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私はこう考える【国連について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1993/09/13 産経新聞朝刊
【国連の選択】(5)財政危機 膨張するPKO費
 
 ニューヨークの国連本部には四千八百人の職員がいる。国連開発計画(UNDP)と国連児童基金(UNICEF)の本部も含めると六千七百人になる。
 「働かないで給料をもらっている人間がこんなにいるじゃないか。いつまで国連の詐欺を黙って見ていればいいんだ」
 南ダコタ州選出のラリー・プレスラー議員(共和党)が米上院外交委員会で国連職員三十八人を名指しで非難したのは七月だった。八月には同趣旨の記事が英紙サンデー・タイムズに掲載され、国連は「ポストがなくても仕事はしている。働かずに給料をもらっている職員はいない」と反論した。
 国連の費用分担率の高い先進諸国の間では事務局の「象のように巨大な官僚機構」(オルブライト米国連大使)に批判が強い。ガリ事務総長が「国連で働いている職員は何人だ」と聞いたら「半分です」−そんなジョークも語られる。
▼高まる「緊縮」要求
 このところ国連への“無駄遣い批判”は一段と厳しくなっている。平和維持活動(PKO)の費用が急速に増大しているからだ。
 国連は現在、世界の十六地域にPKO要員を派遣している。要員数は約八万人。以前はせいぜい七、八カ所で二万人どまりだったが、この二年間にカンボジア、旧ユーゴスラビア、ソマリアなどで大型PKOが相次いで登場した。
 一九九〇、九一年の二年間のPKO支出が約八億二千万ドルだったのに対し、九二、九三年の両年ですでに三十八億ドルを超え、ボスニア・ヘルツェゴビナの和平合意が成立して四万人といわれる追加派遣が行われれば、さらに三十億ドルが必要になると見込まれる。
 ガリ事務総長は先月二十六日、行政・予算を担当する「第五委員会」で「国連は重大な財政危機に陥っている」との声明を読み上げ、(1)会議は週六十三回以内に抑え、午後六時には終える(2)各国に提供する資料のコピーは二部まで−などの緊急支出削減策を加盟国に伝えた。このままでは運転資金が九月上旬で干上がってしまうというのがその理由だった。
 国連が九月に財政危機を訴えるのは年中行事といってもいい。十月になると最大の分担国で、最大の滞納国でもある米国の新会計年度が始まり、滞納分の一部がドンと支払われて国連はひと息つく。これが毎年のパターンなのだが、今年は事務総長の危機感も、加盟国側の「無駄な金は払いたくない」という主張も例年になく強い。
 当面の危機回避だけでなく、本格的な財政改革とPKO需要の増大に対応できる財源確保の方法を見つけなければ、国連は「冷戦後の針路選択」以前に台所事情によって崩壊してしまいかねないからだ。
▼防衛費から拠出を
 有識者による諮問委員会は今年二月、「効率的な国連の財政強化策」と題する報告書を発表した。委員会の共同議長は米連邦準備制度理事会(FRB)のボルカー前議長と日本開発銀行の緒方四十郎・前副総裁の二人である。
 事務総長がさっそく各国首脳に送ったとされるこの報告書は「国際社会は今後数年間に急速に拡大するPKOのコストを担う心構えを持つべきだ」として、各国に防衛費からの拠出を検討するよう求めている。冷戦終結で削減可能になった防衛費のごく一部を各国が振り向ければPKO費用は十分賄えるからだ。
 国連は今月一日、行政管理局財務官(事務次長補)に外務省の高須幸雄・在インドネシア公使を迎えた。財政改革の実務を統括する新設ポストに日本の官僚を起用したことに「事務総長はキャッシュディスペンサー(現金自動支払機)が欲しかったのではないか」といったうがった見方もあるが、八〇年代に国連の行財政改革委員会で日本側委員として活躍した高須氏に対する評価は国連内部で高い。
 国連予算の分担率は各国の国民総生産(GNP)を基礎に決められる。日本は一二・四五%で米国の二五%に次いで二位。現在のGNPからすると一五%になるのも時間の問題だが、少なくとも国連財政に関しては、日本はすでに“金しか出さない国”ではなくなっている。
(ニューヨーク 宮田一雄)
 
 
 
 
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