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2 対馬における国際航路網拡充の方向性とその実現方策
 対馬が、新たな日韓交流において先導的な役割を果たしていくためには、その基盤として、国際航路網の拡充を図っていく必要がある。そこで、1で述べた国際交流の方向性を踏まえ、対馬において取り組むべき国際航路網拡充の方向性とその実現方策を示す。
 
(1)対馬における国際航路拡充の方向性
(1)対馬―釜山航路の新船投入と増便
 現在、対馬―釜山間に就航している船舶(シーフラワー)は、就航率の低さや船の揺れが輸送人員増加の阻害要因となっていることから、就航率の高い船舶を投入し、交通手段としての信頼性を確立することが強く期待される。ただし、就航率の極めて高いジェットフォイルは、船価や運航コストが高く、運賃単価を高く設定できる航路距離100km程度ないしそれ以上の航路でなければ採算性を確保するのが難しいとされていることから、一般の高速船で、現行よりも就航率が十分に高い船舶を投入することが適当と考えられる。
 また、対馬―釜山航路は週4〜5便が運航されているが、夏期は毎日運航の実績もあることから、輸送需要の拡大を図りつつ、通年デイリー化することで、利便性の向上と輸送力の増強を行うことができる。また、比田勝―釜山間では1日2便の運航も可能であり、その実績もあることから、多客期を中心に1日2便運航を拡大していくことも期待される。
 
図4 国際航路網拡充に向けた実現方策
 
(2)博多―釜山航路(ジェットフォイル)の途中寄港促進
 JR九州がジェットフォイルで運航する博多―釜山航路は、これまでにも対馬への臨時寄港の実績があるが、2003年7月に1隻増備されて4隻体制となったため、対馬への途中寄港の可能性が拡大し、臨時寄港の回数が大幅に増加している。こうしたことから、当面は、旅行業者が商品の開発・販売を行いやすいように、曜日を特定した臨時寄港という形で「準定期化」を推進し、需要の見極め・掘り起こしを行っていくとともに、一定の需要が確保できると判断されれば、本格的な定期化を行うことが想定される。
 
(3)新たな国際航路網の検討
 これまでに述べたような既存航路の拡充に加え、「浅茅湾ルートの検討」「済州島と結ぶ国際航路開設の検討」「外航クルーズ船の寄港促進」「フェリー航路開設の検討」など、既存航路のルート変更や新たな航路開設の可能性も想定される。
 
(4)複数航路間のダイヤ調整等による連携の促進
 比田勝港に博多―釜山航路が途中寄港する場合、対馬―釜山航路とバースを共用しており、同時に発着できないことがダイヤ設定上の制約条件となっているため、最適な運航形態の実現に向けて調整を図り、利用客の利便性向上や港湾施設の効率的活用に取り組むことが求められる。
 
(5)航空路との連携可能性についての検討
 国際航路に加え、対馬と韓国を結ぶ国際航空路線を開設することにより、対馬の国際交流基盤が一層充実し、国際交流の活発化が促進される。韓国側の相手空港として、距離的に近い釜山よりも、400km程度の距離があり、1千万人以上の都市圏規模を有するソウルが航空路開設の最も重要な検討対象になる。
 
(2)国際航路拡充に向けた実現方策
 国際航路網拡充に向けた実現方策として、(1)に示した方向性に沿って航路の新増設、増便、新船投入、ダイヤ調整等を推進することに加え、図4のようなものが求められる。
 
3 国際交流促進・国際航路拡充に向けた重点プロジェクト
 国際交流促進や国際航路の拡充に向けた実現方策のうち、特に重点を置いて推進すべきものを重点プロジェクトとして提案する。
 
(1)韓国人旅行者の受け入れ態勢の整備
・住民意識の改革
・宿泊施設・飲食店の収容能力の向上
・外国語対応の強化
・決済サービスの拡充
 
(2)韓国人旅行者のニーズに合った国際観光保養地としての観光資源の整備
・対馬の景勝地が望め、観光客と住民との交流を深める小規模宿泊施設の整備
・自然体験や文化講座等、対馬固有の観光が楽しめる環境の整備
・対馬の食文化を堪能できる郷土料理や土産物の開発
・浅茅湾周辺のマリンレジャー拠点の整備・観光資源のネットワーク化
・厳原の中心市街地の整備
 
(3)韓国人旅行者をターゲットとしたPR戦略
・対馬釜山事務所を活用したPR活動の展開
・魅力的なホームページの整備と双方向コミュニケーション手段としての活用
・ビジット・ジャパン・キャンペーンを活用したPR事業の推進
・国際会議・国際イベントの招致
 
(4)韓国人旅行者のノービザ実現に向けた取り組み
・韓国観光旅行社主催の団体旅行の受け入れ促進による実績づくり
・韓国修学旅行生のノービザ措置の活用による実績づくり
・全国一斉ノービザの早期実現と対馬での先行実施に向けた働きかけ
 
(5)CIQ機能の拡充促進
・CIQ職員の常駐促進
・動物検疫指定の実現
・CIQ手続きの円滑化
 
(6)対馬―釜山航路の新船投入促進
・新船投入促進に向けた輸送需要拡大への取り組みと港湾施設・サービスの整備
・運航船社における新船投入への取り組み
・運航船社の新船投入に対する支援策のあり方の検討
 
(7)博多-釜山航路(ジェットフォイル)の途中寄港促進
・運航船社における途中寄港拡大への取り組み
・途中寄港拡大に向けた輸送需要拡大への取り組みと港湾施設・サービスの整備
 
4 各関係主体の役割分担と取組体制
 これまでに検討した実現方策に取り組むにあたって、各関係主体に期待される役割と取組体制を示す。
 
(1)各関係主体が担うべき役割
(1)対馬市
・対馬における国際交流促進・国際航路拡充への取り組みの中核的な役割
・官民一体となった推進体制構築にあたっての各関係主体の調整
・地域の政策主体として、国際交流政策・国際観光戦略の企画・立案
・民間主体が主体となる取り組みへの情報面・資金面・制度面等における支援
・公共部門が行うべき事業における費用対効果等を考慮した積極的な事業展開
 
(2)長崎県
・情報面・資金面・制度面等を通じた対馬市や民間団体・事業者の取り組みの支援
・全国的・広域的な対応が必要な事項についての国や周辺地域との連絡・調整
・港湾やその他県が管理する施設等の整備・管理運営への積極的な取り組み
 
(3)国
・国際交流・国際観光に関する全国的・対外的な取り組みの積極的な推進
・ビジット・ジャパン・キャンペーン等を通じた地域との連携事業の推進
・CIQ機能の整備、早期ノービザ実現等、対馬の先導的な役割を踏まえた積極的な支援
 
(2)取組体制のあり方
・「対馬交流特区推進本部」の枠組みを活用した強力な推進体制の構築
・対馬釜山事務所の体制強化
・対馬市役所内への国際観光専任部署の設置や専任スタッフの育成







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