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はじめに
 壮大な海に“ふね”を出し、余暇を楽しめたら、この上もない喜びでありましょう。
 近年、生活水準が向上し、労働時間が短縮されて、国民の余暇に対する意識が大きく変化して国民生活の一部になってまいりました。モーターボート、ヨット、水上オートバイなどのプレジャーボートの隻数は、年々増加の一途であり、海はマリンレジャーの場として、一段と活用されることが予想されます。
 しかし海は陸上とは異なり、環境が厳しく、自然そのものであります。今まで静かであった海が突然吹き出した突風のため急に時化の海となり、ふねが遭難することもあります。陸上ではさわやかで、心地よい風も、海では必ずそうではなく、風浪の原因となり、“ふね”にいろんな影響をあたえます。
 安全にプレジャーボートを楽しむためには海をよく知り船を理解し運航に関する基本的な事項を念頭に入れ、プレジャーボートを運航することが大切であります。
 
 船長は一船の最高責任者です。たとえ小型船であっても、船長は船長として、貴重な人命と財産を一手にあずかる重大な責任を負わされているのです。
 小型船の海難事故は、大半が見張り不十分気象海象に対する注意不足機関取扱い不適切等人為的原因によるものであることを考え併せると、小型船の船長の責任の重大さは、ますますその重さを増すものであります。
 小型船の船長の職責は、操船技倆や知識は無論のこと、機関の取り扱いにも優れていなければならないばかりでなく、船上での色々の仕事も立派にこなさなければなりません。
 
 海上は、陸上よりも何倍も危険なものと思わなければなりません。海に出るときは、一定の計画に基づいて行動することが悲惨な海難を防ぐ基本です。
 あてずっぽうや、むちゃな航海は決してしてはなりません。
 慣れた海域であっても必ず、海図で航海計画を立てましょう。航海計画はマリーナや家族に連絡しておくことが大切です。
 
 必ず、気象、海象情報を確認してから出港することが大切です。
 初めからしけているのに、出港することはまずありえないことです。しかし海上では、わずかな間に天候が急に変わることもしばしばです。出港するときは、ないでいたのに、航行の途中で天気が悪くなり、危険な状態に陥ることも珍しいことではありません。風や波に弱い小型船は、出港するときは気象情報を得ることは当たりまえのことですが、航行中もラジオで天気予報を聞くなどして気象情報を得るとともに、雲や風などの変化に常に注意して気象変化に気を付けることが必要です。
 
<観天望気>
 
 一般的に言われている天気についての諺には次のようなものがあります。
●波条雲がでると雨
●うろこ雲がでると翌日・翌々日は雨
●雲が北西から南東にのびると雨
●雲が南西から北東にのびると晴れ
●朝焼けは雨、夕焼けは晴れ
●日がさ、月がさが出ると翌日は雨
●星がしげくまたたくと風が強くなる
●早朝あたたかいときは雨
 
冬の天気 西高東低型の気圧配置が多く、日本附近では上層と下層の温度差が大きく、空気が不安定となり、空気の対流が盛んで、風が強くなり、海難事故が多い。
 
春の天気 春は冬から夏への季節の転換期に当り、大きな陽気の変り目である。3月は春を運ぶ南の海上からの暖かい空気と冬の名残りの大陸からの冷たい空気が入りまじって陽気の変化が大きい。日本付近を通る低気圧も急激に発生しやすく、天気の変化も早い。
 
 出港前の船体・機関の点検は、これから海に出ようとしている船にとっては特に必要です。
 一旦港から出港すると、海上には修理工場は有りません。事前に用意した修理用品で間に合う簡単な機関の故障であれば、ある程度の知識と技術で対応できますが、複雑な機関の故障、あるいは燃料切れは海難事故の原因になります。
 
 詳細な情報によりめんみつな航海計画を立て、出港前の準備を十分に済ませて航海に出たとしても、事故にあわないとはかぎりません。
 それは、海が持っている不安定性によるほか、海上には自船以外の船舶が存在し、且つ、それらの船舶との関わりあいにより生じる事故が考えられるからです。
 
 船舶には、その大きさなどに応じ、その船舶に乗船できる人数が決まっています(定員)。これは、あなたが持っている船舶検査証書に「最大搭載人員」として記載されています。
 この最大搭載人員は、船の大きさ、重心の高さ、船の復原力(船が傾いた時に元に戻ろうとする力)などから、複雑な計算を経て割り出されたもので、これを超える人員を乗せた場合、重心と浮力の微妙な関係をこわすこととなり危険な状態となります。
 
 付近航行船舶の状況、海流・潮流の状況等について細心の注意を払い、一緒に乗っている人の安全も考え航行する必要があるのです。
 船は自動車のようなブレーキを持っていませんし、海には海流・潮流といった自然の力が働いていますから、陸上での経験がそのまま役に立たないことがあります。
 あなたが港を出港してからは、これらのことを念頭において操船する必要があります。
◎救命胴衣はあなたの命を守ります。船体の動揺などで思わず落水してしまうことがあります。面倒だと思わず船に乗ったら救命胴衣を着用しましょう。
 
 船を操船する時には、見張りを励行し安全な速力で航走し船位を確認することは、安全運航の基本です
 特に沿岸を航行する際は、岩影から突然小型船が出港してきたり、水深の浅いところがあったりして、他の船との衝突、自船の乗り揚げを起こすことなどが十分考えられますので、船を操船するときは、厳重な見張りを行い、てきぎ船位を確認して、危険が差し迫る前に回避する必要があります。
 
 船舶を操縦する時には、車と同じように海技免状船舶検査証書船舶検査手帳などの法定書類を持っている必要があります。
 また、船舶の航行の安全のために法律で定められた救命設備などの船舶に搭載すべき備品が備わっているかどうかを確認する必要があります。特に救命浮環救命胴衣懐中電灯などの救命用品、機関用修理用品等は、法定備品でなくとも使用可能かどうかを事前にチェックし、それらについては特に船内の取り出し易いところに置いておくことが必要です。
 
 海上交通ルールには、「海上衝突予防法」、「海上交通安全法」、「港則法」があります。船舶が海上を航行するときの基本的なルールは、「海上衝突予防法」に定められていますが、船舶交通のふくそうする海域や狭い海域においては、「港則法」や「海上交通安全法」にそれらの海域を航行するときの特別な交通ルールが定められているので、航海計画を立てる場合に、「港則法」、「海上交通安全法」の適用のある海域を航行するときにはもう一度そのルールを確認する必要があります。
 
 安全で快適な航海を楽しむためには、他の人のめいわくとなるようなことはやめましょう。
 それは、他の人が不愉快になるばかりでなく、事故を招く恐れがあるからです。
 例えば海水浴場、港内などの船舶交通のふくそうする海域、漁船の操業海域、漁具の設置海域などの近くを高速で航行したり、ジグザグ航走をしたりするなど、他人にめいわくをかける行為や危険な行為はやめましょう。
 
 疲れての帰港(入港)であるが、港やマリーナ付近では通航船舶も多いので、
見張りを厳重に、安全な速力で。
交通ルールを守る。
 
・船の点検、整備も。
・帰港の連絡を忘れずに。







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