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私はこう考える【国連について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1994/01/07 読売新聞朝刊
[対立・討論]日本の常任理入り
田中秀征氏VS田中明彦氏=見開き
 
 国連平和維持活動(PKO)に参加するためのPKO協力法を成立させ、一昨年からカンボジア、モザンビークに部隊を派遣した日本に、国連安保理常任理事国入りを求める声が強まってきた。国力に見合った国際的責務を果たすには避けて通れない道だが、国民の意思はまだ揺れている。
聞き手・解説部 松岡 宇直
◆国連の大改革が前提/田中秀征氏
 
 ――国連の役割への認識は。
田中 今の国連は第二次大戦のような悲惨な戦争を二度と起こしてはならないという反省から生まれた。そこには、肝心の安全保障面で機能不全であった国際連盟から脱皮して、実効性のある国際安全保障体制を確立しなければならないという決意が込められた。
 五十年たって、国連をめぐる環境は大きく変わった。日独など旧枢軸国も民主国家として立派に立ち直り、核兵器、麻薬、エイズや地球環境問題、南北格差など人類の生存を脅かす新たな課題が生まれてきた。
 今もって、安全保障問題は国連にとって最も重要な問題であることに変わりはないが、それ以外の問題も人類を自滅に導く可能性を持っている。これに備える体制を築かねばならない。
 冷戦を第三次大戦だったとすれば、第一次、第二次の大戦後、それぞれ新たな国際機構を創設したように、いまや新しい国連を作るようなつもりで国連の大改造に取り組むべき時だ。
 
 ――具体的な構想は。
田中 先に挙げた人類の生存を脅かす諸課題について、国連がより強い主導権を発揮できる体制にしていく必要がある。非軍事面での機能を充実させていくことだ。当面の改革すべき課題は、細川総理も国連演説で述べたように、まず、国力の盛衰を勘案した安全保障理事会構成の見直しや安保理の運用体制を挙げたい。さらに、国連の行財政の有効なチェック体制の確立、国連の際立った機能になった平和維持活動(PKO)の条件整備などだ。
 PKOは、核軍縮、通常兵器の軍縮、武器輸出禁止などの努力が前提だ。軍拡や武器輸出を野放しにしておいたら、人的にも資金的にも賄いきれない。
 業務内容や出動理由についても、国連憲章級の立法措置が必要だ。
 そうでなければPKOは際限なく膨張するし、その役割も減殺される。日本も現状のままで出動要請に応じていくばかりではだめだ。
 
 ――常任理事国入りについて。
田中 先のガリ事務総長の発言には、日本に常任理事国入りしてもらい、金をもっと出して欲しいという意図もうかがわれる。
 ただそれに応じるのではなく、金を出すならしっかり改革への注文も出すべきだ。
 常任理事国入りが絶対いけないとは言わないが、今のままの国連なら、できることなら入らない方がいい。建設的な意見は外からでも言えるし、入ってしまって、一人だけやらないということで済むのかどうか。
 少なくとも、常任理事国になりたがったり、運動したりするのは品性に欠ける。せっかく蓄積した貢献実績や影響力を、常任理事国入りの運動で費消してしまうのはもったいない。その影響力を国連改革に向けるのが正しい。
 細川総理が国連で、「改革された国連において」と前置きして、「なし得る限りの責任を果たす用意がある」と演説したのも、こういう点からだ。
 それと強調したいのは、この問題は本来ならば国民投票に値するほど重要で、何よりも十分な国内手続きと国民的合意が不可欠だ。これから国会で十分議論することが必要だ。
 
 ――PKOのあり方について。
田中 その成立過程をみると国連憲章と憲法は補完関係にあるのではないか。
 冷戦勃発(ぼっぱつ)で国連が機能まひしたため、日本は日米安保体制と自衛隊によって国連の安全保障機能に期待していた部分を補充してきた。
 国連の諸活動に積極的に参画することは憲法の当然容認するところだ。だが、容認されているからといって、何でもしてよいということではない。解釈論と現実論は全く別だ。
 ガリ事務総長は、PKO参加も選択できるという趣旨のことを語っていたが、この発言は日本にとって大きな意味を持つ。
 つまり、我々の姿勢、立場でPKOへの参加を決定していくという日本の事情に一定の理解を示してくれたからだ。
 マケドニアへの予防展開については、一歩踏み込んだら引けない恐れもある。調査ならいいとか言うが、調査して危険だから行かない、ということで通るのか。
 戦前の間違いを振り返ると、既成事実を積み重ねて後戻りできなくなった。そんなことにならないよう外交手法には十分気をつけるべきだ。
◆財政貢献国の責務/田中明彦氏
 
 ――今の国連の役割について。
田中 冷戦時代の国連が米ソの対立で何の役にも立たなかったというのは間違いだ。ただ、冷戦が終わったことで、一段とその重要性が増している。
 ところがこの一、二年、なんでも国連に持ち込まれるというように、各国の期待過剰状態に陥っている。冷戦時代に十三だったPKOの展開は、冷戦後十七にも膨れている。
 その中には、ソマリアやボスニアの活動のように困難に直面しているPKOもある。国連PKOはいま、反省と再検討の時代に入ってきたと言える。
 各国は自国の国防力に国連機能を加えて、平和と安定のため、国連をどう使っていくかを再検討する、という発想が必要なのではなかろうか。
 
