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私はこう考える【国連について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2005/01/05 毎日新聞朝刊
社説:戦後60年で考える 国連改革と世界 新たな協調のルールを築け
◇地球社会に視野を広げて
 日本の戦後60年は、国際社会にとって第二次世界大戦終結60年にあたる。国連創設60年の重要な節目でもある。
 大戦の死者は6000万人、うち民間人は4000万人ともいわれる。強国が力と野望をむき出しに殺りくを重ね、「戦争の世紀」と呼ばれた20世紀でも最悪の流血をもたらした。
 その終結から60年――。世界は歴史の教訓をどれだけ生かしてきたのか。2度の大戦と国際連盟の失敗を踏まえて誕生した国連は、その使命をどこまで果たしてきたのだろうか。
 そんな視点に立って05年の国際政治を眺めると、年明けから重要な日程がひしめいている。ざっと並べただけでも、9日にパレスチナ自治政府議長選挙、30日にはイラク移行国民議会選挙が行われる予定だ。20日には昨年再選されたブッシュ米大統領の第2期政権がスタートする。
◇テロがえぐるひずみ
 そのブッシュ大統領は2月、イラク戦争で深まった米欧関係の溝を埋めるために訪欧の途に就く。3月にはブレア英首相の呼びかけで中東パレスチナ和平国際会議が招集される。
 国際社会のテロとの戦い、アフガニスタン、イラク両戦争、その背後で進まない中東和平――という筋で見るならば、新春3カ月の政治日程がこの1年間とその後に続く世界の流れを方向づけるほどの重要性をおびていることは言うまでもない。
 01年の米同時多発テロ以来の3年余、世界は国際社会が求める国際協調と米国が志向する単独行動の間で大きく揺れ動いてきた。
 テロの背後には、中東和平が一向に進まない現状に対するイスラム・アラブ社会の強い不満と不公正感もひそんでいる。加えて、イラク戦争後の反米感情の広がりと国際社会の亀裂は、国連を中心としたテロとの取り組みまでも色あせさせてしまった。
 そうした世界のひずみを深くえぐる形で、イスラム過激派などの国際テロが拡大している。
 イラク復興と中東和平の道は今後も険しい。しかも、世界が抱える課題はこれだけではない。イラン、北朝鮮の核拡散問題の解決、中東・アフリカなどの貧困や疾病の克服と民主化、さらには京都議定書発効など地球環境を守る努力も加速させなければならない。
 過去2年にわたり、国連も大きく傷ついた。バグダッドの国連事務所爆破テロ(03年)後は国連自体がテロのターゲットとなり、約10万人の職員の安全確保に重い影を落としている。昨年はイラク人道支援事業などの疑惑も相次ぎ、受難と災いの時が続いた。
 しかし、世界が悪い方向にばかり進んだわけではない。3月には昨年末の有識者諮問委員会報告を受けて、アナン国連事務総長が国連改革の具体案をまとめる。改革案は9月の国連創設60年記念総会へ向けて本格的に討議され、検討されることになる。
 委員会報告は「地球社会が直面する最大の脅威」として▽貧困と環境の悪化▽国際テロ▽内戦▽国家間紛争▽大量破壊兵器の拡散▽国際組織犯罪――の6分野を挙げた。目先の注目は安全保障理事会の拡大方式に集中しがちだが、改革の本旨は国連憲章の土台である「集団安全保障」の理念にある。この原則に立って、新たなルールを確認し、機能を強化することにあることを忘れてはならない。
 国連は60年前の6月、世界大戦の惨禍を繰り返さないために、米国が主導した新たな国際主義の象徴として生まれた。何よりも、ブッシュ政権にはその原点に立ち返って国連を生かし、活用することが米国の利益にもなることを銘記してもらう必要がある。
 イラク人と米兵の犠牲を生み続けるイラク情勢は、ブッシュ政権に痛い教訓となった。2期目の発足にあたって欧州や国連との関係修復を掲げたのも、そうした国際世論を意識したものだろう。
 と同時に、国連を支える通常予算の4割強が日米2カ国に支えられているいびつな現状も無視できない。さらには昨年末、アナン事務総長が述べた「米国も国連を必要としている。国連にも米国が必要だ」という指摘は重い。
 国際社会の総意を最も権威ある形で代表し得る普遍的組織は他になく、それを生かすも殺すも加盟国次第だ。この現実をすべての加盟国が認識しなければ、実のある改革は進まない。
◇他に代わる機関はない
 米国を疎外しては国連改革も成立しない。国連の強化と改革へ米国を巻き込んでいく一層の工夫が他の国々にも求められる。とりわけ欧州は拡大欧州を作り上げた知恵を国連再生にも生かすべきだ。
 英国による中東和平会議開催もそうした動きの一つと位置づけたい。パレスチナ選挙が成功し、イスラエルとの対話が再開されるならば、国連、米、露、欧州連合(EU)の4者が進めるロードマップ(新中東和平案)に新たなはずみをつける好機となる。
 昨年末起きたスマトラ沖大地震では、犠牲者が14万人を超す中で日米欧、国連、国際赤十字など国際社会が一体となって救援の輪を広げつつある。武力行使と災害の違いはあっても、世界がより狭くなったことや、一地域の災厄が地球社会全体に影響を及ぼすことは誰もが痛感したに違いない。
 この発想を見失わず、世界の平和と安全の維持にとっても、各国の調和と協力が不可欠であることを節目の年の初めに改めて確認しておきたい。日本は05〜06年の2年間、国連安保理の非常任理事国を務める。広い視野と歴史的認識に立って日本外交を展開し、実りある一年にしてもらいたい。
 
 
 
 
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