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「沖ノ鳥島の有効利用を目的とした視察団」報告書

 事業名 海洋・船舶の実情調査及び研究等
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


沖の鳥島視察に参加しての感想と提案
(株)海洋開発技術研究所 代表取締役社長 城野 清治
 感想を述べる前に、今回の視察団の一員に加えていただき、貴重な体験をさせて頂いた日本財団殿に深く感謝申し上げます。
 
 さて、真っ先に感じたことは「実に遠いなあー」と言うことです。片道40時間以上でしたが、これは飛行機でヨーロッパを2往復できる時間です。飛行機という乗り物に慣れ、距離感を無くした我々に、改めて地球の広さを感じさせられました。もし、飛行機で行っていたなら、沖の鳥島がいかに遠いところにあるかを体で感じるという今回の目的の1つが損なわれ、近海に存在するの島程度の問題としてしかこの問題をとらえられなかったのではないでしょう。遠くにいても十分な情報が得られる現代でも、「百聞は一見」「肌で感じる」の重要性は今も昔も同じのようです。
 こんなことを考えながら島を間近で見たとき、これは日本だけの島でなくてもいいのではないか、という気持ちになってしまいました。日本から遠くはなれ、全くの自然の中で、俗世間から解き放たれた気分がそうさせたのですが、実はそう思わせるにはもう一つの理由がありました。沖縄を出発後船内で、S&O財団の寺島様や東大の茅根先生らと話しをしていた際に、島が沈没を防ぐ方法の研究の話題がでましたが、その際に、寺島様が日本だけなく他国にも地球温暖化のため同じ問題を抱えている島があるのでその研究は世界からも受け入れられるよ、との発言を聞いていたのでした。それまで、有効利用とは日本だけに役立つ利用、という認識しかなく、他の国に役立つ有効利用という視点を持ちようがありませんでした。皆さんの話しを聞き、そして現地に立ったとき、本土でも可能な、とってつけたような有効利用では世論の賛同は得られまい、本当にこの島が必要とされる有効利用でなければならない、即ちそれは、逆説的だが日本だけのためでない、島の沈没対策を研究する場所とするしかないと思い至った訳であります。
 現地でみた沈没対策とは、お世辞にも自然と調和しているとは言い難いテトラポットとコンクリートで、残り少なくなったあわれな岩、いや島をひたすら守り続けるものでした。その消極的な姿は、自らこれは岩だと言うことを認めているようなものです。こんな小さな岩は、いずれ浸食、風化により消えてしまうでしょう。もっと積極的に、岩を本当の島に変える策が必要なのでしょう。その方法は茅根先生の提案されているような「珊瑚による島の再生」しかないと思います。巨大な岩礁をつくっている珊瑚が、ちっぽけな岩を大きくすることなど、朝飯前のように思えてなりません。
 再生のヒントは上陸時に覗いた東小島周辺の水中の、珊瑚がない貧弱な海底にあると思います。私は珊瑚の生態には全くの素人ですので、なぜ環礁内が貧弱なのか詳しくは知りません。栄養の問題、流れの問題、水温の問題などが原因なのでしょうか。もしそうした物理的、化学的要因なら、解決は簡単です。生育に適する環境を人為的につくってやればいいのではないでしょうか。環礁内全体とは言いません、ほんの一部でそうした環境をつくることぐらい、容易なことです。その環境をつくり、維持するにはエネルギーが必要でしょうが、太陽エネルギー、海洋温度差エネルギー、波浪エネルギーなどがこの場所には豊富にあります。周辺に全く珊瑚がない場所で再生を試みるのは冒険でしょうが、環礁外では島の沈下に抵抗しながら珊瑚は岩を黙々と生産し続けているのです、この外海の環境にできるだけ近い状態を人間の知恵と自然エネルギーでつくってやるだけです。また、珊瑚のかけらや有孔虫の殻が必ず環礁内では発生しているはずで、茅根先生の提案されているように、それらが特定の箇所に堆積するように、工学を駆使して環礁内外の流動、波を制御してやるのも、島再生の別の方法だと思います。
 私ら工学者は、このように物事を簡単に言いたがるものです。現実はそう簡単ではないかも知れません。そこは生物学者とともにどのような環境作りがいいかをしっかり議論することが必要です。最近、いろんな分野で工学と生物学の共同作業が必要とされています。この問題も両分野の研究者がしっかり手を携えて行けば、必ず解決できると信じます。
 別の提案は、環礁内の浮かばせるメガフロートです。島再生の研究を実行するには、多くの研究者、技術者の来島が必要です。そのための小型機の飛行場として、また研究所や宿泊場としての利用提案です。メガフロートの最大の利点は、環境への配慮です、また必要がなくなれば撤去できることもこの島へ利用の点では大きなアドバンテージをもっています。その施設内で環境問題などの学会や研究会を開くのも面白いと考えますし、環境への排出ゼロの循環社会モデルの実験も行ってはどうでしょうか。
 私も今回の視察団に加わって初めて、沖の鳥島がどこにあるか、沖の鳥島問題が何かを知ったわけで、一般の方は全く関心がないのが実情でしょう。周囲を海に囲まれていながら、日本人の海への関心は低いのです。今回、中国との問題をきっかけに、少し関心が海に向いているようで、この機をとらえて、島の再生についての世論の盛り上げを行ってはどうでしょうか。そのために、提案の具体化のための研究会の設立、調査団の派遣など、具体的活動の始動が望まれます。
 
珊瑚の島造成案
 “沖の鳥島の環礁内に、周辺より1m程水位が高く、珊瑚の生育に適した区画を作り、その区画内の環境維持に深層水の栄養とそのエネルギーを用いながら、区画内で珊瑚の急速な育成を行う。”
 環礁及び周辺海域は貧栄養で生物相は貧弱であるが、深層には栄養が豊富な深層水が存在する。また、この深層水は冷温である。この深層水を適度に区画へ供給することで珊瑚の最も適した水温、栄養状態をつくることが可能であろう。また深層水の冷温は、温度差というクリーンなエネルギーであり、これを用いてこの区画の環境維持に必要なエネルギー、たとえばポンプ、浄化、水流、波発生などに利用できるし、人の生活用としても利用できる。また使用した深層水の放流水で、魚介類や海草の養殖ができるので、島に在する人の食料供給も可能である。この区画は小さいほうが実行容易であるので、10m程度の区画を同時に数カ所を実行することが望ましい。
 
 
 “区画内の珊瑚が成長し、その天頂が周辺水位より1m程度高くなったなら、区画を撤去し海抜1mの島をつくる”。
 この区画を同時、または次々と造成していくことで広い島をつくる。また、この島を核として、茅根先生が提案されている漂砂による造成に継続させていけば、将来はより大きな島となり得るであろう。







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更新日: 2019年11月16日

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