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私はこう考える【国連について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1993/09/09 産経新聞朝刊
【国連の選択】(2)変化するPKO 自衛超えた武力行使
 
 ニューヨークの国連本部では毎日正午から簡単な記者会見が開かれる。ガリ事務総長や安全保障理事会の予定、国連平和維持活動(PKO)の現地本部からの報告などが発表される。この会見で記者団から失笑がもれたのは今月一日のことだ。
 会見ではソマリアの首都モガディシオの第二次国連ソマリア活動(UNOSOM2)本部からの報告が読み上げられていた。「ジョナサン・ハウ代表ら幹部三人は今日、イタリア部隊のブルーノ・ロイ将軍のお別れ昼食会に出席してロイ将軍に感謝の言葉を贈り、イタリア部隊の貢献をたたえました」
 国連は七月、イタリア部隊のロイ司令官を本国に召還するようイタリア政府に求めた。国連に抵抗するソマリアの武装勢力アイディード派への方針の違いから、ロイ将軍がPKO司令部の命令に従わないというのがその理由だった。イタリア政府はこれを拒否し、イタリア部隊を武力衝突が続くモガディシオから他の地域に配置換えするよう逆に国連に求めた。
 この問題は、国連がイタリアの部隊配置換え要求に応じることで解決し、ロイ将軍は任期切れを待って九月に帰国することになった。解任ではないが、国連としてはイタリア側の面目をたてながら、いわば“やっかい払い”をした格好となったのだ。
 記者団がもらした失笑は、外交というものが時折見せる一種のしらじらしさに向けられたものだ。
▼「六章半」の組織
 国連のPKOは「六章半」の組織とよくいわれる。紛争の平和的解決にふれた国連憲章第六章にも、平和に対する脅威や侵略行為に対し軍事力の行使を認めた第七章にもPKOの記載はない。現実に対応するために手探りでつくり出してきた六章と七章の中間の組織というわけだ。
 UNOSOM2は今年五月、人道援助の環境を整える任務を多国籍軍から引き継いで発足した。これは、第七章を根拠にして自衛の範囲を超えた武力行使の権限を初めて認めた「七章型」のPKOであり、ガリ事務総長が昨年六月にまとめた報告書「平和への課題」の中で提唱している「平和執行部隊」の性格も備えた新しいタイプのPKOと位置づけられている。
 米軍を中心にした多国籍軍の介入でソマリアはひとまず最悪の飢餓からは脱したが、放っておけば無政府状態に戻り、再び飢餓が広がる。人道援助に必要な環境の実現には武装勢力の武器を取り上げる必要があり、そのためにUNOSOM2は従来のPKOを超えた力を持たなければならない、というのが安保理とガリ事務総長の判断である。
 国連本部では昨年一月、各国首脳が集まって史上初の安保理サミットが開かれ、就任したばかりのガリ事務総長に「安全保障の分野で冷戦後の国連に何ができるか」を報告書にまとめるよう求めた。
 「平和への課題」はその回答であった。そこには、紛争の芽を摘む「予防外交」、紛争当事者間の合意を取り付ける「平和創造」、戦闘停止後ただちに現地に国連の存在を確立する「平和維持」、社会基盤を再建する「平和建設」などを組み合わせ、冷戦時代には無力化していた国連の安全保障機能を再生させようとする考えが示されていた。
▼危険な任務が増大
 それから一年後の今年六月、ガリ事務総長は「平和への課題」に関する新しい報告書をまとめた。その中では、平和維持活動について「国連はどんどん複雑で危険な任務を実行するよう求められており、平和維持活動は急激に進化を遂げている」と強調された。
 従来の「六章半」PKOの展開は紛争全当事者の同意が前提であり、武器使用も自衛目的に限られてきた。この原則は冷戦時代に試行錯誤を重ねて生み出されたもので、新たな現実が生まれればPKOもそれに適応して変わっていくべきではないか−。
 ガリ事務総長の言う「進化」にはそんな意味が込められている。
 ソマリアでアイディード派の国連攻撃が露骨になり、国連側の反撃も激しさを増したのは、この報告書が出たのとほぼ同時期からである。この過程で起きたイタリアと国連との摩擦も「PKOの武力行使の在り方」という本質的な課題にかかわるものでもあった。
 今月五日にはPKO要員のナイジェリア兵七人が殺され、UNOSOM2要員の死者は四十七人となった。ナイジェリア部隊からは、配置換えを目前に控え目前のイタリア部隊に対し、近くにいたのに助けに来なかったと非難の声も出ている。
 「進化」したPKOはどうあるべきか。ソマリアでは、まさにそれが試されている。
(ニューヨーク 宮田一雄)
 
 
 
 
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