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保護者及び市町村関係者の皆様へ
新しいBCG接種制度への対応 結核予防会
 去る10月の結核予防法施行令の公布による来年4月からの新たな結核予防制度の実施に伴って, BCG接種の対象が, 従来の「4歳に達するまで」から「生後6カ月に達するまで, これにより難い場合には1歳に達するまで」の子どもたち, に変わります。
 これはBCG接種がより効果的なものになるように, 生後のできるだけ早い時期に接種することをねらったため, また新制度では従来接種に先立って行っていたツベルクリン反応検査を省略した「直接接種」を導入して早期の接種を受けやすくしますが, それが安全に行われるようにするために, 年少の子どもに接種を限定したためです。
 そうなりますと, 平成17年4月1日以後は1歳を過ぎた子どもはBCG接種を公費で受けることができなくなります。そこで, 来年4月に4歳に達する子どもが現在まだBCG接種を受けていない場合には, 今年度内に区市町村で接種を受ける必要(受けるよう努力する義務)があります。各区市町村ではこの必要性に応えるべく, 集団BCG接種の機会の増設などを検討していることと思いますが, できるだけ多くの子供たちに接種の機会が与えられるようにして頂きたいものです。
 平成12年に行われた結核緊急実態調査によれば, BCG接種を受ける子どもの20%が1歳を過ぎてから接種されています。これまでの制度では1歳を過ぎても4歳までに受ける機会がありましたが, 今後はもはやありません。これらのなかから「接種もれ」になる子どもができるだけ少なくなり, BCG接種で子どもが結核から最大限守られるようにして, 来年度の新しいBCG接種制度の出発を迎えたいと思います。
 
結核研究所長
森 亨
 
 去る10月18日「結核の予防の総合的な推進を図るための基本的な指針」(以下「指針」)が厚生労働省から公布された(本誌p20〜25)。これは改定結核予防法に基づき国が定めるもので, 予防法の現場での運用について, 国の考え方を述べたものと見ることができる。「基本」とはいうものの, 内容はかなり具体的で, その意味で法や政省令の行間を解説したものという性格もあり, そのように十分吟味して頂きたいと思う。また「都道府県結核予防計画」についても, かなり具体的に「留意点」を示している(注)。以下特に注目すべき点をいくつか拾ってみたい。
予防推進の基本的方向:保健所が結核対策の技術的拠点として, 市町村への技術支援等に役割を発揮すべきである。DOTS実施率を2010年までに95%に, その中で脱落率を5%にし, 罹患率を人口10万対18以下とする(最後の目標は, 2003年から年々4%強の低下率で実現するので, やや安直な感じもするが)。
予防のための施策:精神病院等での健康診断は結核予防法で義務化する等はできないが, 必要に応じて設置者に健診の実施を勧めている。住民健診の対象年齢の設定は患者発見率を参考にするが, 「参酌」であって絶対的な基準ではなく, 地域の年齢階級別罹患率等も合わせて考えることができると解釈すべきであろう(審議会での議論)。同時に地域のハイリスク者への健診について市町村の積極的な対応を求めている。BCG接種については市町村の努力・工夫により6カ月までに90%, 12カ月までに95%の接種率の確保を求めている。医療に関して, 検査施設に対する外部精度管理体制の構築について説いている。
研究の推進, 人材の養成:結核発生動向調査の充実・質的向上, 及び医療・予防に従事する人的資源の確保及び資質向上における国や都道府県の責任を記述している。
 なお, 都道府県結核予防計画は, 感染症予防計画と「一体のものとすることが適当である」と書かれているが, これは感染症と結核の章立てを分けて策定し, 「感染症・結核予防計画」とすることを否定するものでない(審議会での確認)。
 
(平成十六年十月六日 政令第三百三号)
○結核予防法施行令(昭和二十六年政令第百四十二号)
(傍線の部分は改正部分)
改正後
(施設)
第一条 結核予防法(以下「法」という。)第四条第一項の規定によりその長が定期の健康診断を行わなければならない施設は、次のとおりとする。
一 (略)
 