 ――検討されている国連改革をどう思うか。
田中 国連創設から五十年たって、国際社会は変わっている。現実の国際社会をうまく代表しているか、有効に機能するか、などを判断していくべきだろう。
 安全保障理事会は、国連でも一番重要な組織だが、メンバーが多過ぎると有効な決定ができない。その国の貢献度や地域配分が妥当でないと、(決定が)不当だと思われることがある。また、発展途上国をどう扱うかという問題もある。
 そういう事情を考えたら、十五の安保理理事国は二十から二十五程度に増やすのが妥当ではないか。
 その際考えなければならないのは、国連の機関に責任を持つ国を入れるということ。財政的に貢献している日独が加わるのは、そういう意味からも必要だ。
 一方、常任理事国のいわゆる「拒否権」については、長期的にみたらなくす方向に進むべきだろう。これがあったために、逆に国連の崩壊を防いだという側面はあるが、法的に明白な特権が存続するのは望ましくない。三分の二以上の多数決とか、いくつか代替策は考えられる。
 
 ――日本の常任理事国入りについて。
田中 日本が責任ある立場に就くという意味で、重要だと思う。国連の機能を有効にするために積極的になるのであって、常任理事国になれば米英仏と並んで一流国になるとか、周りが文句を言わなくなるとかを期待したのではだめだ。
 常任理事国になれば、安保理の決定に常に参加でき、国際政治の動向を知るのに好都合だというメリットもある。湾岸戦争時、時々刻々変わる情報を求めて、日本の国連大使は取材に歩かねばならなかった。日本外交の質を向上させるという観点からも常任理事国入りすべきだろう。
 反面、常任理事国は国際問題全般について、態度を明らかにしなければならないという責任ある立場に立たされる。常任理事国は(軍事上の問題を含む)あらゆる問題に率先して対処しなければならないが、それは憲法を超える懸念がある――とする反対論がある。
 だが、昨年暮れ来日したガリ事務総長が言っているように、活動のあり方はその時々の情勢で判断できることだ。例えば湾岸戦争では、ソ(当時)、中は何もしなかった。そして一方では、日本は安保理の理事国ではないにもかかわらず、多国籍軍への資金提供を求められた。どっちみち要求されるのなら、安保理決議に関与して、決議を自国に有利に運んだ方がいいに決まっている。
 やや横道にそれるが、細川内閣は常任理事国入りについて、「推されたらなる」という姿勢だが、そうなれば一番いい。だからといって、難しい判断を迫られた時、「推されてなった」ために、日本への要求が寛大になることはあり得ない。財政、行政改革案などを積極的に示し、祝福されて理事国入りすべきだ。
 
 ――日本のPKOへの取り組み方は。
田中 カンボジアに続いてモザンビークへの派遣は当然だ。しかし、PKO協力法の平和維持部隊(PKF)部門の凍結は、早急に解除すべきだ。巻き込まれて危険だというなら、カンボジアPKOに個人参加した停戦監視員や文民警察官の方がはるかに危険だ。派遣のための五原則にある武力行使は個人の判断で、というのも実態から遊離したものだ。早く見直してもらいたい。
 モザンビークなど、日本の利害に直接関係ない地域に参加するのも意義がある。他国から日本の国際貢献は単なる利害のみに基づいていると見られるのは望ましくない。その意味から、旧ユーゴのうちボスニアは無理だが、クロアチアやマケドニアへの派遣は十分検討に値する。
◆“現実の国連”どう見る
〈寸言〉
 両田中氏の姿勢の相違は、現実の国連をどう見るかの違いが分岐点になっている。
 田中秀氏は、国連が単に次の世界大戦を引き起こさないための存在から、人類の未来をも視野に入れた機能を持つよう大幅に改革すべきだと強調した。
 これに対し田中明氏は、過去五十年近い国連活動に一定の評価を与え、現実の存在である国連をより理想に近づけるには、日本もその中に参画して発言すべきだとしている。
 消極派の田中秀氏が国連の重要性を十分認識しながら、いわば外からの改革を主張したのに対し田中明氏は内からの改革を唱えた。
 総理特別補佐として、細川内閣の政策に影響力を持つ田中秀氏が終始慎重な意見を吐露したのに比べ、学者の田中明氏が比較的自由な立場から孤立しない日本を訴えたのが印象的。いずれにしろ、国民挙げての論議が待たれる。
◇田中秀征(たなか しゅうせい)
1940年生まれ。
東京大学文学部、北海道大学法学部卒業。
1983年、衆院選初当選。細川首相特別補佐、経済企画庁長官等を歴任。
現在、福山大学教授。
◇田中明彦(たなか あきひこ)
1954年生まれ。
東京大学教養学部卒業。米マサチューセッツ工科大学大学院修了。
東京大学助教授を経て、東京大学教授。東京大学東洋文化研究所所長。
 
 
 
 
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