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私はこう考える【公営競技・ギャンブル】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1999/11/19 読売新聞朝刊
地方公営ギャンブル、打ち出の小づち今や「お荷物」 繰入金ピーク時の3分の1
 
◆補償などで廃止困難
 地方自治体による公営ギャンブルは、四割近くが赤字に陥るなど危機に直面している。収益どころか、税金での赤字補てんという最悪の事態も懸念され、自治体の“ギャンブル離れ”も加速している。バブル期には「打ち出の小づち」と、もてはやされたが、今や財政難の自治体の足かせになりかねない。
(地方部 依田裕彦 浜砂雅一、経済部 田中左千夫、本文記事1面)
 競輪を開催する三十九市で作る「全国競輪都市協議会」(会長・原ノボル大阪府岸和田市長)は先月、監督官庁の通産省に一通の要望書を出した。
 「経営悪化は競輪界が初めて経験する危機的な状況」「廃業の道を選ぶにしても臨時従事員や選手への巨額の補償など重要課題が山積する」――。関係者は要望書で苦渋をにじませながら、赤字団体にも義務づけられた日本自転車振興会への交付金の免除などを求めた。
 公営ギャンブルのスタートは終戦直後。戦災復興の活路を求めて、財源の乏しい自治体が一斉に飛びついた。上下水道や道路など高度成長期のインフラ整備を支え、災害復旧から公害対策まで様々な財政需要に寄与してきた。売り上げが過去最高を記録したのは九一年度。自治省のまとめでは、合計で三千四百二十一億円が自治体に繰り入れられた。
 だが、バブル崩壊後の九七年度の総繰入額は千三百一億円。九一年度の38%に過ぎない。最盛期を知る関係者からは「ギャンブル収入に頼る時代は終わった」とのため息が漏れる。
 多摩川競艇を単独開催する東京都青梅市は、最盛期の繰入金が年間百億円を超えた。小中学校の校舎、診療所などの公共施設につぎ込まれた。だが、九七年度二十五億円、九八年度十二億円と減少。今年度は八億円の繰り入れを見込んだが、「事業そのものが単年度赤字となる可能性が大きい」(青梅市財政課)と不振に悩む。小学校建設を見送り、下水道も整備区域を縮小することにした。
 新潟県競馬組合(県と新潟など三市)は九八年度、六億五千万円の赤字を出した。組合議会で、平山征夫知事は「進むも退くも難しいが、状況によっては退くことも」と廃止の可能性に言及した。だが、廃止には百億円以上とも言われる補償金が必要で、県の会計からの拠出は難しい。
 累積赤字を抱える高知県競馬組合(県と高知市)は今年度、外部識者による運営委員会を設置した。年内には、存廃についての方向性を示す。
◆「競輪王国」岐阜県 撤退の解決金には税金投入が不可避
 九十九市町村のうち五十七自治体が競輪事業に名を連ねていた岐阜県。その「競輪王国」が揺れている。
 「不況で将来に光が見いだせない。税金での赤字補てんは絶対に許されないし・・・」。多治見市の坂崎敏総務課長が説明する。同市が加入する岐阜県五市組合は、今年度限りで競輪から撤退することを決めた。一九五二年結成の同組合は、多治見、関など五市が、岐阜と大垣の両競輪場を借りてレースを開催し、これまでに繰り入れた収益は計四十七億円に上る。
 だが、バブル崩壊後は、売り上げが転げ落ちるように減少。九七、九八年度は赤字が続き、収益繰り入れを見送った。「自治体財政への寄与をうたう自転車競技法に違反しているようなもの」(坂崎課長)という事態に追い込まれた。
 同県では昨年度、瑞浪、美濃市など六市で組織する競輪組合が解散しており、五市組合の追随は競輪関係者に波紋を広げる。
 五市組合から来年度のレースの肩代わりを求められた岐阜、大垣両市は自前の競輪場を抱え、簡単には撤退できない。五市組合の撤退を容認しながらも「ある程度の補償はしてもらう」と注文をつける。
 五市組合の積立基金は、今年四月時点で約一億円。しかし、今年度も上半期だけで一億円超の赤字を抱え、両市の求める「解決金」を支払うとなれば税金の投入は避けられない。
 坂崎課長は「赤字を膨らませることを考えれば、税金を出しても今が(撤退には)一番いい時期」と話す。
◆国内最大の馬産地 北海道 累積赤字100億だが生産者保護の面も
 十月下旬の札幌競馬場。雨混じりの肌寒さだった。観客は小さなガラス張りスタンドにこもり、ゴール前の人影はまばらだ。夏の中央競馬開催時には数万人でごった返すが、この日の道競馬の観客は約二千三百人。「もっと暖かいと客足も期待できるんですが」。道競馬事務所の室屋松吉総務課長がつぶやく。
 道競馬も深刻な経営難に直面している。入場者の減少に加え、ファンの高齢化などで一人当たりの売り上げも減少。九八年度末で八十五億円だった累積赤字が、今年度で百億円を突破するのはほぼ確実だ。道議会からは廃止を求める声も出ている。
 しかし、廃止に踏み切るのも極めて難しい。北海道は国内最大の馬産地で、道競馬も馬主の四割が生産者だ。売れ残った馬をレースで走らせ、賞金を経営に充てる一方、優秀な成績を挙げた馬を転売することもできる。経営の苦しい中小牧場にとってはまさに命綱で、道競馬管理室は「廃止すれば多くの生産者が廃業を迫られる。地元経済への影響は計り知れない」と話す。
 先の道議会では中央競馬会(JRA)への吸収合併案も議論された。だが、法改正などハードルが高く、「実現の可能性はほとんどない」(道競馬管理室)という。道は、事業存続を前提に一部事務組合への経営移管を模索しているが、累積債務がネックとなり、具体化までには曲折をたどりそうだ。
◆主催者裁量広げて
 競馬ライター・須田鷹雄氏「法律などで規制だらけにしておいて、『赤字だから問題だ』とするのはおかしい。まず規制を緩めて主催者の裁量を広げ、自助努力を促すべきだ。運営部分を主催者から切り離し、全国一律の機関にゆだねるのも一考だろう。中央競馬と同様、選手のメディアへの露出など広報活動を全国的な規模で進める必要がある。ギャンブル=悪という硬直した考えから脱却し、役割、あり方についてオープンに議論していく時ではないか」
◆早め見切りも選択肢
 ギャンブルの現状に詳しい大阪商業大・谷岡一郎学長「公営ギャンブルの苦境は、必ずしも不況が原因ではない。積極的な経営努力を怠ってきたことや、ギャンブル・レジャーの多様化などが複合的に絡んだ結果だ。施設をパチンコなどとの複合的なものにしたり、競技間の壁を越えて車券、馬券を場外発売することなどの活性策が有効だが、ここまで状況が悪くなると早めに見切りをつけた方が良い場合もある。表面上の赤字額だけでなく、地域への経済効果を実証的に調べた上で議論を尽くすことが重要だ」
◆経営の合理化必要
 自治省地方債課・河野栄課長「公営競技からの収益は、地方公共団体の貴重な財源。景気低迷の影響を受けて収益が減少し、赤字の団体が出ていることは深刻に受け止めている。ファンを確保して増収策を図ると同時に経営合理化や経費節減の努力が必要だ。存廃は、実情に応じて判断をしてもらうしかない」
 
 
 
 
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