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私はこう考える【ダム建設について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1990/09/08 読売新聞夕刊
期待の「奈良俣」新ダム、91年春完成 貯水量26%アップへ/利根川最上流
 
 建設省渇水対策本部が五日解散し、水枯れの夏が終わった。が、利根川水系の貯水量は八日現在、一億五百万トンと少なく、少雨の雲行きに水不足・東京の不安が払拭(ふっしょく)できない。ところが、今、建設省や水資源開発公団内には「首都圏の渇水騒ぎは、ことしが最後になるかも知れない」という期待がひそかにふくらんでいる。利根川最上流で建設されてきた日本一のロックフィルダム「奈良俣ダム」が来春完成、夏の貯水能力が一挙に七千二百万トン増えるためだ。さらに、平成七年から十年にかけ、鬼怒川や茨城県の那珂川から首都圏へ水をもらう北千葉導水路、霞ヶ浦導水路が相次いででき、関東平野を流れる大河川の水を融通し合うネットワークが整う。“有事”になってタダではないことを思い知る「安全と水」。戦後四十五年、東京から渇水をなくそうとがんばって来た“ダム屋たち”の努力が、ようやく実って来た。
◆壮大な導水路網も工事中 那珂川、霞ヶ浦から引水
 水源の町、群馬県・水上町の水上温泉から北東へ二十キロ。利根川本流で一番奥の集落、湯の小屋地区に入ると、標高千メートル近い山の間に、巨大な白い壁が見えてくる。
 高さ百五十八メートル、幅五百二十メートル。石を積み上げて作るロックフィルダムでは日本一の大きさとなる「奈良俣ダム」だ。昭和四十九年着工。総工費千三百五十億円。来春、待望の運用が始まる。
 「実は、この夏、渇水対策のため、もう働いていたのです」。水資源開発公団の同ダム建設所長、工藤恒夫さん(55)が頼もしそうに話してくれた。
 「ダム本体は六十三年に完成、以来、ダムに水をためたり、放水したりする湛水(たんすい)試験を繰り返していたが、今年の渇水期には、一日四十万トン近くを放水し続けた。その分、他のダムは放水量を減らせたわけで、見えない所で力を発揮していたわけです」
 奈良俣ダムは、有効貯水量八千五百万トン。七月から九月までの夏季、ダムは台風など大雨に備えて、あらかじめ水位を下げておく。このため、夏季の貯水量は減って、同ダムは七千二百万トン。首都圏へ水を送っている利根川上流のダム群の中では、夏季貯水量一億一千五百五十万トンの矢木沢ダム(有効同も同じ)、夏季同八千五百万トン(有効同一億二千万トン)の下久保ダムに次いで三番目。現在の七ダム体制から八ダム体制になる来年、渇水期の夏場は、現在の七ダム二億七千百万トンが、八ダム三億四千三百万トンと一挙に二六%も増える。有効貯水量でいえば、四億六千百万トンと、初の四億トン台だ。今春完成した平場の“ダム”、渡良瀬貯水池(有効貯水量二千六百万トン)と合わせると、わずか二年間で、首都圏の水の“貯金”は、一億トン近くも増えることになる。
 「昭和五十年以降、首都圏全体で二〇%以上の取水制限が行われた深刻な渇水は、昭和五十三年、同六十二年と今夏の三回。いずれも、利根川水系のダムから放出して補った水量は、ほぼ二億トン。来年以降は、冬と春にまずまずの積雪と雨さえあれば、なんとか給水制限に入らずに乗り切れる」と、関東地方建設局の岡野真久・広域水管理官は“期待の根拠”を説明する。
 水資源開発公団でも、来年の渇水期に備え、本来、年度末まで続けるはずだった減水試験を、ピッチを速めて十月末までにすませ、十一月からは貯水を始め、来春には、十分水をためて運用スタートする。
 奈良俣ダムの湖水のたどりつく果ては、まさに尾瀬の名峰、至仏山の山腹。
 「ご覧の通り、利根川の水利用は、とうとう分水嶺(れい)の直下まで来てしまった。奈良俣は、関東地方に造られる一億トン級のダムで、水没世帯を出さなくてすむ最後のダムといわれています。しかし、次に完成予定の八ッ場ダム(同県長野原町、有効貯水量九千万トン)では、三百四十戸が水没せざるを得ない。このところを考え、首都圏の利用者は、水を大切にして使って欲しい」と、昭和四十九年の着工から九年間、現地で工事に当たった公団の中込武史・第一工務部設計課長は訴えた。
 
 こんなダム建設に対し、北千葉と霞ヶ浦の導水路計画は、東京から百キロも離れている那珂川の水を、霞ヶ浦経由で持って来ようというもの。この夏、一部地域で首都圏最悪の三〇%という給水制限が行われた千葉県も、大きな恩恵を受ける。
 那珂川は、三千三百平方キロと、荒川を上回る流域面積を持ち、流量も、平均毎秒四十三・六トンで、多摩川、荒川の合計量よりも多い。ところが、水系には一千万トン以下の県営ダムが四つあるだけで、いわば、関東平野では数少ない“未開発河川”。
 この水を、水戸市北部でポンプアップし、長さ四十二キロの地下トンネルで霞ヶ浦に入れる。さらに、三キロのトンネルで利根川へ落とし、すでに完成している利根川河口堰(ぜき)にためる。そして上流の千葉県我孫子市付近で取水し、北千葉導水路で松戸市付近の江戸川へ持ち込み、東京、千葉、埼玉で使おうというもの。水をより多くためるための霞ヶ浦の護岸一メートルかさ上げ事業や利根川河口堰の開発分と合わせ、首都圏は新たに最大一日三百万トンの水の供給を受けられるようになる。
 霞ヶ浦導水路は平成十年度、北千葉導水路は平成七年度完成予定だが、北千葉導水路ができれば、現在は、千葉県北東部でごく一部しか利用できていない鬼怒川水系の水や、利根川河口堰開発分の水と合わせ一日二百三十五万トンを首都圏で利用できるようになる。
 こうした導水路計画について、東京大学の志村博康教授(農業水利学)も、「上流でのダム造りも必要だが、今後は、こうした水を、河口に近い平野部で再取水、水系ごとに相互融通する導水路も、広く全国に普及させる必要がある。」と、提言する。
〈8ダムの夏季貯水量〉
矢木沢ダム 1億1550万トン
藤 原ダム 1469万トン
相 俣ダム 1060万トン
薗 原ダム 300万トン
下久保ダム 8500万トン
草 木ダム 3050万トン
渡良瀬貯水池 1220万トン
(奈良俣ダム) 7200万トン
3億4349万トン
 
 
 
 
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