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「沖ノ鳥島の有効利用を目的とした視察団」報告書

 事業名 海洋・船舶の実情調査及び研究等
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


沖ノ鳥島訪問記
読売新聞社 宮内 利宗
 11月26日午後、沖ノ鳥島の東小島の護岸に上陸した瞬間、目の前に広がっていた空と海の鮮明な青が強く印象に残っている。足元の太いチタン製のワイヤの間から「島」の本体が見えた。写真や資料では何度も見ていた現場に立てたことの達成感を味わった。予定よりも到着が遅れ、一時は上陸も断念せざるを得ないとあきらめかけていただけに、短時間でも「上陸」できただけで十分だった。
 チタン製ワイヤの下にもぐり込み、東小島を間近で見た。砂に埋もれた畳一枚ほどのサンゴ礁があるだけだ。厳重に守られた小島の現状を自分の目で確かめることができた意味は大きかった。
 2つの小島を指して、中国は今年4月、排他的経済水域(EEZ)が設定できない「岩」だと主張し始め、日本政府は、国連海洋法条約の規定を基に、満潮時にも水面上に残っているから「島」だと反論している。そうした、日中の政治的な思惑をよそに、目の前のサンゴ礁は、昔からそうであったように、超然としてそこにあった。護岸の上から再び周囲を見わたすと、環礁に沿って白波が立ち、沖ノ鳥島の本来の大きさ、広がりが分かった。海底に富士山と同じような形で出来た海嶺の頂上部分にこのサンゴ環礁ができている、ということを思い起こすと、海面に突き出た2つの小島が単なる「岩」ではないことが実感できた。
 小島を守る護岸も十年以上たち亀裂や劣化が目立つ。補修だけで毎年約2億円がかけられている場所。さびた鉄製の消波ブロックの赤茶色が記憶に残った。
 環礁内では、昭和初期、旧日本軍が建設途中で断念した「観測所基盤」や、近年の護岸工事に伴って建てられた「観測施設」も遠巻きに確認できた。海面にそそり立つ観測施設は、海面から見上げると巨大で異様な感じだったが、遠くからでも島の存在を知ることができる唯一の目印になっていた。
 視察団は、予想以上の荒い波に阻まれて計画を変更し、上陸した東小島の護岸での滞在は30分程度だった。それでも、専門家のメンバーからは、「国際的なサンゴ研究の拠点施設があればいい」「灯台を造れば船が通るようになるのでは」「太陽光や風力発電のほか、海水の温度差を利用した発電の可能性を探りたい」といった様々なアイデアが聞かれた。いずれも、現時点では、実現するかどうかはまったく未知数ではあるが、島の将来像を描くうえで夢のある構想だ。
 国交省は来年2月、暗視カメラによる遠隔監視システムを設置し、島の監視体制を強化するほか、「観測所基盤」にヘリポートの表示し、北小島に「日本国の最南端の島」と記したチタン製の板を設置する計画だという。国も利活用を意識した取り組みに乗り出している。
 
 今回、取材のために参加した記者の立場で、専門的、具体的な提案をするのは難しい。ただ、実際に現地を訪れてみると、「活用策」といっても、リゾート開発や観光地化に重点を置いた活用は避けるべきだと思った。地理的に交通手段の確保が難しい現状に加え、気象条件も厳しく、大量の観光客が快適に過ごすというイメージではないだろう。むしろ、そのような厳しい気象条件だったからこそ、手つかずの海洋環境が保たれていると言える。絶海の孤島であり、日本で唯一の熱帯の島という希少価値もある。
 確かに、単なる「岩だ」という主張に対抗するために、国連海洋法条約に規定する「経済的生活」の面での充実も必要だろう。例えば、定期的に民間研究者が訪問できる研究拠点や、それを維持するための自然エネルギーを利用した発電施設など、最小限の施設建設は今後、検討することになるかもしれない。
 しかし、今までのように、行政や一部の工事関係者だけが定期的に島へ行き、補修工事や観測、実験を続けるという態勢では、現状が見えにくい。現状を知るために、民間人を対象に、「上陸」する人数を限定し、訪問者の安全を優先させる今回のような視察団を定期的に実施する試みは可能かもしれない。
 視察団の「上陸」が報道された後、12月になって再び中国の海洋調査船がEEZ内に出没し、日本政府が抗議した後も再びEEZ内に入った。日本を牽制する狙いもあったのだろうか。この動きに対抗するように、石原慎太郎・東京都知事が沖ノ鳥島の海域で漁業をすると表明した。視察団の訪問が報道されたのを機に、この島への注目が集まってきたのだろうか。国交省へも一般の人から活用策について意見が寄せられているという。
 まず関心が高まるきっかけとして、初の民間視察団の派遣は、意味があったと思う。国交省も「行政側からもできる限り情報提供するので、利活用に向けた発想を提案してほしい」と前向きだ。巨費を投じて守られてきた島の現状をよく知ったうえで、官民あわせて活用の方策を探る議論のさらなる高まりが必要だろう。
 
