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2004.6 NO.2
運輸政策研究機構
研究調査報告書要旨
拠点駅における利便性・快適性向上のための総合的調査研究
 
1. 調査の背景、目的
 大都市における拠点駅においては、少子高齢化の進展、地域の活性化等の社会的変化、個人の価値観の量から質への移行を背景として、鉄道事業者におけるサービスの質の向上、商業施設の開発、行政・自治体、交通事業者、駅ビル事業者が連携した駅の拠点化が進められてきている。しかし、拠点駅を利用する人々からすると、鉄道等の交通機関の利用だけでなく、駅ビル等の副次的な機能を含めたサービスの質には未だ改良の余地があり、拠点駅における施設、設備、並びに案内情報の提供等については、関係する各社相互の一体感、総合性は不足していると考えられる。
 本調査では、このような背景を踏まえ、拠点駅利用者に対する利便性・快適性をより向上させるため、拠点駅に求められる機能及び関係主体の役割等の全体構成を整理すると共に、立川駅、大船駅をケーススタディーとして、利用者及びテナント会社へのアンケート、関係者(自治体、交通事業者、駅商業者)へのヒアリング調査を実施し、分析結果から拠点駅の課題と要因を一般化した。
 さらに本調査では、ケーススタディーに基づく分析結果に内外の先進事例を参考としつつ、拠点駅づくりの視点を整理し、今後の全国の拠点駅づくりの仕組みについて提案を行なうことを目的としている。
1.1 調査のフローチャート
 本調査のフローチャートを図1に示す。
 
図1 調査のフローチャート
 
 拠点駅の関係者は様々な立場から構成されている。大きくは、駅施設及び商業施設等を利用する利用者の立場であり、一方は、拠点駅を整備、改良、運営する行政・自治体、交通事業者、駅ビル等商業関係者などサービスを提供する立場である。こうした様々な立場から拠点駅に求められる要素、機能等の全体構成を図2に示す。
 
図2 拠点駅の全体構成
 
 本調査では、首都圏近郊に位置し、鉄道相互やバス等の乗換ターミナルであり、地域住民や企業の利便性に資する多機能性(高度情報機能、生活・文化交流機能、産業交流機能等)を有し、乗降人員が一定規模以上(「交通バリアフリー法」においてエレベーター等の設置が義務付けられている駅は乗降人員が1日5,000人以上である)であり、かつ最近、駅ビル等を施行したか、大規模改良の計画のある拠点駅として、JR立川駅と大船駅をケーススタディーの対象とした。
3.1 立川駅の分析
 多摩都市モノレールの開業(平成12年)による利便性の向上、平成11年開業の南口側の駅ビルである「グランデュオ」をはじめとする大型商業施設の整備によるアメニティやエンターテインメント性の向上により、消費・購買活動が便利で手軽になった結果、新宿、吉祥寺等の沿線拠点駅から、立川駅へ利用者がシフトしている(平成14年度現在、立川駅の乗車人員は143千人/日、13年度以降、吉祥寺の乗車人員を上回っている)。また、立川駅周辺のデパート等大型商業施設や南北モノレール駅を結ぶペデストリアンデッキの整備は、駅利用者の回遊性を高め、滞留時間も増加した。
 
写真−1  立川駅周辺の施設、事業(平成11年撮影)
出典:立川市資料
 
写真−2 北口駅前広場
 
3.2 駅利用者の効果
 利用者アンケートの結果から、立川駅の北口駅前広場が整備されて便利になった点を見ると、「立川駅周辺の広い範囲に行くようになった」が最も回答が多かった。自由回答としては、「立川駅の北側と南側の両方を回ることが増えた」、「駅ビル以外に周辺の店を利用する機会が増えた」等の意見が挙げられた。
 「立川に来ることが多くなった」も2番目に多く、自由回答としては、〔買物・私用目的で立川駅に来る人〕は、「以前は新宿、吉祥寺に出かけていたが、友人との待ち合わせのためのレストラン、贈答品を含む買物等が立川駅で済むようになった」こと、〔立川駅周辺に通勤している人〕が、「仕事帰りに飲んだり、食事をすることが多くなった」こと等の意見が挙げられた。
 
図3  立川駅の北口駅前広場が整備されて便利になった点(n=425、2つまで回答可)







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