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航海計画
I 航海計画(沿岸航法)
 船が安全に、航海するためには、地物・航路標識、測深などによって、船位、針路、速力、海潮流の方向と速さ、コンパスの誤差などを求めて、航海中は、機会あるごとに、現在の船位を求めなければならない。
 
航海計画を立てるとき考慮すべきこと
(1)自船の能力
1. 堪航性能、航行区域、速力、航海計器、装備など
2. 船長(運航者)の技能と経験
3. 定員と同乗者の構成
 
(2)気象・海象
1. 天気図(天気の移り変わり、予想天気図、週間予報、予定航路付近の当日の天気)
2. 注意報、警報の有無
3. 潮汐と潮流
 
(3)予定航路付近の状況
1. 海図(必要な海図を用意する)
2. 危険水域、避難港の調査
3. 通航船舶、漁船の操業区域など
 
(4)目的地(寄港地)の状況
1. 繋留場所(繋留方法、潮汐)
2. 燃料、水などの補給
3. 管理者(港湾、マリーナ、漁組、海保)の有無、連絡先
 
(5)関係法規
1. 予定航行海域に適用される法規(海上交通安全法、港則法)を調べる。
 
 航海計画を作成するためには、予定航行海域の海図や水路書誌を揃えてコースラインを選定します。
 海図上に記入したコースラインから針路、距離を求めて航海計画を作成します。
 
(1)海図と水路書誌
 海図や水路書誌は不可欠です。航海する海域に合った適切な図誌を準備する必要があります。
(1)海図
 海図には、縮尺率や図法によって、いくつかの種類があります。使用目的に合った適切な海図を用意しておかなければなりません。
1. 海図の種類
総図:
地球上の大きな範囲を描いた海図で、外洋航海計画の立案などに用います。
航洋図:
沖合の水深、主要灯台の位置、遠距離から視認できる物標などが記載された海図で、外洋航海で使用されます。
航海図:
陸上の物標を測定して船位が求められるように、灯台、物標などが記載されています。
・海岸図:
陸岸の細部や、水深が詳しく記載された海図で、沿岸航海に使用されます。
・港泊図:
港湾、泊地、水道などの小さな区域が詳しく描かれている海図で、出入港のときに使用します。
分図:
1枚の海図に図中の一部を抜き出し、港泊図として詳しく描いたものです。
 
(2)航路の選定
 安全性と経済性を考慮して出発地から到着地までの航海計画を立て、海図上でコースライン(針路、変針点)を決めます。コースラインの選定にあたっては、次の事項を考慮します。
(1)離岸距離、変針点
 浅瀬や危険な場所に注意し、自船の喫水に応じた水深が確保できる離岸距離を保ってコースラインを設定します。
 変針点は、海図に記載されている顕著な物標(灯台等)を正横に見る場所を選ぶようにします。
 ある変針点から次の変針点までの針路は、海図に記載されているコンパスローズで測定します。コンパスローズを使うときには、真方位と磁針方位の目盛を読み間違えないように注意しましょう。
 
(2)航海距離と時間
 危険のない範囲で最短距離になるコースラインを設定したら、全航程の距離を測定します。
 距離の測定には、緯度目盛とディバイダーを使います。変針点から変針点までの距離を測り、すべてのコースの距離を加算して、全航程の距離を求めます。全航程の距離から、自船の全速のおよそ4分の3を航海速力として航海時間が計算できます。
 出航予定時刻に航海時間を加算すれば、到着時刻が求められます。できるだけ夜間の航海は避け、日没前の早い時間に入港できるようにします。
 
(3)狭い水道や危険水域の通航
 狭い水道等の通航にあたっては、潮流や地形による流れに十分注意して航行しなければなりません。また、狭い水道とともに、船舶交通量の多い海域、漁場となっている海域などの航行は避けましょう。やむを得ず航行するときには見張りをさらに厳重にし、衝突や危険をただちに回避できるようにしておく必要があります。こうした海域を通航するときには速力の変更、人員の配置を考えた航海計画を立てます。
 
(4)避難港の選定
 とくに長距離の航海になると、気象の急変等によって航海の継続が困難になることが考えられます。そのような事態に臨機応変に対応できるように、目的地までの途中に安全に避難できる避難港を選定しておきます。避難港および付近の海図も揃えておきます。
 避難港は風、波、うねりが入らない港(または錨地)で、海面の広さが十分であり、障害物が少なく風下に浅瀬や暗礁がないところが理想的です。







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