 
 
沖ノ鳥島レポート
読売新聞社 奥西 義和
 11月26日の上陸の様子は、当日組みの朝刊一面と12月1日付け夕刊グラフ面で、掲載されました(同封しました)。ありがとうございました。
 
 沖ノ鳥島によって得られる排他的経済水域、そして接続水域内でのエネルギー資源は、日本の大切な財産ですが、最も重要なのは、安全保障に関することだと思います。周知の通り、中国が急に沖ノ鳥島を「岩」として、EEZを認めないと言い出したのも、資源が埋蔵されているかもしれないという表向きの理由と、台湾有事の際の戦略的なもののためだと推測します。日本近海を中国海軍の軍艦に、自由に往来されたらたまりません。中国の原子力潜水艦の安全性は大いに疑問です。今回、那覇から約二日間かけてたどり着いた沖ノ鳥島を見て、とても観光利用は無理と思いました。ダイビングするなら、もっと近くて手軽な所はいくらでもあるし、魚の種類も少ないし、とにかく遠すぎるのです。日本の最南端という以外、とくにこれといった観光資源もありませんし・・。いっそのこと米軍に貸与という形で、軍事基地にしてはどうでしょう。日本の安全保障にもなるし、騒音問題もないし、誰にも迷惑はかかりません。島には希少なサンゴの付着もあまりないようですし、渡り鳥もきません。直接被害を受ける住民もいません。防波堤など埋め立てができる範囲を埋め立て、フローティング滑走路や付属する建物を作れば、まるで浮沈空母です。戦略上、中国にプレッシャーをかけられるし、米軍にもプラスになるのではないでしょうか?維持経費は日倍の交渉次第ですが、とにかく「島」であり、経済活動などをしているという既成事実をつくるためには、米国を巻き込むのが得策かと思います。
 もう一つは、「船酔いダイエットツアー」というのはどうでしょう。今回、荒波に揺られてとてもものを食べられる状態ではありませんでした。往復5日ぐらいで、5kgは痩せるのではないでしょうか?運が良ければ「日本最南端の沖ノ鳥島」に上陸できるというふれこみで・・・。さらに、ただ戻ってくるだけではつまらないので、帰路は沖縄近海のダイビングスポットで2日ぐらい潜りやジェットスキーなどを楽しんでくれば、ツアー客も喜ぶことでしょう。
 以上、非常に短いレポートですが、30分弱の上陸しかできませんでしたので、あまり思いつきませんでした。すいませんがよろしくお願いします。
 
 では、島で撮影した写真をお送りします。もし、何かに掲載する場合はクレジットを入れてください。また機会がございましたら、ご連絡いただけたら幸いです。
 
 
 
