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2000/08/28 毎日新聞地方版
[ニュースワイドとちぎ]岐路に立つ地方競馬 撤退の道探る宇都宮、足利/栃木
 
◇好記録とは裏腹・・・赤字続く宇都宮、足利−−撤退の道探る両市
 県内の競馬場は今年、好記録に沸いている。今月20日、宇都宮競馬場でブライアンズロマンが通算42勝を挙げ、サラブレッド系最多勝日本記録に並び、また足利競馬場のドージマファイターは今年4月、28連勝と連勝の日本記録を達成するという明るい話題に事欠かなかった。しかし、地方競馬衰退の歯止めにはならず、宇都宮、足利両市は競馬事業の慢性的な赤字に苦しみ撤退を模索する一方、運営を委託されている県は存続を主張している。地方競馬は厳しい運営状況の中で揺れている。
【川端智子】
■先細る収益
 不況やレジャーの多様化を受けて、全国的に地方競馬不振が続いている。県内の2競馬場も例外でない。
 宇都宮競馬場は、1980年をピークに馬券販売数、入場者数ともに年々減少。99年度は、1開催当たりの販売額6億2924万円、入場者数1万6535人と、それぞれ最盛期の半分以下にまで落ち込んでいる。
 宇都宮競馬場の場合、年間18回の開催のうち、県が16回、市が2回主催している。県営競馬は、収益だけで足りない分を競馬場移転資金である「県営競技事業施設整備基金」の繰越金(99年度で約1億円)で補てんしているため決算上は赤字にはなっていない。しかし97年度まであった売り上げの一部の一般会計への繰り出しが98年度以降はゼロで、実質的には赤字。宇都宮市主催では93年度から赤字決算となり、同市の一般会計から補てんし続けている。99年度には約1億1100万円を競馬事業特別会計に繰り入れた。
 一方、足利競馬場で年間8回の開催を主催している足利市は今年度の当初予算に競馬事業特別会計の赤字補てんとして約4億3000万円を盛り込んだ。年度当初から繰り入れるのは初めてで、足利競馬の苦しい台所事情が改めてクローズアップされた。
■県と市のギャップ
 宇都宮、足利両市とも、競馬事業の存続には消極的だ。宇都宮市は昨年1月策定した第2次行政改革大綱で、2003年度末までに競馬事業からの撤退を目指している。
 足利市長の諮問機関「足利市公営事業委員会」は今年7月、「黒字転換の見込みがなければ、2001年度末をもって撤退すべき」と答申しており、現実には存続の見通しは暗い。
 一方の県は現在のところ、存続の意向だ。次期知事選へ出馬を表明した福田昭夫・今市市長は「赤字なのに、何の対応策も出していない」と渡辺文雄知事を批判。それを受けて渡辺知事が今月22日の定例会見で、「(競馬関係の仕事で)生活している人が1000人以上いる。対応策もないのに、赤字だからやめろでは、あまりにも乱暴すぎる」と反論している。撤退の意向を持ちながらも、具体的な話が進んでいない宇都宮市も「財政的に苦しいが、雇用の場であるという面もあり、簡単ではない」(商工部)と苦悩をにじませる。
■新たな振興策も
 売り上げ不振に主催者側もただ手をこまねいているわけではない。新しい馬券の導入やファンサービスなどに知恵を絞っている。
 宇都宮競馬場は来年4月から、拡大式馬番連勝複式(通称・ワイド)など、新種の馬券3種を新たに導入する予定だ。また来月から女性初心者を対象に「競馬教室」を開き、場内案内や勝ち馬の予想の仕方を“教授”するなど、ファン層拡大に必死だ。
 しかし存続方針の県ですら「すぐに収益が増大するようなアイデアは、はっきりいってない」(公営競技課)と売り上げ増には悲観的だ。
 ブライアンズロマン、ドージマファイターと、スターホースの活躍とは裏腹に、運営は「華麗な疾走」とはいかないのが現状のようだ。
◇地方競馬
 地方自治体が主催する競馬をいう。全国に北海道と栃木、岩手、石川3県など24の主催者が30の競馬場で開催している。1998年度で21の主催者、99年度で23の主催者が赤字を出している。
 
 
 
 
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