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私はこう考える【国連について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1993/03/23 毎日新聞朝刊
<新時代の国連>/11 常任理事国のイス 日本・ドイツを警戒する英国・フランス
 
 欧州から国連安保理常任理事国のイスを占める英と仏。いずれもかつての大国の面影はなく、中級国家となっている。それでも国際秩序を事実上支配する立場である常任理事国の座を手中にしていることから、「エコノミーの切符で、ファーストクラスに乗っている」との皮肉も聞こえてくる。
 仏の国連への取り組みは冷戦崩壊を境に大きく変わった。かつてドゴール元大統領が「例のもの」と国連を見下げた言葉で呼んだのはよく知られた話。東西のブロック対決をそのまま持ち込み、綱引きと拒否権の投げ合いの場になっていた国連に、仏はいささかも幻想を持っていなかった。
 しかし冷戦後、急速にコミットの度を深めていく。湾岸戦争直後、イラク国内のクルド人の大量国外流出で、仏は人道的干渉権の概念を打ち出し、国連のクルド人支援、ソマリアへの人道援助に道を開いた。さらにカンボジア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ソマリアに国連の旗の下で仏軍を派遣するなど国連活動の活性化にイニシアチブを取っている。
 仏政府のこの態度の背景には、国連が国際秩序を“仕切る”場になったことで、常任理事国として積極的に政治意思を反映させ、国連を切り回していこうという考えがある。
 冷戦時代、仏は東西ブロックの間げきをぬって、独自外交を展開、これをカードに東西双方に発言力を確保した。冷戦崩壊は外交上、仏を苦しい立場に立たせたが、今度は国連という場を見いだしたとも言える。
 仏は日、独の常任理事国入りについて「常任理事国は経済力だけでなく、政治力を持つべきである」との表現で事実上反対の考えを示している。国連中枢の意思決定者が増えることで、仏の発言力が相対的に低下することへの懸念がある。特に米国と関係の強い日独両国だけに、常任理事国内の討議で仏が少数派に追いやられる可能性は強い。
 日、独の安保理常任理事国入りに警戒感が強い点では英国も同様だ。クリストファー(米国務長官)案が出た時、英外務省は「いま国連安保理を改組する理由はない」と反発した。「今行うべきは貢献の方を全うすることだ」と英政府筋は述べた。米国が支払うべき国連分担金を支払っていないことを皮肉り、「緊急性のないことより、緊急なことをまずやるべきである」というのだ。「特殊関係」にあると自他ともに認める米英関係に、ややヒビが入った感があった。
 英国が反対するのは、仏と同様、国際社会の中における自国の地位低下をヒシヒシと感じているからだ。
 いま英国政府には二つの感情が渦巻いている。一つは、英国は中級国家であるとの現実認識に基づき、国連や欧州共同体(EC)などに実力以上に手を出すべきでないとの感情。もう一つは、保守党右派に根強い大英帝国へのノスタルジアであり、国際紛争にも積極的に介入すべきだ、との立場だ。サッチャー前首相がその筆頭格で、「セルビア側の空港を爆撃すべきだ」と発言して物議をかもした。この揺れる二つの感情の間で、いかに英国の立場を保持するか、常任理事国として発言力を確保するかが、英外交にとって重要な課題となっている。
 ただ欧州連合条約(マーストリヒト条約)に基づき共通の防衛・外交政策が動きだした時、常任理事国のイスがどうからんでくるかといった遠い将来をにらんだ議論も起き始めている。EC加盟国が防衛、外交両面で共通政策を採用すれば、常任理事国に英仏二カ国が入っている必要はなくなるからだ。そうなると単に日、独の常任理事国入り問題にとどまらない広がりを持つことになる。目先のことだけでなく、マ条約とのからみを見据えた議論が出るところに、外交で生き抜いてきた欧州の老練さが伝わってくる。
(ロンドン・黒岩徹、パリ・西川恵)=つづく
 
 
 
 
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