二 社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)第二条第二項第一号及び第三号から第六号までに規定する施設
 
(健康診断の対象者、定期及び回数)
第二条 法第四条第一項の規定により定期の健康診断を受けるべき者は、次の各号に掲げる者とし、同項の政令で定める定期は、それぞれ当該各号に定めるものとする。
一 学校(専修学校及び各種学校を含み、幼稚園を除く。)、病院、診療所、助産所、介護老人保健施設又は前条第二号に掲げる施設において業務に従事する者 毎年度
二 大学、高等学校、高等専門学校、専修学校又は各種学校(修業年限が一年未満のものを除く。)の学生又は生徒 入学した年度
三 前条第一号に掲げる施設に収容されている者 二十歳に達する日の属する年度以降において毎年度
四 前条第二号に掲げる施設に収容されている者 六十五歳に達する日の属する年度以降において毎年度
2 法第四条第三項の規定により定期の健康診断を受けるべき者は、次の各号に掲げる者とし、同項の政令で定める定期は、それぞれ当該各号に定めるものとする。
一 法第四条第一項の健康診断の対象者以外の者(市町村が定期の健康診断の必要がないと認める者及び次号に掲げる者を除く。)六十五歳に達する日の属する年度以降において毎年度
二 市町村がその管轄する区域内における結核の発生の状況、定期の健康診断による結核患者の発見率その他の事情を勘案して特に定期の健康診断の必要があると認める者 市町村が定める定期
3 法第四条第一項及び第三項の規定による定期の健康診断の回数は、次のとおりとする。
一 第一項各号及び前項第一号の定期の健康診断にあつては、それぞれの定期において一回
二 前項第二号の定期の健康診断にあつては、市町村が定める定期において市町村が定める回数
 
(法第十三条の予防接種の定期)
第二条の二 法第十三条の政令で定める定期は、生後六月に達するまでの期間とする。ただし、地理的条件、交通事情、災害の発生その他の特別の事情によりやむを得ないと認められる場合においては、一歳に達するまでの期間とする。
 
(削除)
 
(都道府県の負担)
第三条 法第五十五条の二の規定による都道府県の負担は、各年度において、法第五十二条第四号の規定により市町村が支弁する費用について厚生労働大臣が定める基準によつて算定した額(その額が当該年度において現に要した当該費用の額(その費用のための寄附金があるときは、その寄附金の額を控除するものとする。)を超えるときは、当該費用の額とする。)について行う。
 
(都道府県の補助)
第四条 法第五十六条の規定による都道府県の補助は、各年度において学校又は施設の設置者が健康診断の実施のために支弁した費用の額から、その年度におけるその実施に関する収入の額を控除した額につき、都道府県知事が定める基準に従つて行う。
 
2 前項の規定により控除しなければならない額が、その年度において学校又は施設の設置者が支弁した費用の額を超過したときは、その超過額は、後年度における支弁額から控除する。
 
(国庫の補助)
第五条 (略)
2・3 (略)
4 法第五十七条の規定による法第五十一条第二号から第七号まで及び第九号の費用に対する国庫の補助は、各年度において都道府県が支弁した費用の額から、その年度における当該事務に関する収入の額を控除した額につき、厚生労働大臣が定める基準に従つて行う。
5 (略)
 
第六条 厚生労働大臣は、第三条、第四条の二第一項及び第五条第一項から第四項までに規定する基準を定めるに当たつては、あらかじめ、総務大臣及び財務大臣と協議しなければならない。
 
(事務の区分)
第十条 第二条の四(都道府県知事に対する申請の経由に係る部分に限る。)の規定により保健所を設置する市又は特別区が処理することとされている事務は、地方自治法第二条第九項第二号に規定する第二号法定受託事務とする。
 
