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私はこう考える【天皇制について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2000/05/17 毎日新聞朝刊
[ニュースキー2000]森首相「神の国」発言 憲法理念に逆行
◇唐突に「戦前」復活
 「日本は天皇中心の神の国」という森喜朗首相の発言は、「教育勅語にもいいところがある」という持論とともに、天皇制支配の下で侵略戦争に至った戦前の軍国教育の復活、と受け取られかねない。首相周辺は「宗教や道徳教育の大事さを説いた」と釈明しているが、「神の国」発言は国民主権という現行憲法の理念に逆行するだけでなく、政教分離原則に抵触する恐れもある。首相がどんな憲法観や国家観を持つのか、改めて問われている。
【及川正也、高安厚至】
 首相は16日、「天皇は悠久の歴史と日本の伝統文化を表現している」「(戦後民主主義体制を)どうこうしようという話ではない」と釈明したが、首相発言は民主党の鳩山由紀夫代表が指摘するように、国民主権をうたった現行憲法の否定につながるものだ。
 神道は、祖先崇拝の民間信仰が仏教や儒教の影響を受けて理論化されたと言われているが、1868年の明治維新以後は国策によって神社神道と皇室神道が結びつき、国家の宗教(国家神道)として再編された。国家神道は旧憲法下での天皇制支配の精神的支柱となり、教育勅語とともに、軍国主義を推し進めるテコの役割を果たした。天皇は現人神(あらひとがみ)とされ、国民は天皇の「赤子(せきし)」と呼ばれた。
 敗戦後は、戦前の反省から、天皇は「国民統合の象徴」であり、限定された国事行為を行うだけとする、主権在民の現行憲法が生まれた。1946年1月、昭和天皇は、天皇と国民の関係について「たんなる神話と伝説とによりて生ぜるものにあらず。天皇をもって現御神(あきつみかみ)とし、かつ日本国民をもって他の民族に優越せる民族にして、ひいて世界を支配すべき運命を有すとの、架空なる観念に基づくものにもあらず」という「人間宣言」を発し、自らの神格を明確に否定している。
 「天皇中心の神の国」という首相発言の延長線上には、「天皇=神」を想起させる戦前の「天皇制」が浮かび上がる。野党が批判する根拠もここにある。
 国家による特定の宗教団体の保護、援助を禁じた憲法の政教分離原則は、GHQ(連合国軍総司令部)による国家神道解体(神道指令)により生まれた。
 だが、首相が神道の政治団体の場で、日本が「天皇を中心にした神の国」であることを「国民に承知していただく」とまで踏み込んで発言したことは、皇室を含め多彩な祭神を持つ神道の「布教」を、首相が支援したとも受け取れる。
 また、首相は「天皇の聖旨」だった戦前の教育勅語(48年に失効)についても、就任以来「普遍的哲学があった」「親孝行や兄弟仲良くとか家や国を大事にとかの良いところは復活させないといけない」などと言及している。
 しかし、勅語は非常時に義勇奉公し、「皇運」、すなわち天皇制国家の繁栄を助けることも明記。これらの教えを歴代天皇の遺訓とし、臣民として守るべきだと説いている。首相が評価する「家」「国」も、天皇が頂点の家父長制国家と不可分なのは明らかだ。
◇不用意さに失望−−「教育改革国民会議」の委員、当惑
 首相発言には、首相の私的諮問機関「教育改革国民会議」(江崎玲於奈座長)の委員からも当惑や反発の声が上がっている。
 山折哲雄・京都造形芸術大大学院教授(宗教学)は「天皇中心だとか神の国だとか、宗教教育の問題を浅薄な形で出された」と残念がり、「世俗を超える価値の存在を考えることは大事で、せっかく宗教と教育の問題を慎重に審議していこうという時に特定の教団の立場に立って発言するのは軽率」と批判した。
 また、自身もクリスチャンの梶田叡一・京都ノートルダム女子大学長は「神道団体でのリップサービスでしょう」としつつも「信教の自由が失われた国家神道の時代を連想させ、危惧(きぐ)するものがある」と指摘。藤田英典・東京大教育学部長は「先進国の趨勢(すうせい)は宗教を知識として伝え、考える教育だ。特定のイデオロギーと結び付ける発言をすべきではない」と言う。
 「宗教の素地がない日本で宗教教育を何とかしなければならないとは考えている」(木村孟・学位授与機構長)との考えは多くの委員が共有しており、上島一泰・日本青年会議所会頭のように「人は一人で生きていけないという点を指摘することは大事だ。人が生かされているとの認識を訴える点は評価する」と前向きに受け止める人も。それだけに、首相発言の不用意さへの失望感が、委員の間に広がっている。
◇不快感と冷笑と
◆中国
 中国外務省の章啓月報道局副局長は16日の記者会見で「我々は日本が歴史問題を真剣に責任を持って取り扱い、中国や他のアジア諸国の人民の感情を傷つけないよう希望している」と述べ、間接的ながら森首相発言に不快感を示した。
 また、章副局長は「日本は過去、特に第二次大戦中の教訓をくみ取り歴史の再演を防ぐべきだ」と述べ、「正確な歴史認識は中日友好協力関係を発展させるうえで、極めて重要な政治的基礎だ」と強調した。
【北京・坂東賢治】
◆韓国
 16日の韓国の各マスコミは、森首相の「神の国」発言内容や野党の反応などを報道。日本国内で批判が高まっていることに焦点を当てて「発言が大きな波紋を広げている」と伝えた。
 有力紙幹部は「時代錯誤の発言で笑ってしまう。日本で憲法問題に発展するのかもしれないが、韓国では今のところ、政治的に問題視するような動きは見られない」と話している。
【ソウル・澤田克己】
◇皇室の尊厳など守る運動展開−−神政連とは?
 森首相の発言の舞台となった「神道政治連盟」(神政連)は、全国の神社の9割、約8万社を束ねる宗教法人・神社本庁(東京都渋谷区)の政治団体として、1969年11月に結成された。元号法制化に向け、政治力をつけることが直接の目的だった。
 神政連に呼応する形で翌70年5月、「神政連国会議員懇談会」が作られた。現在の加盟議員は自民党の229人。懇談会長の綿貫民輔・旧小渕派会長は自身が神主で、幹事長は村上正邦同党参院議員会長。顧問である森首相は発足時からのメンバーだ。
 神政連の活動を紹介するパンフレットは、「日本は皇室を中心に栄えた国」として、皇室の尊厳と伝統を守る運動、靖国神社の公式参拝を推進する運動、自主憲法制定運動などの項目を並べている。
 
 
 
 
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