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2004/06/29 読売新聞朝刊
[社説]国連改革 常任理事国入りが核心の課題だ
 
 国連の中核的な役割は、安全保障理事会を中心に、世界の平和と安全を維持・創出することにある。
 川口外相の私的懇談会である「国連改革有識者懇談会」が「21世紀における国連の役割と強化策」と題する提言を外相に提出した。
 米ソ対立の冷戦期は無論、今日もイラク開戦をめぐる安保理常任理事国間の対立で機能不全に陥るなど、国連は十分に役割を果たしているとは言えない。
 国連の役割と有効性への疑念も広がる中で、安保理改革が国連改革の中心課題となるのは当然だ。提言は、「日本外交の最優先課題」として、安保理改革に取り組むよう求めている。
 国際社会の平和と安全は、日本の存立の基盤だ。テロや大量破壊兵器の拡散など、「新たな脅威」に対処するには、国際社会の協調行動が不可欠だ。
 日本の場合、日米同盟を基礎に有志連合で対処する場合も当然ありうる。だが安保理の実効性を高めることは、平和と安全の維持・創出に、より大きな成果をもたらすはずだ。
 そのためには、日本も常任理事国として、応分の役割と責任を果たす必要がある。提言は、安保理のメンバー構成について、国連創設から約六十年、大きく変化した国際社会の現実を反映させるよう、主張している。
 大戦の戦勝国による常任理事国五か国体制が、いつまでも固定されたままでいいはずがない。日本を含め、国際社会の平和と安全に「責任を担う意思と能力を持つ国」を新たに常任理事国に加えることは、国連の正統性、実効性を高めるためにも必要なことだ。
 日本は米国に次ぐ国連分担金の負担国だ。英、仏、露、中の四常任理事国の合計よりも多い。財政貢献に見合った発言力を持つのは当然である。
 だが、非常任理事国でもない現状では安保理の意思決定には直接、参加できない。これでは、例えば、北朝鮮情勢はじめ、東アジアで安全保障上の重大な問題が起きても、国連の対応に、日本の意思を十分に反映させることができなくなる恐れがある。
 日本が日米同盟を重視する理由はここにある。日本が常任理事国入りすれば、国連の実効性も高まり、日米同盟と相まって、日本は、地域の平和と安全に、より大きな貢献ができるだろう。
 常任理事国入りには、当然、責任も伴う。政府は憲法上、軍事的貢献は制限される、と言う。自衛隊を、どこまで、どう活用するのか、憲法問題をはじめとする国内での論議も避けて通れない。
 
 
 
 
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