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東京財団研究報告書2004-8 電子自治体における情報活用-地方自治体における介護情報を事例に-

 事業名 相互交流による国際ネットワークの形成及び政策課題研究等
 団体名 東京財団政策研究所 注目度注目度5


第4章 情報流構築の先進事例
 上述したように、自治体の情報流にはさまざまな問題点があるが、自治体も法律の制約や厳しい予算のなかから独自の対処を始めている。この章では、情報流を構築して市民サービスを拡充させようとする試みについて、具体的な事例を紹介する。
 
 高速ネットワークの敷設に伴って、遠隔医療システムの導入も視野に入ってきた。そのなかで、福祉と保健、医療サービスの連携も進められつつある。例えば、釜石市は、新日鉄釜石、釜石製鉄病院、それに釜石ケーブルテレビの三者を結んで双方性を確保し、その特性を遠隔医療に利用する試みを行っている。このシステムは「うららシステム」と呼ばれ、通信メディアを利用した病気の早期発見と予防を主眼に、釜石市市民の自己管理と福祉の増進を目的として構築された。概要は以下に示す20
 
(1)ケーブル回線か電話回線でホストコンピュータと端末を結ぶ
(2)端末で測定した健康データ(問診、血圧、脈拍、心電図、体温、体重)がホストコンピュータに収集される
(3)データは暗号化され、医師からメッセージがあった場合には端末機が受動的に受信して利用者に知らせる
(4)測定結果は端末でも確認できるし、毎日医師や看護士によってチェックされ、異常値が出た場合には担当医師にFAX等でデータを送信し指示を仰ぐ
(5)一ヶ月間の測定値や診断結果は健康管理リポートにまとめられて、毎月利用者のもとに郵送される
 
 市民と医療関係者がタイムラグを得ないで情報を共有することで、健康維持や早期治療に役立てている事例である。さらに、最近では、体重計や血圧それに万歩計などの家庭用計測器のデータをインターネット経由で送信すると、有料で健康診断を行う民間業者のサービスなども展開されている。今後、双方向ネットワークの利用が容易になるにつれて、より多目的で相乗効果を見込まれるような利用もさらに盛んになると思われる。
 
 ここでは、宮城県登米(とよま)町の事例を紹介する21
 登米町では1993年から毎年、円滑に介護事業を行うために、六十五歳以上の全ての町民を対象とした「在宅ケア支援事業基礎調査」を実施している。その調査では、対象者の身長・体重・病歴・血液型・日常動作の状況・身体機能の状況から介護者の有無や介護者の続柄・年齢や健康状況さらには緊急時の連絡先までに及ぶデータが収集されている。そして、そのデータは「保険福祉等情報ネットワークシステム」に登録している。さらに、これらのデータと世帯構成情報や世帯員の年収、そして納税情報が同一ファイルで管理されている。すなわち、六十五歳以上の人は、自らに関わる個人情報のほとんどを町に開示しているのである。登米町では、この基礎調査をコンピュータシステムで登録分析することによって健康状態や普段の生活上の注意点、さらに今後利用を促進したいサービス項目などを記入した「しあわせ通信」を発行して本人に還元しており、分析によって機能が低下したと判断された人に対しては保険福祉関係職員が訪問して相談を受ける仕組みを整えている(図表4-1)。そして、保健福祉サービス事業の評価も非常に高い。システムの整備とその活用による高度なサービスが住民の満足度向上に貢献している。
 
図表4-1 登米町保健福祉等情報ネットワークシステムの概要
注)WS=ワークステーションの略
出典:齋藤吉雄編著『地域社会情報のシステム化』お茶の水書房、1999年のp.119の図3-1-1と3-1-2を修正加筆
 
 委託・受託の関係があり情報に非対象性が存在するところでは、コストをかけてでも委託された業務がきちんと誠実に遂行されたかどうかが問われなくてはならない。従って、介護サービスに関しても、アセスメントの必要性は明らかである。そこで、各自治体は介護サービス評価基準を設置し、介護サービス評価システムの導入を進めつつあり、特に、法律上の義務ではないにも関わらず、第三者評価を受けることが奨励されている。それは、福祉サービスの質を向上させていくとともに、利用者や住民の信頼を得ていくためには、第三者評価は、有効であると認識されているからである。
 なかでも、福岡市は、行政に求められる役割が、サービスの直接提供から多様な事業所から提供されるサービスの質を一定水準以上に保つこと、さらにそれを向上させることと捉えて、(1)介護サービスを必要とする利用者のサービス事業者の選択に資する、(2)サービス事業者が提供するサービスの質の向上に資することを目的に「ふくおか型介護サービス評価システム」を構築している22。そして2002年度10月から介護サービス評価を開始し、2003年度9月16日現在、介護保険事業所の約9%に当たる104事業者から申し立てを受けており、うち、54事業所がサービスの質が一定の水準を満たしているとして認証されている。そして、認証された事業所には、認証状が送られ、認証マークの利用が許可される(有効期間は2年間)。
 
 また、「ふくおか型介護サービス評価システム」における評価機関としては、
(1)第三者評価を行うこと
(2)利用者評価を行うこと
(3)一定基準以上のレベルにあると評価した事業所を認証すること
(4)事業所情報の検証を行うこと
(5)第三者評価、自己評価、利用者評価結果をもとに、事業所と利用者による」サービス提供に関する認識の差異や、他事業所との相対的な比較による分析などを行い、事業所へ分析結果を提供すること
(6)市民・利用者に対し、評価結果や事業所の情報を提供することとしている23
 
 また、介護サービス評価センターふくおかのホームページでは、介護サービス事業所・施設の検索をする際にグラフで表示された評価結果も簡単に参照できる24。更に、事業所の特徴(例えば、男性ヘルパーが在籍している、リピータ率が8割以上など)を記号化したマーク(アイコン)で表示しており、事業所や施設を選択する際の判断を支援してくれる情報が非常に分かりやすい方法で開示されている(図表4-2)。
 
図表4-2 サービスの特徴を示すアイコンの例
出典:介護サービス評価センターふくおか
 
 釜石市の広域医療遠隔システムや登米町の情報ネットワークシステムは、個人情報と自治体の管理する別の情報システム(医療や福祉)が一元管理されることによって、より住民サイドにたったサービスの実施を可能にしている。また、介護サービス評価センターふくおかのホームページでは、ITを利用してより細かな情報を積極的に開示することによって、住民が自分のニーズに合わせたサービス提供事業所を選択することができるようになっている。こうした情報開示と個人情報の一元管理が結びつけば、福岡市のような人口120万人以上の大都市でも、自治体の窓口や相談の電話口で住民の享受できる福祉サービスを検索して提示することが比較的容易になるだろう。
 

20 五十嵐之雄「釜石市における遠隔医療システム 「うらら」」より要約[齊藤吉雄編著(1999)第4章]
21 詳しくは(谷田部:第3章1節、遠藤:第3章2, 3節)[齊藤吉雄編著(1999)]}を参照されたい
22 福岡市介護サービス評価システム検討委員会『平成14年3月 福岡市介護サービス評価システムに関する報告書』
23 福岡市介護サービス評価システム検討委員会『平成14年3月 福岡市介護サービス評価システムに関する報告書』p.11
24 福岡市にヒアリングに出向いた2003年11月までは、まだ区役所でしか評価結果が参照できなかった。140万人近い人口を抱える政令指定都市であるとはいえ、第三者評価システムの構築やその情報開示の迅速さにおいては目を見張るものがある。







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