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第6章 木造船の設計
6-1 基本設計
6-1-1 船本体の基本設計
 
 木造船の基本設計をおこなう際の考え方として、以下の諸点が検討される。
1. 事業の目的から、伊勢船型とその構造様式並びにその建造技術(匠の技)を後世に伝える(記録)することと同時に、木造船を実際に運航し実体験してもらうことも目的としている。
(1)船本体の基本形状(伊勢船型)
 長崎県立図書館蔵の「伊勢船型安宅船図」等を参照
□船型:戸立水押の採用
□船底構造:敷構造
□船体構造:棚板構造(棚(外板)と敷により船体縦強度を担い、横強度は横梁にて棚板を支える)
 
(2)船の大きさ等
 第4章での検討結果により基本的な方針は、以下のとおりとする。
□乗船人員:10〜20名程度
□地域イベント活用と勢田川の環境学習対応
□地域シンボルとして最低限度希望される必要な大きさを有する
□船の長さ:約10.0m
□船の幅:約2.1m
□推進機:船外機及び櫓
2. 以上のものに付け加えて、本木造船は不定期航路事業での活用をはかることを目標としており、乗船客の利便性を高めるために、乗船時に小雨程度の雨風をしのげるように上部に屋形を設置することとする。
3. この際、木造船としてのシンボル性を考慮し、また、全体的な形状のバランス等をふまえ、上部構造物の材質も木製とし、木製の屋形を設置するものとする。
 
図 木造船の基本設計イメージ(再掲)
 
 
□今回、建造をすすめる木造船では、利用者の利便性および航行性能の上から推進機は船外機を設置する。
□これ以外の部分に関しては、伝統的な建造法を用いて木造船を建造することを原則とする。
□また、古来より、主として旅客を搭載する舟は、原則として屋形が設置されている。
□このため、今回、建造をすすめる木造船においても、古来からの伝統をふまえて、また、旅客の利便性を考慮して屋形の設置をおこなう。
□しかし、伊勢船における屋形部分の伝統的な形状(デザイン)は不明であり、設置される屋形のデザインについては、以下の点を考慮し建造をおこなう。
(1)伊勢の商家などでは、家の建築様式として「切妻」かつ「妻入」の様式が伝統的に採用されている。
(2)この「切妻」かつ「妻入」様式での建築は、全国的にも珍しく、伊勢の商家建築を代表する様式である。
(3)また、多くの商家などでは、破風(はふ)に各戸で特徴を持たせ、自宅の飾りとしている。
(4)破風の形状としては、大きく4種類に分類される。
□反り破風:懸垂線形の破風
□下反り破風:逆懸垂線形の破風
□むくり破風:破風の形状が盛り上がっている
□直ぐ破風:直線形の破風
 なお、これ以外に唐風の唐破風なども形状としてあげられる。
(5)以上の形状の中から、シンプルな中にも飾りをつけることにより優美さを表現することができると考えられる、「下反り破風」を採用し、下げ魚飾りをつけることとする。
 
図 屋形の形状イメージ
 
[下反り破風下げ魚]
シンプルな中にも飾りを付け優美さを表現している
 
(参考)
[直ぐ破風]
 
[唐破風]
 
6-2-1 一般配置図、船体線図、中央断面図、主要寸法、船形寸法表等
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