改正前
(施設)
第一条 結核予防法(以下「法」という。)第四条第一項の規定によりその長が定期の健康診断を行わなければならない施設は、次のとおりとする。
一 (略)
二 少年院
三 婦人補導院
社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)第二条第二項第一号及び第三号から第六号までに規定する施設
 
(健康診断の定期及び回数)
第二条 法第四条第一項及び第三項の政令で定める定期は、次のとおりとする。
一 十六歳に達する日の属する年度
二 前号の定期の健康診断の際エツクス線検査によつて結核によるものと考えられる治癒所見の発見された者その他厚生労働省令で定める者については、十七歳に達する日の属する年度及び十八歳に達する日の属する年度
三 十九歳に達する日の属する年度以降において毎年度
 
2 法第四条第一項及び第三項の規定による定期の健康診断の回数は、次のとおりとする。
一 前項第一号及び第二号の定期の健康診断にあつては、それぞれの定期において一回
二 前項第三号の定期の健康診断にあつては、それぞれの定期においておおむね六月の間隔をおいて二回。ただし、そのうちの一回は、前回行つた健康診断の際結核発病のおそれがあると診断された者についてのみ行うものとする。
 
(法第十三条第四項の予防接種の定期)
第二条の二 法第十三条第四項の政令で定める定期は、四歳に達するまでの期間とする。
 
(結核診査協議会)
第三条 結核診査協議会の委員のうちから互選された者は、委員長として会務を総理する。委員長に事故があるときは、あらかじめ委員長の指名した委員が、その職務を行う。
2 前項に規定するものの外、結核診査協議会の運営に関して必要な事項は、条例で定める。
 
(都道府県の負担)
第三条の二 法第五十五条の二の規定による都道府県の負担は、各年度において、法第五十二条第五号の規定により市町村が支弁する費用について厚生労働大臣が定める基準によつて算定した額(その額が当該年度において現に要した当該費用の額(その費用のための寄附金があるときは、その寄附金の額を控除するものとする。)を超えるときは、当該費用の額とする。)について行う。
 
(都道府県の補助)
第四条 法第五十六条の規定による都道府県の補助は、各年度において事業主又は学校若しくは施設の設置者が健康診断、ツベルクリン反応検査及び予防接種の実施のために支弁した費用の額から、その年度におけるその実施に関する収入の額を控除した額につき、都道府県知事が定める基準に従つて行う。
2 前項の規定により控除しなければならない額が、その年度において事業主又は学校若しくは施設の設置者が支弁した費用の額を超過したときは、その超過額は、後年度における支弁額から控除する。
 
(国庫の補助)
第五条 (略)
2・3 (略)
4 法第五十七条の規定による法第五十一条第二号、第四号から第八号まで及び第十号の費用に対する国庫の補助は、各年度において都道府県が支弁した費用の額から、その年度における当該事務に関する収入の額を控除した額につき、厚生労働大臣が定める基準に従つて行う。
5 (略)
 
第六条 厚生労働大臣は、第三条の二、第四条の二第一項及び第五条第一項から第四項までに規定する基準を定めるに当たつては、あらかじめ、総務大臣及び財務大臣と協議しなければならない。
 
(事務の区分)
第十条 第二条の五(都道府県知事に対する申請の経由に係る部分に限る。)の規定により保健所を設置する市又は特別区が処理することとされている事務は、地方自治法第二条第九項第二号に規定する第二号法定受託事務とする。
 
