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私はこう考える【国連について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1992/10/09 毎日新聞朝刊
[ニュースの底流]改革論議高まる国連安全保障理事会
 
 九月十五日から始まった第四十七回国連総会で、安全保障理事会の機構改革問題が声高に論議されている。総会史上初めてといえる内容と具体性を帯びており、もはやうやむやには済まされない状況になり始めている。冷戦終結を受け、国連憲章が目指す理想に向けて安保理が現実的機関として機能し始めたことが、その原点にあり、言い換えれば二十一世紀の国連の在り方が問われているともいえる。
 論議の背景にあるのは安保理常任理事国の構成が時代遅れになっているとの現実認識である。一九四五年の国連創設当時、拒否権という「特権」をもつ常任理事国(P5)である米英仏露(旧ソ連)中の戦勝五カ国は、軍事力、経済力及び政治力に関して、確かに国際社会(国家群)の中核をなしていた。このため、平和維持、紛争解決には全常任理事国の同意がなければ、具体的行動はとれないとの見解は現実的であった。
 だが、皮肉なことにその直後から米ソを両極とする東西対決・冷戦に突入し、緊急かつ重大な紛争に関して、常任理事国は拒否権の応酬に終始し、国連唯一の「行動決定機関」の安保理は機能停止状態が続いていた。その安保理が、本来求められていた機能を果たし始めたのは冷戦終結を受けて生じた湾岸危機・戦争からである。
 ところが、その五十年弱の間に国際社会に実質的な影響力を有する「国家群」のメンバーは大きく変わってきた。先進諸国でいえば日本、ドイツの台頭である。また、発展途上国をみれば、南北格差の是正を求める非同盟諸国を代表するブラジルやインドなどだ。
 イデオロギー対立の時代は去り、軍事力のみではなく経済力や民族的、宗教的結束力に裏打ちされた政治力学が、国際社会の主流になった。
 一方、国連への資金面(一般分担金)での貢献度を見れば、現在、米日独の三カ国だけで約四七%を占める。それに比べ、英仏露中は相対的に大幅に地盤沈下した。にもかかわらず、常任理事国が「政治大国」として安保理の決議過程に決定的な権力を行使できる組織は、国際社会の現状を反映しているとはいえない。
 経済力だけの問題ではない。この半世紀にアジア・アフリカなどで、国連創設当時は植民地だったり属領だった地域が続々と独立し、国連に加盟した。サンフランシスコ創立会議で五十一カ国により結成された国連加盟国は現在百七十九カ国。近代国家観でいえば「民族の自主自決と主権尊重」(欧米の主張でもある)から、すべての国家は対等な関係でなければならないはずである。
 約半世紀前、理想と現実のはざまで生まれた常任理事国の存在を否定することはできないが、変質する地球社会の中で固定できるものでもない。まして、唯一の「地球規模の平和機関」として、多くの諸国が国連への期待を高める中、安保理機構が時代の現実に合わせて改革されなければならないのは自明の理である。
 しかし、改革提案はあまたあっても、モデルになる前例は存在しない。このため、英仏は既得権への固執をオブラートに包んで現状の安保理重視を演出し、ロシア、中国は「波風は立てたくない」と黙り込んでいる。米国にしても、やたらと常任理事国が増えることなどは求めていない。それゆえに「特権・仲良しクラブ」との辛らつな陰口が、あちこちでささやかれる。
 安保理改革論議は、いってみれば、冷戦終結でかぎが緩み始めた国連版「パンドラの箱」である。こじ開けようとしている諸国の中の有力メンバーである日本は、慎重な準備と相当な覚悟が求められている。
(ニューヨーク・田原護立)
◇一般分担金比率(%)
  57年 71年 92―94年
米国 33.3 31.5 25
ロシア 14 14.2 9.4
イギリス 7.8 5.9 5
フランス 5.7 6 6
中国 5.1 4 0.8
イタリア 2.1 3.5 4.3
日本 2 5.4 12.5
ドイツ
(東西独加盟は73年)
    8.9
合計 70 70.5 71.9
(注)56年12月、日本加盟承認。露は旧ソ連でウクライナ、ベラルーシ分含まず
 
 
 
 
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