、若い女の子がずらっと並んでいるんです。何なのこの中華料理店と思い、入ってみたら薄暗いんです。突然音楽が鳴って光がバッと光って、仮面被った変なおじさんが出てきて、若い女の子の腰だとか頭だとかを触っていくんです。「キャー」なんて、それが楽しいんですって。レストランの名前、痴漢レストラン。これがすごく流行っているんです。
 こういうショーみたいなもの、こういう店が付加価値を付けて一挙に伸びているんです、それがいわゆるエンターテインメントです。
 そして次はゲームです。ヤフーや楽天の株価がバンバン上がってます。あの中でオークションだとか麻雀だとかやってます。凄いです、パチンコだけじゃないです。
 そしてスポーツ。ワールドサッカーや今度、北朝鮮戦。松井がホームラン打ったり、イチローが打てばアサヒやキリンの売上げが1億円ずつバンと上がるというんです。
 実は昨年の夏から飲食業、凄く悪いんです。オリンピックとワールドサッカーの影響なんです。何でかというと、お父さんが早く帰って来ちゃったんです。昔はプラプラして奥様に嘘ついて今日は残業だとか何とか言って遊んでたんですよ。ところが、サッカーや何かが多くなって実況中継が多くなったので家に帰ってきたんです。
 以後、売上げがザーと落ち込んじゃいました。だから、スポーツというのは凄く恐ろしいんです。エンターテインメントとゲームとスポーツは10万人単位で人を集めることができるんですから。
 そしてもう一つがソフトです。このIT関係のソフト、皆さんの業界でも物流で流しているだけじゃ駄目なんです。皆さんの業界に合ったソフトを作れる人、この知的分野がものすごく大きいんです。ここをちょっと変えただけで売上げが大きく変わっちゃうんです。
 ですからEGSS、これがサービス業の勝ち組です。
 
2050年日本の人口が半分に
 さあ、皆さん覚えて下さい、2050年、日本にとって、とても大事な年なんです。
 2050年、ここにいる20代の人、あなたは生きていられます。40才以上の人はほとんど死んでます。この2050年が何ですごいかというと、我が国の人口が1億人になります。そして土地の値段が今の半分になります。人が減るんだから土地はいらないんです。ですから土地の値段が丁度半分になります。
 今、団塊の世代が老人問題で騒いでいますが、2025年から老人問題がなくなります。死んでいきますから、老人ホームがガラガラになります、2025年から。だから、厚生省はあまり作らせませんし、そんなもの今補助金あげて作っても20年か25年したらガラガラになって、今の小学校や中学校と一緒になっていくんですから。老人問題なんてあと25年で終わりです。
 そうすると、どうなりますか、金融機関は20年ローンなんて貸してられませんでしょ。土地は下がるは、大変ですからね。
 来年から4、5年で600万人の人が職場から消えていくんです。定年退職で消えていくんです。そうするとどうなるか、オフィスがいらないんですよ、皆辞めていくんだから。昔作ったビルなんて誰も入居しません。なぜなら、一人が電話線1本の回線では間に合いません。今新しく入って来る人は、10人位で電話線100本つかいます。ですから光ファイバーかなんかに変えないと誰も入って来ません。
 こんなふうに、時代、時流がアッという間に変わっていきます。
 
瞬間大衆迎合と1人2極化
 そして今、お客さんが実に変わっているんです。このことを頭に入れておいて下さい。今の消費者は本当に変わってきたんです。
 瞬間大衆迎合です。小泉さんがいいと言うとみんな小泉さん、ユニクロがいいと言うと全部ユニクロ、ルイ・ヴィトンがいいと言うとみんなルイ・ヴィトンに走っていく。瞬間に大衆が一緒になって迎合していくんです、同質化、同じ質のものがいい。
 1人2極化というのが起きている。1980円のユニクロの服着ている女の子が、何十万円というバックや靴買ってるんですよ。世界でこんなところありません。1980円の服を着てるような貧しい人はパリのオートクチュールなんて入れません。「あんた、何という格好してるのよ」って言って入れてくれません。これ当たり前なんです。でも、日本は関係ないんです。1000円の物着てたって、50万円の物を買えるんです。今日は回転寿司で食べてて、明日はすごい高いステーキ食べるなんてのを、へっちゃらにやってる国なんです。これが1人2極化というんです。







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