(地方自治法施行令の一部改正)
○地方自治法施行令(昭和二十二年政令第十六号)
(傍線の部分は改正部分)
改正後
(結核の予防に関する事務)
第百七十四条の三十七 地方自治法第二百五十二条の十九第一項の規定により、指定都市が処理する結核の予防に関する事務は、結核予防法(昭和二十六年法律第九十六号)及び結核予防法施行令(昭和二十六年政令第百四十二号)の規定により、都道府県が処理することとされている事務(同法第四条第三項の規定による定期の健康診断の実施の指示、同法第十三条の規定による定期の予防接種の実施の指示、同法第五十一条第一号に掲げる費用の支弁及び同法第五十五条の二の規定による負担に関する事務を除く。)とする。この場合においては、第三項において特別の定めがあるものを除き、同法及び同令中都道府県に関する規定(前段括弧内に掲げる事務に係る規定を除く。)は、指定都市に関する規定として指定都市に適用があるものとする。
 
2・3 (略)
4 指定都市がその事務を処理するに当たつては、地方自治法第二百五十二条の十九第二項の規定により、結核予防法中次に掲げる都道府県知事の指示に関する部分は、これを適用しない。
一 (略)
第十三条の規定による定期の予防接種の実施の指示
 
(結核の予防に関する事務)
第百七十四条の四十九の十六 地方自治法第二百五十二条の二十二第一項の規定により、中核市が処理する結核の予防に関する事務は、結核予防法及び結核予防法施行令の規定により、都道府県が処理することとされている事務(同法第四条第三項の規定による定期の健康診断の実施の指示、同法第十三条の規定による定期の予防接種の実施の指示、同法第五十一条第一号に掲げる費用の支弁及び同法第五十五条の二の規定による負担に関する事務を除く。)とする。この場合においては、次項において特別の定めがあるものを除き、同法及び同令中都道府県に関する規定(前段括弧内に掲げる事務に係る規定を除く。)は、中核市に関する規定として中核市に適用があるものとする。
 
2.3 (略)
 
改正前
(結核の予防に関する事務)
第百七十四条の三十七 地方自泊法第二百五十二条の十九第一項の規定により、指定都市が処理する結核の予防に関する事務は、結核予防法(昭和二十六年法律第九十六号)及び結核予防法施行令(昭和二十六年政令第百四十二号)の規定により、都道府県が処理することとされている事務(同法第四条第三項の規定による定期の健康診断の実施の指示、同法第十三条第四項の規定によるツベルクリン反応検査及び定期の予防接種の実施の指示、同法第五十一条第一号及び第三号に掲げる費用の支弁並びに同法第五十五条の二の規定による負担に関する事務を除く。)とする。この場合においては、第三項において特別の定めがあるものを除き、同法及び同令中都道府県に関する規定(前段括弧内に掲げる事務に係る規定を除く。)は、指定都市に関する規定として指定都市に適用があるものとする。
2・3 (略)
4 指定都市がその事務を処理するに当たつては、地方自治法第二百五十二条の十九第二項の規定により、結核予防法中次に掲げる都道府県知事の指示に関する部分は、これを適用しない。
一 (略)
第十三条第四項の規定によるツベルクリン反応検査及び定期の予防接種の実施の指示
 
(結核の予防に関する事務)
第百七十四条の四十九の十六 地方自治法第二百五十二条の二十二第一項の規定により、中核市が処理する結核の予防に関する事務は、結核予防法及び結核予防法施行令の規定により、都道府県が処理することとされている事務(同法第四条第三項の規定による定期の健康診断の実施の指示、同法第十三条第四項の規定によるツベルクリン反応検査及び定期の予防接種の実施の指示、同法第五十一条第一号及び第三号に掲げる費用の支弁並びに同法第五十五条の二の規定による負担に関する事務を除く。)とする。この場合においては、次項において特別の定めがあるものを除き、同法及び同令中都道府県に関する規定(前段括弧内に掲げる事務に係る規定を除く。)は、中核市に関する規定として中核市に適用があるものとする。
2・3 (略)
 

注:これについては2つの厚生労働科学研究班(主任研究者:結核研究所森 亨, 及び同石川信克)が「予防計画策定の手引き」を研究班報告として作成し, 結核研究所ホームページwww.jata.or.jpに掲載したので参考にして頂きたい。







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