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・サクラマス
 
写真:サクラマスの成魚
十和田湖産 全長393mm 杉山秀樹氏提供
 
写真:サクラマスの親魚
十和田湖産 全長約450mm 2003年9月撮影
 
 本種は、北海道及び本州の日本海側と神奈川県以北、九州の一部に分布し、降海型をサクラマス、河川残留型(陸封型とも呼ばれる)をヤマメと呼んでいる。
 本種について、疋田・谷口8)は次のとおり記載している。「1904年に本鱒として移殖したものは恐らくこの魚種であろう。これ以前に奥入瀬川に遡上したこの種を銚子大滝より魚道を作って湖中に遡上させて繁殖したのであるが、その後この魚種がヒメマスの稚魚を捕食するため、ヒメマス繁殖上有害であるというので、魚道を破壊してしまったので、それから奥入瀬川のマスは湖に遡上しなくなったと思われる。現在湖中で大型の成魚が時々捕獲され、宇樽部川にも遡上することが知られている。これは当時湖に入ったものが残存繁殖しているものである」(一部簡略化した)。
 頼19)は、1904年に放流記録があること、1977年にヤマメが初めて放流され、その後も毎年2〜3万尾が放流されていることを報告している。
 本種の漁獲量の記録は1974年からあり、同年から1979年までは1.5t前後で、その後、1991年の1.3tを除き、1980年以降は0.5t程度となっている。1980年代には8kg程度の大型個体の採捕もあり、最近においても60cm、3kgを超えるものも珍しくない。最近は、本種を対象とした遊漁者も少なくない。
 一方、湖内でサクラマス親魚を採捕し、これからの採卵、ふ化・放流が行われており、最近は毎年1万尾の稚魚が放流されている。サクラマス親魚は、秋季に採卵用ヒメマス親魚と同時に採捕されており、その採捕尾数は最近は2,000尾前後となっている。
 
・イワナ
 
写真:秋田県鹿角市大湯川産
全長152mm 杉山秀樹氏提供
 
 イワナ属の分類については、研究者により意見が分かれ統一した見解が出されていないのが現状である。関東以北及び本州日本海側に分布し、体側に小型の薄い有色斑を有しているものをニッコウイワナ、北海道及び東北地方の一部に分布し、体側に有色斑を持たないものをアメマスとすることもある。しかし、一般にイワナ属魚類は広い水面に出ると降湖型と呼ばれ、大型になるとともに白斑が大きくなるなど斑紋も変化することが知られている。さらに、斑紋の大きさ及びその色調には、地理的勾配が認められるとの意見も出されている。これらのことから、ここではこの両者を含めイワナとして扱うことにする。
 秋田県水産試験場2)は、イワナを1888年に270尾、1891年に61尾放流したとしており、その後の放流記録は記載していない。疋田・谷口8)は、 1855年頃及び1877年頃に放流を行っているとし、頼19)は、1890年に放流されたとしている。また、頼19)はアメマスとして「放流記録がある」、「最近は全然漁獲されていない」と記載している。現在、イワナは湖内に生息はしているが、その個体数は少ない。
 
・ワカサギ
 
写真:十和田湖産
全長88.2mm 杉山秀樹氏提供
 
 国内では、日本海側は島根県、太平洋側は利根川以北の本州と北海道に分布。国外では、アリューシャン列島から北米大陸のカリフォルニアにかけて広く分布する。沿岸域に生息し、産卵期に河川や海に注ぐ湖沼に遡上するのが本来の生活であるが、そのまま湖沼に残留するものもいる。陸封が容易であることから、人の手によって内陸の湖沼やダム湖などに受精卵が運ばれ、そこで定着している例も多い。
 十和田湖に生息しているものについては、1982年10月23日に初確認され、翌1983年3月までに19個体が採捕された。その後漁獲対象となり、1984年には4t、1985年84tと急増し、91年には142tと最大漁獲量を記録した。最近は20〜30t程度が漁獲されている。漁獲は主として4月から8月にかけて認められているが、産卵のために接岸移動する5月及び6月にその過半が漁獲されている。
 現在、十和田湖に生息しているワカサギの起源については不明の点が多く、水族館飼育魚の逃亡、放流魚の混入、釣り餌搬入などいくつかの説もあるが、1925年及び第二次世界大戦前に放流の記録がある。疋田・谷口8)は、霞ヶ浦から終戦前に放流したが失敗に終わっている、と記載している。
 このような中で、天野5)は、1982年に突然ワカサギが出現したように見えるがそれ以前から少数のワカサギが生息しており、1982年に湖水の水温が大きく下降しヒメマス放流稚魚の大部分が減耗したため、これが占めていた生態的地位にワカサギが入り込めたことによると推察しており、興味深い。







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