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私はこう考える【天皇制について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1996/05/29 毎日新聞朝刊
[ビッグ追跡]首都機能移転で皇居どうする 「天皇の姿」に変化も
◇皇室外交、アピールの場が減る−−元侍従
◇触れずに済ませたい−−国土庁にじます
 新しい日本の首都となる場所を2年後までに決めようという国会等移転法改正案。賛否が渦巻き、今国会に提案されるかどうか、ヤマ場を迎えている。この首都機能移転論議の中で、抜け落ちている重要テーマがある。皇居をどうするかだ。政府は「陛下は東京に残る」との方針を明らかにしているが、皇居と、国会などが集まる新首都の分離は、象徴天皇のあり方を変える可能性も秘めている。首都機能移転で皇室はどうなるかを探った。
【森暢平】
●近未来シミュレーション
 西暦2015年5月X日。東京から新幹線で2時間ほどのある都市に首都が移って5年たった。菊の紋入りの漆箱をかかえ新首都から東京に来た官僚2人が皇居の門をくぐる。朝の閣議で決まった政令5件、叙勲1件について、天皇の署名と御璽ぎょじをもらうためだ。
 侍従「午後3時に陛下のお手元に上げますのでお待ち下さい。あなた方も火、金曜日の閣議のたびに新幹線でご苦労ですな」
 官僚「書類運びに丸1日。遷都の理念は効率的な政府づくりだったのに・・・」
 侍従「御名、御璽だけはインターネットで、とはいきませんからね」
 この年、三権の長ら要人約500人が宮殿に集まった天皇誕生日祝賀行事のさなか、外国で軍事衝突が起こった。新首都ががら空きで、初動態勢が遅れた政府に世論の批判が集まった。
 以上はひとつの近未来シミュレーション。話を現実に戻そう。元侍従A氏は「移転は国の根本にかかわる大問題を内包する」と懸念する。宮中晩さん会を例に挙げたA氏は「将来の国賓は新首都で首脳会談をする一方、東京の宮殿で天皇との会見や晩さん会など外交儀礼をこなさなければならない。この繁雑さを避けようと実務レベルの来日が増えるのでは。華やかな皇室外交をアピールする場が減ってしまう」と心配する。
 東京に本部を置く各種団体も移り、行事も新首都で行われるようになれば、天皇出席の行事も減る。「国民との触れ合いも少なくなります」とA氏。
 5月、陛下は126件の書類に署名し、外国に赴任する大使5人を認証した。またスリランカ大統領昼食会など宮殿行事の合間を縫って国際地域学会、全国植樹祭など皇居外での公務が5回。首都機能移転によってこうした公務のあり方が変わる可能性もあるというわけだ。
 新首都に建てられる新国会議事堂に、陛下専用の「御席(おんせき)」が今までのような形で造られるかどうかも論議になりそう。今は参議院の議長席の上にあるが、これは貴族院時代、絶対的存在だった天皇がここから議員を見下ろした名残だ。
●宮内庁は模様眺め
 3月15日、衆院国会等移転特別委員会で初めて皇居について質問が出た。「皇居の問題については議論があったのか」という質問に、国土庁の五十嵐健之・大都市圏整備局長は「新首都とは国会、行政、司法に関する機能のうち中枢的なものの移転先。皇居については触れていない。むしろ現在地に位置される」と答えた。
 以前、国会等移転調査会で皇居の質問があった時、国土庁はやはり「審議の対象外」と答えたことがある。ややこしい天皇制問題には触れずにことを進めたいという意図がにじむ。
 肝心の宮内庁はどうか。鎌倉節長官は9日の会見で「ドイツでは政府機関がいろいろな都市に分かれている。日本もその時になればやり方があるでしょう。首都機能移転と言っているが決まるまでこれから大変でしょうな」と模様眺めといったところだ。
 4月27日、皇太子ご夫妻は福島県の安達太良山に登った。ゴンドラで標高1300メートルの中腹に行き、眼下に広がる展望を楽しんだ。案内の佐藤栄佐久・同県知事がふいに説明した。「向こうの山々が首都機能移転先候補の阿武隈山地です」。皇太子さまは黙ってうなずいたという。
 目標では新首都スタートは2010年。時の天皇が真新しい国会の開院式に出席することになるだろう。雄大な風景を眺めながら、皇太子さまは何を思っただろうか。
◇東京から60〜300キロ
 遷都論は戦後さまざまな形で提起されてきたが、東京の一極集中対策として1988年ごろから再燃、92年に国会等移転法が成立した。93年発足の国会等移転調査会は昨年12月、移転先は東京から60〜300キロが適当、2000年までに建設開始――とした最終報告書をまとめた。現在、北海道・千歳空港周辺▽宮城・中西部▽福島・阿武隈▽栃木・那須▽静岡・浜名湖周辺▽長野、愛知、静岡の県境▽岐阜・東濃▽滋賀・琵琶湖周辺などが手を挙げている。
 
 
 
 
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