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私はこう考える【国連について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1993/09/12 産経新聞朝刊
【国連の選択】(4)世界超国家 非現実的な権限集中
 
 ソマリア紛争では「行き過ぎ」とさえ批判された国連の対応は、ことボスニア紛争に関する限り「及び腰」である。
 旧ユーゴスラビア地域の国連平和維持活動(PKO)には二十二カ国から二万四千人余り(ボスニアだけでも一万人)の要員が送り込まれ、これまでに五億三千万ドル(五百五十億円)が注ぎ込まれた。世界各地のPKOのなかで最も金がかかっている。だが、ボスニア紛争がぼっ発して一年五カ月。巨額のコストに見合う成果は得られていない。
 国連は昨年八月、ロンドンで欧州共同体(EC)と共催の国際和平会議を開いて以降、ボスニアのセルビア人、クロアチア人、イスラム教徒の三紛争当事者による和平交渉の仲介役を務めてきた。一方で今年六月にはボスニアの首都サラエボなど六カ所の「安全地域」を保護するため、国連防護軍(UNPROFOR)に武力行使権限を与える決議を採択するなど硬軟両面で和平への道を模索してきた。
 努力は空回りしている。国連はボスニアでは本格武力介入に踏み切れない半面、和平の仲介で「武力による国境線の変更を認めない」とした国際正義の建前を捨て、戦闘による領土支配を追認する三民族分割のミニ国家連合案を採用した。あげく、ジュネーブでの和平交渉は今月一日、決裂したままだ。
▼米欧間の不協和音
 国連がボスニア問題で効果的な機能を発揮できないのは、加盟国の中核メンバーである米欧間に紛争解決の手法をめぐる見解の相違があるためだろう。
 ソマリアでのPKOで国連部隊が最大の武装勢力アイディード派に大規模な攻撃をしかけた作戦の指揮は米軍が主体だった。ボスニアでも北大西洋条約機構(NATO)による空爆作戦計画は「集中攻撃で局面を打開する」米国流の手法だ。
 作戦計画はNATO十六カ国がすでに合意し、実施の最終判断はガリ国連事務総長にゆだねられたが、安全保障問題の英専門家は「米軍幹部は『空爆の効果には絶対自信がある』と言う。しかし、英国をはじめ欧州各国で空爆に賛成の軍関係者は一人もいない」と断言する。
 米軍はボスニアには地上軍部隊を一兵も派遣していない。これに対し欧州は国連防護軍にフランスが三千九百五十人、英国が二千三百人、スペインも一千百六十人を駐留させている。人道援助物資輸送の安全確保などが主任務で軽装備しかもたないこれらの地上部隊は、空爆が実施された場合、攻撃の主目標になるセルビア人勢力から報復攻撃を受けるのは必至。「空からは守ってくれない」との懸念が大きいのだ。
 各国間にはもっと根源的な思惑の相違があると指摘する専門家もいる。「例えば、ドイツはボスニアを含む旧ユーゴの地域紛争を国家間の戦争とみるのに対し、英国はボスニア紛争を内戦ととらえている」。だから対応にも差が出るという。
▼冷戦後の「警察官」
 ボスニア紛争のような地域・民族紛争を解決しうる唯一の答えは「国連の強化」だと指摘する声は多い。だが、現在は各国の協議の場にすぎない国連に、独自に決定し加盟国に行動を命令できる権能を与えることが妥当かどうか。
 経済・通貨、そして政治面での統合を目指すEC加盟十二カ国内ですら、統合への道筋を示す欧州連合条約(マーストリヒト条約)の批准をめぐる論議で、ブリュッセル(EC本部)への過度の権限集中への警戒心が噴き出した。国連加盟国は百八十四カ国。ボスニア和平を可能にするためには思い切った決断が必要だが、ニューヨーク(国連本部)への権限集中は非現実的である。
 ロンドン大学経済・政治学校(LSE)のポール・テイラー上級講師は「国連はポスト冷戦時代の『世界の警察官』であるべきだが、すべての国の上に立つ『世界超国家』になるなどは論外だ」との意見だ。
 そして、「湾岸戦争と違い、民族紛争であるボスニア紛争は状況がはるかに複雑。国連は今、平和維持に徹するか、それを超えた強制的な軍事行動に出るかの重大な分岐点にさしかかっているが、過去にあったような強引な決断であってはならない」と指摘した。
(ロンドン 鳥海美朗)
 
 
 
 
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