沖ノ鳥島視リポート
産経新聞社 将口 泰浩
 二つの島だけでなく、南北1.7km、東西4.5kmの環礁全体を沖の鳥島と捉え、対策を考える必要がある。そうすれば、居住も経済生活を維持することもできる。環礁内の水深は約5メートルで、比較的容易に建造物をつくれる。
 無人の灯台建設から着手するのが現実的。現在でも、沖ノ鳥島を目指して南下するオーストラリア行きの船舶もあるという。その次は、有人の気象台。このためには必ずヘリポートもなければならない。だが、ヘリポートさえ建設すれば、可能性が拡大される。排他的経済水域内に常時、ヘリコプター搭載船を待機させているようなものだ。
 最終的には、一般の日本人が訪れることだ。世界中の海を潜ったダイバーもこの海に潜った人はまずいない。だれもが「日本最南端の島」にあこがれる。「珊瑚と海しかないが、ルールを決めて訪れれば、究極のエコツーリズム」と大森名誉教授。客船で沖合いに停泊すれば、「日本の最南端ツアー」も可能。放置されている観測所は十分に住めそうだ。
 「島だ、岩だという論争よりも、灯台で航海の安全や、珊瑚を育成して海洋保全に寄与するなど、いかに沖ノ鳥島が有益かをアピールしなければ、世界の共感を得られない」と栗林教授。この言葉に尽きる。
 
 
 
沖ノ鳥島視察報告
共同通信社 池内 孝夫
 揺れと吐き気に苦しんだ90時間だったが、日本最南端の沖ノ鳥島視察という貴重な機会を得ることができた。
 沖ノ鳥島と言えば、中国側が「沖ノ鳥島は島ではなくて岩」と発言するなど、国境問題が話題になっているが、どういうわけか国境問題とは無縁の科学記者である小生が今回、視察に同行することになった。
 正直言って、島であるか岩であるか議論しても水掛け論に終わってしまう。取材が決まった時には何を書いてよいやらと悩んだが、財団が有効利用の在り方を模索するために民間の研究者を中心とした視察団を組んだのは良いアイデアだと思ったし、助かった。さんご礁の再生など新たな話題を見つけることができたのはよかったし、記事にさせてもらった。
 ほとんどの日本人がどこにあるかも知らないこの島にスポットライトを浴びせることが、島か岩かを議論する前に重要なのだろう。引き続き注目してニュースを探していきたい。
 残念ながら、今回は時間の都合上、上陸することはできなかったが、現場のさんご礁は船から眺めているだけでも非常に美しく、観測施設がある建物は蜃気楼かと見間違うぐらい奇妙な場所に浮かんでいた。ふざけていると言われるかもしれないが、何か有効利用法がないかと聞かれれば、映画のロケ地にでもどうかと提案したい(大阪のユニバーサルスタジオにあるウォーターワールドのアトラクションのイメージ)。
 おそらくもう2度と行くチャンスがないだけに、時間の都合上、島に上陸できなかったことは残念だった。もし、再びこういう機会があるのであれば、海の荒れなども考慮した余裕のあるスケジュール作りをお願いしたい。
 
 
 
共同通信社 京極 恒太
 11月末、東京から南に1,740km、日本最南端の領土「沖ノ鳥島」に民間調査団とともに訪れた。日本が太平洋に広大な海域を領有する基点となる「島」だ。
 那覇・泊港から低気圧による荒波にもまれ約42時間の船旅。他に島影一つない絶海に、東西4.5km、南北約1.7kmのさんご礁が現れた。
 小型ボートに移り、さんご礁内へ。「島」を侵食から守る消波ブロックと、円筒状に取り囲むコンクリート護岸が見えた。護岸に上陸し「東小島」を真下からのぞき込む。満潮時に数cm、もうの一つ「北小島」は10数cm、海面に出る程度だ。
 しかし、ここが半径370kmの排他的経済水域(EEZ)を領有する基点になるため存在価値は大きい。周辺は希少鉱物も豊富とされ、政府は多額の保全費を注ぎ、「島」として領有を主張してきた。
 一方、中国政府は「沖ノ鳥島は島ではなく岩である」と日本のEEZを否定。周辺海域での海洋調査を活発化させており、中国海軍の測量艦なども確認されている。台湾有事を想定し、潜水艦などの配置を探っているとされる。
 「思ったより小さかった。その存在で、国土以上に広い面積を領有できるのは感慨深い。しかし、民間利用する方法を探らねば、国際理解は得られまい」。東小島の護岸に上陸した栗林忠男・東洋英和女学院大教授(国際法)は率直に語る。
 今後は「島」を守るためにさんご礁育成による陸地再生に期待がかけられている。
沖ノ鳥島を水没から守れ
▽サンゴの力で陸地再生を
 日本最南端の沖ノ鳥島(東京都小笠原村)を水没から守ろうと、サンゴなどの力を借りて陸地を再生する構想が研究者の間で浮上している。研究の推進は日本の領土保全だけでなく、地球温暖化による海面上昇の影響が深刻な太平洋の島国にも貢献できるという。
▽護岸に守られた岩
 東京のはるか南1,700キロ。緯度ではハワイ・ホノルルより南になる太平洋のど真ん中に沖ノ鳥島はある。東西4.5km、南北約1.7kmに及ぶさんご礁だが、満潮時には東小島と北小島の二つの小島がわずかに顔をのぞかせるだけだ。
 ただこの存在が、半径370km、面積約40万km2と日本の国土よりも広い排他的経済水域(EEZ)を生んでいる。そのため、波の浸食から守ろうと、小島は現在、コンクリートと鉄製ブロックの護岸とチタン製のふたで囲われている。
 
