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(3)航海計画表の作成
 コースラインを決定したら航海計画表を作成します。航海計画表には、変針点から変針点までの針路、距離、自船の経済速力(航海速力=全速のおよそ4分の3)による所要時間を求め、出航予定時刻をもとに到着時刻等を計算します。
 
航海計画表の例
 
緯度1度=緯度60分=60海里(マイル)
緯度1分=1海里(マイル)=1852m
1ノット=時速1852m
 
(1)針路
(1)針路
 船首の向いている方向を「針路(コンパスコース)」といい、磁気コンパスを使っている場合は「磁針路(マグネティック・コンパスコース)」といいます。
 
(2)実航針路
 針路を一定にして航走していても、風や潮流の影響を受けると実際に進んでいる針路が異なっています。この、実際に進んでいる針路のことを「実航針路」または「対地針路」といいます。
 実航針路を知るには、適当な時間の間隔で船位を海図に記入し、その移動方向を計る方法が一般的です。
 安全な航海のためには、実航針路を常に把握し、風圧、流圧を加味した針路に修正していくことが必要です。
 
 
(2)速力
(1)対水速力
 船に装備されているスピードメーターや電磁ログなどが表示する速力を「対水速力」といいます。速力の単位は「ノット」すなわち「海里(マイル)/時」を使うのが一般的です。
 
(2)対地速力
 風や潮流の影響を受けると、対水速力と実際の速力が異なってきます。実際の速力のことを「対地速力」または「実航速力」といいます。対地針路同様、適当な時間をおいて船位を海図上に記入し、移動した距離と、それに要した時間から「対地速力」を求めることができます。GPSが表示する速力も「対地速力」ですが、測位間隔が短すぎると誤差が大きくなります。
 
(3)船位の測定
(1)位置の線
 船舶が、ある線の上のどこかにいる場合、その線のことを「位置の線」といいます。位置の線は物標の方位や距離を測ることで求めることができます。
 2つの物標が一直線に重なったとき、その方位線も「位置の線」となります。これを重視線(トランジットライン)といいます。
 
(2)クロスベアリング(交叉方位法)
 沿岸航行を行う場合の基本的な測位方法です。熟練すれば精度の高い船位が求められます。
 海図に記載されている顕著な物標の方位を磁気コンパスで2ヵ所以上測定してその方位線(位置の線)を海図に記入し、各方位線が交差した点を船位とする方法です。
 
【方位測定上の注意】
  1:2つの物標によって船位を求める場合は方位線が90度前後で交わるような物標を選びます。また、3つの物標によって船位を求める場合はそれぞれの方位線が60度前後で交わるような物標を選びます。
  2:物標を選ぶときは、できるだけ近距離で海図に記載されている顕著なものを選びます。浮標は浮動しているので海図に記載されている位置とずれていることがありますから注意が必要です。
  3:方位を測定する場合は方位の変化の遅いもの(船首尾方向のもの)を先に、方位の変化の速いもの(正横方向のもの)を後に測定します。また、顕著な物標があれば、遠いものから先に、近いものを後で測定するようにします。
  4:方位測定は敏速に行い、船位を記入したら必ず測定時刻を書き込んでおきます。
 
(3)航海計器による測定
 GPSによる測定は自船の位置を緯度・経度で表示します。
 
(4)流潮航法
(1)風の影響
 船が一定の方向からの風を受けて航行すると、船首が一定の針路に保たれていても、船は予定針路からはずれて風下に流されながら進みます。この差を「風圧差」といいます。
 風圧差は、風速が強いほど、船の速力が遅いほど、船の喫水が浅いほど、風向と針路のなす角が直角に近いほど、大きくなります。
(2)潮流の影響
 船が海流や潮流のある海面を航行しているときは、船首が一定の針路に保たれていても、船は予定針路からはずれて流れの方向に流されながら進みます。この差を「流圧差」といいます。
 
