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−GPS機器の操作−
事例4 遊漁船が乗揚
 GPSプロッターの表示を縮小画面としたままで活用せず
 
発生:平成11年5月3日01時30分(夜間)、静岡県下田灯台沖
気象等:天候曇、北西風、風力2、東流0.9ノット
船長の海上経験:十分な経験あり
GPSの使用経験:経験あり
 
(1)海難の概要
 船長(一級小型船舶操縦士)は、釣り客6人を乗せ、遊漁を終えて帰途に就き、GPSプロッターに表示された下田港内の赤根島に向かう針路としたが、下田灯台を右舷船首方に見ていれば大丈夫と思い、GPSプロッターを遠距離レンジとしたまま、レーダーも利用せず、船位の確認を十分に行わずに14ノットの速力で進行中、折からの東流に圧流されて下田灯台沖周辺の険礁域に向首し同険礁域の岩礁に乗り揚げた。
(2)海難原因
 船位不確認
(3)船長の供述
・漁場を発進し、神津島の西側4海里ぐらいに向くようにGPSの映像で見てからそれに合わせて自動操舵を設定した。
・神津島で転針してからGPSプロッターで進路目標を下田港内の赤根島に向けた。
・確実に船位を確認したのは神津島の西4海里の地点で、それからはGPSプロッターの陸岸の映像のみで航行した。
・下田灯台はずっと船首の右側に見えていた。近くに行って危ないと思ったら左転してかわせばよいと思っていた。夜間だったので思ったより意外に近くになっていた。レーダーも作動させていたが見なかった。
・GPSプロッターは24海里レンジとしていたので、近づくのはよくわからなかった。レンジを3海里にしておけばよかったと思う。
・レーダーやGPSをもっと活用して船位を確認しておけばよかった。陸岸近くになれば手動操舵で航行しておればもっと早く気付いていたと思う。
同種海難の防止策
 GPSプロッターの利用に当たっては、多くの情報が表示されるようGPSプロッターの地形図を大尺度画面とし、当該海域を拡大表示させて使用すべきである。
 また、夜間、港付近や狭水道の航行に当たってGPSプロッターの利用とともに、航路標識、レーダーなども用いて船位を確認すべきである。
 
−GPS情報の利用−
事例5 漁船がプレジャーボート(モーターボート)と衝突
 GPSを装備しているので霧中でも無難に航行できると思い、見張り不十分
 
発生:平成8年7月14日06時30分、長崎県平島漁港西方沖合
気象等:天候霧、南東風、風力1、視程約20m、海上濃霧警報発表
死傷者の発生状況:プレジャーボートの同乗者1人が死亡、船長が負傷
船長の海上経験:十分な経験あり
GPSの使用経験:経験あり、いつも使用
 
(1)海難の概要
 船長(一級小型船舶操縦士)は、操業中に濃霧となり、自船にレーダー及び汽笛などの音響を発することができる設備を備えていなかったが、濃霧の中を出航してくる他船はいないと思い、霧が晴れるまで漂泊したり錨泊したりすることなく帰途に就くこととした。このため、GPSプロッターの画面上に漁港出航時からの進路を表示させ、表示させた進路をたどり、霧中としては過大な11.4ノットの速力で、手動操舵で進行し、GPSプロッター画面上に表示させた進路のみを頼りに続航中、港内から沖合に向かうプレジャーボートと衝突した。
(2)海難原因
 視界制限状態における運航不適切
(3)船長の供述
・GPSプロッター画面上に表示させた進路のみを頼りに続航した。
・GPSプロッターの画面上に表示させた進路を見ていて前路の見張りを十分に行っていなかった。
・早く帰って網の修理などをしようと思い、約11ノットの速力で進行していた。
同種海難の防止策
 視界制限状態において「正確な船位を示すGPS」のみに頼り、周囲の見張りを疎かにしたまま航行することは危険である。視界制限状態において他船の航行状況を知るためには、視覚、聴覚、あらゆる方法を用いた厳重な見張り行為が必要である。
 なお、当然ながらレーダーを装備する船舶ではレーダーを十分に活用することが大切である。
 
事例6 遊漁船が乗揚
 陸上の明かりと灯台を見ながら見当で航行して干出岩に乗揚
 
発生:平成8年9月1日19時45分、鹿児島県奄美大島北部東岸
気象等:天候晴、風力2の南西風、潮候上げ潮の中央期
 
(1)海難の概要
 FRP製遊漁船のS丸(長さ9.50m)は、船長(一級小型船舶操縦士)が1人で乗り組み、知人など4人が同乗して、魚釣りのため、9月1日早朝に港を発航した。
 18時10分ごろ釣りを終えて帰航することにして、約10ノットの全速力で、自動操舵とし、潮流の影響により船位が8度ばかり左偏する状態で進行した。
 19時12分、船長はGPSプロッターを見て針路を転じた。
 転針後も船位が5度ばかり左偏する状態であったが、陸上の明かりと遠方の灯台を見ながら見当で航行しても大丈夫と思い、GPSプロッターを見るなどの船位の確認を行うことなく続航し、さんご礁外縁に著しく接近する状況となっていることに気付かなかった。
 19時45分少し前、左舷船首至近に白波を認めた同乗者が「さんご礁が近い。」と叫んだので、船長は自動操舵の針路設定つまみを右に回したが、19時45分、さんご礁外縁の干出岩に乗り揚げ、擦過した。
 乗揚の結果、船底に破口を生じ、浸水して沈没した。
 
〜背景〜
・船長は頻繁に奄美大島北部東岸水域を航行していたので、さんご礁、干出岩などの状況はよく知っていた。
・船長は釣り場を発航してから2回針路を調整しており、潮流の影響で船位が左偏する状態については認識していた。
 
(2)海難原因
・GPSプロッターを活用するなどの船位の確認が不十分であった。
(3)船長の供述
・転針してからはGPSプロッターを1回も見ていない。
・陸上の明かりと遠方の灯台を見ながら見当で航行すれば大丈夫と思った。







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