 だが、最近、中国は「沖ノ鳥島は岩なのでEEZは認められない」と主張した。それだけではない。地球温暖化で今世紀末には海水面は40センチ上昇するとされ、「EEZどころか領土自体が無くなる恐れがある」と関係者は口をそろえる。
 それなら、自然の力で陸地を再生しようと考えているのが、さんご礁再生技術を研究している東京海洋大の大森信(おおもり・まこと)名誉教授(海洋生物学)と茅根創(かやね・はじめ)東大助教授(海洋地質学)らのグループ。
▽砂を生み出せ
 サンゴの卵は受精後、幼生となって浮遊、岩礁などに着床し、群体に生長するが、多くは海流に流されてしまう。だが、幼生まで育て、流されないようシートなどで囲って放流すれば、さんご礁の育成も可能なことが分かってきた。砕けたサンゴの破片が砂になる。
 ミドリイシサンゴでは数十cmに育ったものもあり、大森さんが所長を務める阿嘉島臨海研究所(沖縄県)では国内外の研究者との共同研究が進んでいるという。
 11月末に島を調査した大森さんは「サンゴが育てば新たな砂は供給される。環礁内のサンゴを増やし、砂を外に出さないようにすれば、時間はかかっても砂を堆積させるのは可能では」。
 ただ、旧日本軍が航路用に破壊した環礁の一部から激流のように潮がながれるなど、現地は決してサンゴの成育に適した環境ではない。実現には、潮流を抑える土木工事やさんご礁の手入れなどに膨大な費用が必要で、国の支援が不可欠だ。
 大森さんは「太平洋のマーシャル諸島やキリバスなど、環礁でできた国は同じ悩みを抱えている。国際貢献のためにも沖ノ鳥島再生への研究をすすめるべきではないか」と訴えている。
 
沖ノ鳥島に民間視察団
さんご礁再生と利用検討
 水没の危機にある日本最南端の領土、沖ノ鳥島のさんご礁の再生と有効利用を検討するため、海洋生物学や工学の専門家らでつくる民間の視察団(団長・長光正純(ながみつ・まさずみ)日本財団常務理事)が26日、同島に上陸した。
 同島は東京の南約1,700kmの太平洋に位置し、東西4.5km、南北約1.7kmのさんご礁の中にある。満潮時には幅、高さともに数mの小島が二つ、海面から顔を出すだけだ。
 
 視察団は同日午後、さんご礁の沖でチャーター船からゴムボートに乗り換え、東小島に上陸。3班に分かれ30〜40分ずつ、侵食から守るためコンクリートでドーナッツ状に囲まれた島や海底の様子を調べた。
 サンゴの幼生などによる陸地再生を研究している東京海洋大の大森信(おおもり・まこと)名誉教授は「決してサンゴの豊かな海ではなかったが、幼生やかけらを島の外に出さないようにすれば、再生も可能ではないか」と話した。
 最近「沖ノ鳥島は島ではなく岩なので周辺に排他的経済水域(EEZ)を設定できない」と主張する中国が、日本側の同意なしに周辺海域を調査するケースが相次ぎ、日本政府が講義するなど外交問題化している。







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更新日: 2019年7月13日

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