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幕府は知っていた!「和蘭風説書(おらんだふうせつがき)」
 「鎖国(さこく)」政策をとっていた江戸幕府は、西欧諸国の中で唯一貿易を行っていたオランダを通じて、海外の情報を得ていました。オランダ船が長崎に来航するたびにもたらされた海外情報を「和蘭風説書」といいました。年を経るにしたがい、次第に形式化しましたが、アヘン戦争情報の入手をきっかけに、より詳細な情報を提出してもらうようになりました。これを、「別段風説書」といいました。アメリカ艦隊の来航情報は、すでに嘉永3年(1850)の「別段風説書」に記されており、嘉永5年(1852)の「別段風説書」には、ペリーの名や、艦隊の船名、来航する目的や時期までも詳細に記されていました。幕府は有力な大名などに情報を知らせ、警戒を強めました。
 
和蘭風説書 所蔵:東京都江戸東京博物館
 
4 プリマウス
(1)艦種、艦暦
 “プリマウス”は、1844年(天保15)4月にアメリカのボストン海軍工廠で完成した「木造3本マスト、シップ型帆走スループ」です。シップ型というのは、3本のマストすべてに横帆を張った帆走装置で、帆船ではよく使用されたタイプです。
 完成後地中海艦隊に所属しましたが、1848年(嘉永元)から東インド艦隊に配属されペリーの日本遠征に参加しました。1855年(安政2)から練習艦になりましたが、1861年(文久元)4月にノーフォーク海軍工廠に係留中、火災で焼失しました。
(2)主要目
垂線間長147.5フィート(44.96メートル)
型幅 38.08フィート(11.61メートル)
深さ(ホールド)
17.17フィート(5.23メートル)
bmトン 989トン
(注:喫水、満載排水量は不明です)
(3)備砲
 口径8インチ(20.3センチメートル)の鋳鉄製前装滑腔砲4門と32ポンドの鋳鉄製前装滑腔砲が18門、合計で22門の大砲が搭載されていました。
 32ポンド砲というのは重さ32ポンド(14.5キログラム)の鋳鉄の球形弾を発射出来る大砲のことを言います。8インチ砲は炸裂弾も発射できるタイプでした。
(4)乗組員数
 乗組員の数は210人でした。
 
“プリマウス”を描いた絵画
 
5 サラトガ
(1)艦種、艦暦
 “サラトガ”は1843年(天保13)1月にアメリカのポーツマス海軍工廠で完成した「木造3本マスト、シップ型帆走スループ」です。完成後、アフリカ艦隊、メキシコ艦隊、西インド艦隊に所属しましたが、1850年(嘉永3)から東インド艦隊に配属され、ペリーの日本遠征に参加しました。その後再びアフリカ艦隊に所属しましたが、1907年(明治40)に売却されました。
(2)主要目
垂線間長
146.33フィート(44.60メートル)
型幅 35.25フィート(10.74メートル)
深さ(ホールド)
16.25フィート(4.95メートル)
bmトン 882トン
(注:喫水、満載排水量は不明です)
(3)備砲、乗組員数
“プリマウス”と同じです。
(文・元綱数道(もとづなかずみち))
 
1899年撮影の“サラトガ”の写真、船体やボートが奇麗に整備されている
 
“サラトガ”がフルセイルで帆走する姿を捉えた貴重な写真。1904年頃の撮影
 
蒸気フリゲート
艦名 サスケハナ
(Susquehanna)
ミシシッピ
(Missisippi)
竣工年月日 1850年12月24日 1841年12月22日
建造所 フィラデルフィア海軍工廠 フィラデルフィア海軍工廠
艦種 木造外車フリゲート 木造外車フリゲート
主要寸法 長さ(m) 76.20(水線長) 67.06(垂線間)
全幅(m) 13.72 12.19
型幅(m) 13.41 11.89
深さ(ホールド)(m) 8.08 7.16
喫水(m) 5.94 5.79
トン数 満載排水量(トン) 3,824 3,220
bmトン 2,450 1,692
帆装 型式 3本マストバーク型 3本マストバーク型
帆の総面積(m2 1,970 1,765
蒸気機関 型式×数 斜動型×2 サイドレバー型×2
合計出力(IHP) 795 650
〃(NHP) 420 434
ボイラ 型式×数 銅製煙道型×4 銅製煙道型×4
蒸気圧力(kg/cm2) 0.84 0.74
推進装置 型式×数 外車×2 外車×2
直径(m) 9.45 8.53
毎分回転数 12 10
石炭搭載量(トン) 900 700(推定)
航海速力(ノット) 8(推定) 8(推定)
備砲 10インチ・シェルガン(門) 3 2
8インチ・シェルガン(門) 6 8
合計(門) 9 10
乗組員数(人)   300 約260
(シェルガン:炸裂弾が発射可能な大砲)
 
帆走スループ
艦名 プリマウス
(Plymouth)
サラトガ
(Saratoga)
竣工年月 1844年4月 1843年1月
建造所 ボストン海軍工廠 ポーツマス海軍工廠
艦種 木造帆走スループ 木造帆走スループ
主要寸法 長さ(m) 44.96(垂線間) 44.60(垂線間)
全幅(m) - -
型幅(m) 11.61 10.74
深さ(ホールド)(m) 5.23 4.95
喫水(m) - -
トン数 満載喫水量(トン) - -
bmトン 989 882
帆装 型式 3本マストシップ型 3本マストシップ型
帆の総面積(m2 - -
備砲 8インチ・シェルガン(門) 4 4
32ポンド砲(門) 18 18
合計(門) 22 22
乗組員数(人) 210 210
 
ご協力いただいた方々及び機関
    (順不同、敬称略)
(財)水府明徳会 彰考館徳川博物館
神奈川県立歴史博物館
東京大学史料編纂所
束京都江戸東京博物館
海上保安庁 海洋情報部 海の相談室
U.S. NAVAL HISTORICAL CENTER
 
安達裕之
小川一男
片桐一男
嶋村元宏
高島俊雄
福留理夫
 
主要参考文献
ペリー艦隊日本遠征記Vol.I、II、III(栄光教育文化研究所)
ペリー日本遠征日記(金井圓 訳 雄松堂)
ペリー来航関係資料図録(横浜開港資料館)
特別展「ペリー来航150周年記念 黒船」図録(神奈川県立歴史博物館)
国史大辞典(吉川弘文館)
総合海事用語辞典(海文堂)
帆船時代のアメリカ 下(堀 元美著 朝日ソノラマ)
万延元年第一遣米使節日記(日米協会)
日本の戦艦〈上・下〉(泉江三著 グランプリ出版)
日本の船〈I・II〉(石井謙治著 法政大学出版局)
The Expedition of an American Squadron The ChinaSeas and Japan (Commodore M.C.Perry U.S. Navy)
The Old Steam Navy (D.L.Canney, Naval Institute Press)
Warships of The Civilwar Navies (P.H. Silverstone, Naval Institute Press)
The Steam Navy of The United States (F.M.Bennett, Warren & Company)
The Sailing Navy 1775-1854 (P.H.Silverstone, Naval Institute Press)







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