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1996/08/24 読売新聞朝刊
[社説]パチンコは娯楽といえるか
 
 この夏も、パチンコ店は年齢や性別を問わない客層で活況のようだ。今年の警察白書には「ぱちんこ営業は、国民の身近で手軽な娯楽を提供する産業として大きく成長している」とあるが、そうとばかりも言えない問題が起きている。
 親がパチンコに熱中している間に、子供が事故に遭ったり行方不明になったりする惨事が絶えない。東京・足立区では路上にとめた車の中で一歳と二歳の男児が脱水症状で死亡、パチンコをしていた母親は重過失致死容疑で書類送検された。
 のめり込んで破産したり、パチンコの資金欲しさの強盗事件なども相次いでいる。もとより、遊び事は本人の責任の範囲内でするものだが、それを忘れさせるほど過熱している。パチンコ依存症と呼ばれるような現象が起きている。
 論議を呼んだプリペイドカード(PC)が六年前に導入された。それに続いて、CR機と呼ばれるカード専用機が登場し、機種のギャンブル性も高まってきた。
 三十兆円産業といわれるとてつもない規模になったのも、こうした足取りと無縁ではない。結局は射幸心を高める方向へ走らせ、それが今、様々な問題を派生させているのではないか。
 その意味で、PC導入を推奨した警察の責任は大きい。元々の狙いは、脱税を防止してパチンコ業界の健全化を進めることにあり、ひいては裏社会への資金の流れを断つことにもつながると期待されたが、その思惑は外れた。
 現在、PCは約一万三千店にまで広まったが、心配された変造カードが使われ出した。カード事業には大手商社が参入しており、変造カードによる被害は二社だけで約六百三十億円にのぼるという。
 巨額の金がアンダーグラウンドへ流れる結果となり、何のためPC導入を図ったかわからない。導入を推奨した警察当局には業界任せでない対策を求めたい。
 磁気カードの技術面を受け持っているNTTデータ通信は、テレホンカードを変造された経験を生かせなかった。
 このカード事業には、犯罪集団に利益をもたらしかねない危うさがつきまとう。カード会社に出資した大手商社には、そういう上に成り立っている事業であるという自覚を求めたい。
 娯楽としてのパチンコの基準をどこに置くかは難しいが、今の過熱ぶりは異常だ。読売新聞社の世論調査によると、パチンコはゲームかギャンブルかという質問に、七〇%を超える人が「どちらかといえばギャンブル」と答えている。
 パチンコ業界は、そうした声を厳しく受けとめるべきだ。すでに関連団体は、射幸心をあおるような営業の自粛など十項目の対策を打ち出しているが、その強化を進めなければならない。
 その努力を怠ると、パチンコを手ごろな娯楽として楽しみたいファン層も離れていくことになるだろう。現に、レジャー白書によると、パチンコ人口は六年から七年にかけて約百万人減っている。
 
 
 
 
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