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私はこう考える【国連について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1999/01/27 読売新聞朝刊
[20世紀どんな時代だったのか](220)国際連合創設=下(連載)
◇戦後体制
◆現実政治の「力」を体現
 四四年八月から十月にかけ、ワシントン郊外ダンバートン・オークスで米英中ソの四大国代表による会議が開かれた。米国はこの席で総会、安保理、国際司法裁判所、事務局を柱とする現在の国連の枠組みを規定した提案を行った。しかし、安保理での拒否権や総会議席数をめぐりソ連と米英との対立が噴き出した。
 拒否権については「拒否権保有国が紛争の当事者であった場合、その国は拒否権を行使できない」との米英提案に対しソ連が猛反発した。後に外相となるソ連首席代表、アンドレイ・グロムイコ駐米大使は「ソ連邦を構成する十五共和国すべてに総会議席を与えることを要求する」との爆弾発言を行った。ソ連邦全体の一議席を加えソ連は計十六議席を要求したことになる。
 歴史家ロバート・ヒルダーブランド著「ダンバートン・オークス」は、ソ連は戦後世界での孤立化を懸念して多議席確保を狙ったと指摘する。ルーズベルトはこの要求に「マイ・ゴッド」と叫んで仰天、「外部に漏れたら国連構想自体が崩れる」と深刻な危機感を示したという。これは米外交団の間で「X事項」として極秘扱いされることになる。
 会議終了後、ほぼ米国案に沿った形で新しい国際組織「国際連合」の形態が発表されたが、拒否権と総会議席については首脳同士の政治決着に任されることになった。結局、ルーズベルト、チャーチル、スターリンの三首脳によるヤルタ会談(四五年二月)で〈1〉紛争当事国でも拒否権が行使できる〈2〉ソ連にはウクライナと白ロシアを加え計三議席を与える――との妥協が成立した。国連創設を決めたサンフランシスコ会議(四五年四月―六月)に米国代表団の記録係として同席したローレンス・フィンケルシュタイン氏(73)は「米ソとも大国として拒否権がどうしても必要だった。この点については基本的相違はなかった。だから妥協が成ったのだ」と言う。
 もっとも、フランスを含めた五大国の拒否権については、サンフランシスコ会議で、オーストラリア、オランダ、中南米諸国などが強く反発した。ソ連も「投票だけでなく討議を行うかどうかについても拒否権が行使されるべし」と主張したが、結局、米国などの説得で譲歩することになる。元国務省高官のジェームズ・サタライン氏は「国連創設の最大ポイントは、五大国以外の加盟国が、安全保障問題で拒否権を持つ五大国の決定に従わざるを得ないことになり、自国の主権の一部を放棄することになったことだ」と指摘する。大国主導の体制がここにできあがった。
 サンフランシスコ会議の雰囲気についてフィンケルシュタイン氏は「戦争終結が見えており、大いなる楽観主義に包まれていた」と述懐する。それは米国の圧倒的な力を背景にしていた。歴史家スティーブン・シュレシンガー氏によると、米国はほとんどの国の代表団と本国との電報のやりとりを盗聴しており、会議を自分のペースで運ぶことができたという。また、「米国はオーストラリアなど戦争で疲弊した多くの国にサンフランシスコ行きの軍用機まで提供した」と同氏は語る。
 ルーズベルト大統領はこの会議が始まる二週間前に死去したが、大統領の理念を強く反映した国連憲章は六月二十五日に全会一致で採択された。
 四四年末まで国務長官を務めたコーデル・ハルは「国連創設は真の文明社会に向け人類が築いた偉大なる一里塚」と絶賛した。しかしシュレシンガー氏は「国連は民主主義ではなく力そのものを体現した組織。だからこそ現在まで生き残れた」と言い切る。
 理想主義ではなくリアルポリティック(現実政治)に根ざした国連の実態は、今もまったく変わっていない。
(ニューヨーク 寺田正臣)
〈国連機構〉
 安保理は当初、11理事国(5大国を含む7か国の賛成で可決)で構成されたが、65年に現在の15理事国(可決必要数9)に改正された。サンフランシスコ会議では軍事行動には総会の同意を必要とすべきとの意見もあったが、大国に押され総会の権限は「勧告」にとどまった。国連発足時点の加盟国は51国。現在の加盟国数は185か国。
 
 
 
 
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