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私はこう考える【国連について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1993/03/17 毎日新聞朝刊
<新時代の国連>/6 事務総長の狙い 平和創造機能を強化
 
 「安保理が、何もできないとは情けないじゃないか」と国連ロシア大使が憤慨していた昨春、旧ユーゴ紛争とソマリアの内乱は激化の一途をたどっていた。四十年余にわたり安全保障理事会を機能停止状態に陥れていた冷戦の一方の当事者が、安保理の行動を訴える。そこに、確実に国連新時代が訪れていることをガリ国連事務総長は十分に把握していた。
 日本政府の一部で「危険文書」とまでささやかれた、ガリ総長の国連機能強化に関する提案「平和への課題」(アジェンダ・フォー・ピース、一九九二年六月)。それは、安保理の雰囲気を読み取り、漠然としていた「国連活動の将来像」を、加盟各国の目の前に鮮明に描き出したものだった。
 「安保理が私にこの報告書の作成を促したことを喜んでいる」とガリ総長が感情の高ぶりを行間ににじませて書き下ろしたこの提案は、紛争の解決だけでなく、紛争予防・平和創造及び平和執行活動こそが国連に求められる機能であると規定。そのためには、原則的に武力行使権限のない従来の平和維持活動(PKO)の限界を超え「実効性のある活動権限と手足が必要である」とガリ総長は主張した。
 だが、ガリ提案の内容は決して新しいものではない。例えば「平和執行部隊」と受け止められる国連緊急展開部隊(UNRDF)などは、すでに六〇年代に提案されているし、国連憲章でも安全保障のための武力行使権限が付与されている。しかし冷戦下では非現実的であった「憲章及び条項の解釈と実行」の道筋を、ガリ提案は具体化したのである。
 ソマリアへの人道目的多国籍軍の展開、マケドニアへの紛争予防目的のPKO派遣など、従来は考えられなかった活動が実行できたのも、安保理、とりわけ拒否権を持つ五常任理事国に国連を活性化すべきだとの基本合意があるからだ。昨年一月に開催された史上初の「安保理サミット」でも確認されている。
 同提案を受け、米政府はいち早く関係省庁会議を発足させ、その具体化への対応を検討している。
 米政府及び国連事情に詳しい米国連協会のラルフ・シュワマン副会長は「UNRDFに関しては、クリントン政権が近く設置を決定するだろう。軍備縮小で閉鎖が検討されている国内基地の一部がRDFの訓練基地になろう」と言う。
 米、仏などRDFに積極的な常任理事国に共通する国連観は「国連が世界の警察官」としての機能を、より効果的に執行すべきだとの立場である。その背景には「ポスト冷戦時代には、集団安全保障体制が不可欠との認識」(同副会長)があり、不干渉主義の中国が妥協できる範囲での「国連の世界警察機能」を国連活動に加えることが、結果的に主要諸国にとって最も効果的かつ経済的だからだ。
 ガリ提案の個々具体的な課題、方法論はまだ煮詰まっていないとはいえ、国連機能強化に関しては昨年の総会でも大方が支持を表明した。国連外交筋によるとこうした国際世論を受け、ガリ提案への具体的な対応を検討する安保理理事国による閣僚レベルの会議が近く開催される。
 国連平和活動の主軸は、平和創造に向けて既に走り始めている。日本のPKO法で対応できる従来型の平和維持に加え、国連憲章に基づく武力行使権限を背景とした平和執行(エンフォースメント)活動(PEO)の始動である。
 その大規模な展開がソマリアや旧ユーゴ紛争で眼前に迫っている。ただし、こうした行動が国連主導下の恒久平和につながるかどうか、実験は始まったばかりだ。
(ニューヨーク・田原護立)=つづく
◇メモ
【国連平和維持活動】
 国連憲章が当初想定した国連軍が東西冷戦で機能しなかったため導入された次善策で、受け入れ当事者の合意に基づき紛争地域の停戦監視、平和維持の任にあたる。安保理の派遣決議に基づき事務総長の指揮下で編成される。自衛以外の武力行使は許されない。通常予算とは別枠のPKO特別分担金で運営される。現在カンボジアなど13地域に5万人以上が展開。1988年ノーベル平和賞受賞。
 
 
 
 
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