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私はこう考える【国連について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1993/09/08 産経新聞朝刊
【国連の選択】(1)期待と失望 “冷戦型”から脱皮へ
 
 大国間の利害衝突よりも、増大する地域紛争が安全保障の重大な脅威となった東西冷戦後の世界。その中にあって国連は、平和維持活動(PKO)への期待と失望、「かつてない危機」(ガリ事務総長)にある財政、安全保障理事会の改編など深刻な課題に直面している。来年十月には五十年目の歴史を刻む、この巨大な国際組織は、二十一日から始まる第四十八回総会を機に「変革に向けた選択」をいや応なく迫られる。
(ニューヨーク 宮田一雄)
 
一九七八年     一三
一九九二年     七四
 これは国連の安全保障理事会が一年間に採択した決議の数。
 
一九四五−九〇年 二七九
一九九一−九三年    一
 こちらは安保理で五常任理事国が行使した拒否権の数である。
 
 国連は安保理決議に基づいて世界の紛争地域に調査団やPKOの要員を派遣し、紛争の解決と再発防止を図る役割を担う。決議が増えて拒否権行使が減ったのは、平和と安全を維持するための国際組織として活躍の舞台が広がったことを意味する。
 決議の採決や公式の演説を記録に残しておくための、いわばセレモニーである公式協議よりも、非公式協議と呼ばれる非公開の意見調整や議論のための時間が大幅に増えているのも最近の特徴だ。だが同時に、これほどの数の決議や非公式協議を積み重ねても、世界になお数多くの紛争が満ちているという点では、現在の国連の限界を示してもいる。
▼啓もう以上の役割
 ニューヨーク・マンハッタンの国連本部一階。イーストリバーに面したカフェテリアは一度に七百人が食事をとることができる。ここを利用する国連本部や各国代表部の職員、マスメディアの特派員は世界中から集まってくる。国連加盟国は現在百八十四カ国。昼食時のカフェテリアは世界で最も多様な民族が食事をともにする場所だ。
 この食堂の隣にもう一つ、「世界」が集まるところがある。直径十一メートルの巨大なパラボラアンテナである。イーストリバーに面して大西洋から欧州に向けられているこのアンテナには、ジュネーブの国連欧州本部や世界六十六カ国の国連広報・サービスセンターなどのほか、世界の紛争地域十六カ所に展開するPKOからも通信衛星を通じて一日二十四時間、絶え間なく情報が送られてくる。
 「国連は加盟国の機密情報を探るような諜報(ちょうほう)機関まがいの行動はとりません。でもメディアによる報道や現地で公開されている情報は幅広く集め、それを基に世界の現状を把握し、問題があれば各国政府、NGO(民間公益団体)や個人に情報を提供して必要な行動を促す。つまり情報収集、現状把握、世界の啓もうというのが国連が果たしてきた役割でした」。中堅クラスの国連職員の一人はこう話す。
 「役割でした」と過去形で語られているのは、米ソが拒否権行使で安保理決議をつぶし合ってきた時代に、やむを得ず選択してきた「世界の啓もう」以上の役割が国連に求められるようになっているからだ。つまり「冷戦型」機能からの脱皮である。
▼UNTACは幸運
 国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)の明石康代表は七月十二日、安保理でUNTACが主導した五月のカンボジア総選挙について報告した。国連事務次長からUNTAC代表に転じた明石氏の一時帰還はさながらがい旋将軍のように迎えられ、安保理でも各国から「よくやった」と賛辞が寄せられた。
 「ナポレオンが将軍たちに求めた要件の一つはラッキー(幸運)であれということだった。明石さんはその要件を備えている」。七月の安保理議長だったイギリスのハネイ大使はこう語ったと伝えられる。
 PKOがソマリアでは「やりすぎ」と非難され、ボスニアでは「及び腰」との批判を受けていた時期である。英国流ユーモアに巧みに隠されてはいたが、ハネイ大使の言葉は賛辞であると同時にPKOの現実の苦い側面を鋭く表現したものでもあった。
 第二次大戦の連合国(ユナイテッドネーションズ)が大戦の再発を防ぐためにつくった組織である国連(国際連合=ユナイテッドネーションズ)は、皮肉にも「冷戦」という戦後の歴史が幕を閉じることで初めて本来の機能を果たしうる機関としての期待を集めるようになった。そして、そのために批判を受ける機会も多くなっている。
 国連は世界の平和を守る万能の切り札ではないが、無用の長物というわけでもない。過剰な「期待」やその裏返しである「失望」の間に位置して、混乱と矛盾に満ちた国際社会の紛争に対処しようとしているのがおそらく現在の姿である。
 
 
 
 
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