磁針路:船が保持している針路
対水速力:水に対する速力
流向:海潮流の流れていく方向
流速:海潮流の速さ
流程:海潮流に流された距離
実航針路:実際に船が航行する針路
実航速力:実航針路上で測った速力
推測位置:磁針路、対水速力で計算した推測船位
実測位置:陸岸や物標、天体などによって測定した船位
 
(5)航行中の注意
1. 定期的(15分〜20分に1回程度)に船位の確認を行います。
2. 定期的に機関室を点検します。出航後すぐ、30分後、1時間後、以降1時間ごとを目安に機関室を点検して異音、異臭、水漏れなどがないかを確認するとともに、振動や冷却排水、排気の状態にも注意します。その際、運転中の狭い機関室は危険ですから、無理に入る必要はありません。
3. 定期的に操縦者を交代するようにします。
4. 定期的に計器類の示度のチェックを行います。
 
(6)寄港地での注意
1. 関係各所へ事前に連絡しておきます。
2. 係留場所や給油場所は、地元の関係者(港湾管理者、漁協、給油所のスタッフなど)に確認します。
3. 港内や船溜まり付近では引き波を立てないようにします。
4. 潮汐を確認して係留ロープの長さやフェンダーの位置を調節し、定期的にチェックします。
5. 桟橋のビットなどを共用するときには、先船のロープのアイに下から自船のロープを通して取ります。
6. 停泊中に船を無人にするときは、携帯電話番号を記した紙を船体に貼っておくなど、連絡先がわかるようにしておきましょう。
 
(1)レーダー
 レーダーは、夜間や視界が悪いときの見張りや、船位測定に有効に活用できる航海計器です。
 船用レーダーはレーダーアンテナから電波を水平方向360度に発射し、物標等に当たって反射した電波を受信してその映像を指示器に表示させ、物標までの方位と距離を測定することができます。
 表示方式には真方位指示と相対方位指示がありますが、真方位指示では真北がスコープの上端に、相対方位指示では船首方位がスコープの上端になります。小型船舶では一般にジャイロ・コンパスを搭載していませんから、真方位指示はできません。
 なお、レーダー画面上の他船の動きは、自船に対する相対運動で表示されます。
 
(2)音響測深機
 超音波を発して水深を連続的に測定する航海計器です。海底の障害物、魚群なども探知します。また、底質についてもある程度判断することができます。海図と併用し、船位測定の補助になります。
 音響測深機には、測深のための超音波を発する送信部、反射波を受信して増幅する受信部があります。
 水中で音波は約1500m/sの速さで直進し、物体に当たると反射して返ってきます。音響測深機ではこの性質を利用して、船底から超音波を発信して海底からの反射波を受信、発信から受信までの時間を測定し、その時間から水深を求めます。
 
(1)スイッチ類の操作
1. 感度(GAIN)調整
 画面に表示される海底線など、線の濃淡を調整します。感度を上げすぎると水深を正確に判断できません。
 
2. 測深範囲(RANGE)調整
 そのときの概略の水深を海図などで調べて、海底線が表示されるように調整します。
 
3. 喫水調整
 超音波を発信、受信する送受波器は船底に付けられているため、水面との間に差があります。この差を加えて正確な水深を求めるよう調整します。
(2)記録の判別と注意事項
 音響測深機は航行中に船舶の直下の水深を測定できるため、視界が悪い場合に連続して水深を測定し、海図と照らし合わせれば、船位を推定することができます。
 水深が浅い場合や底質が岩などの場合は、二重反射や三重反射の多重反射が現れることがあります。この場合は、発信点(船底)に一番近い線が正しい水深になります。
 また、船舶が航走するときに発生する引き波や気泡の上からでは、正しい水深を測定できないことがあります。
 
(3)底質による受信線の特徴
岩:受信線は強くはっきりと描かれ、二重反射や三重反射が現れます。
砂:受信線ははっきり描かれますがやや厚くなります。
泥:受信線はぼやけていて厚く描かれます。
岩の上に泥:ぼやけていて厚い線の下に強くはっきりとした受信線が描かれます。







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