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東京財団研究報告書2004-7 国際協力NGO活性化の方策

 事業名 相互交流による国際ネットワークの形成及び政策課題研究等
 団体名 東京財団政策研究所 注目度注目度5


第7章 NGOセクターの問題点と可能性
 日本のNGOの抱える課題は大きく二つに分類することができる。ひとつは国際協力NGOそのもののあり方の問題である。個々のNGOのマネジメントや人材の確保・維持に派生する課題などがそうである。またNGO自体の課題以外に、日本の現在の社会システムそのものが国際協力NGOにとって極めて成長し難い側面を持っている。すなわち日本の社会、文化、政治システムの特異性のために、国際協力NGOに限らず、シビル・ソサエティそのものが脆弱性に伴う問題である。またそうした社会状況の中でもNGOにとって追い風となりうる現象も起こり始めている。
 
7-1. 個々のNGOの問題点
 個々のNGOが持つ課題として、マネジメント能力の不足、対外的なアピール力の欠如、財源難、人材の不足などの課題がある。
 多くのNGOはその組織、財政基盤の弱さから、有能な人材を長期に確保することが困難であり、またそのことによって事業の質の向上を図ることが難しいという悪循環に陥っている。NGOに関心を持つ有能な青年は増加しているものの財政的な基盤のない組織において、せっかく集まった優秀な人材を持続的、そして長期に雇用することは極めて難しい。スタッフを雇用しているNGOにおいても、低賃金が理由となって辞める職員がいるという問題を抱えている。
 また国内外の大学や大学院で国際協力を専攻した卒業生も、NGOの即戦力としての能力に欠けることも多い。NGOの多くは社会経験を積んだバランスのとれた人材として企業等の経験者を求めているが、教育機関においてもNGOの実態の活動に沿った人材の育成が行われる必要がある。
 一方、欧米に本拠地を持ち、日本に進出した大手のNGOはスタッフの給与水準も高いといわれる。そのようなNGOの組織基盤が充実しているのは、日本への進出に当たり、企業等での経験のある有能な人材をNGOの幹部に雇用することと併せて、新たな組織が財政的に自立できるまでの期間、資金面での支援を親組織が行うことが大きいと考えられる。すなわちNGOが独り立ちするまでの期間、外部から資金を注入することでNGOの足腰を強めることができ、その結果、組織としてのしっかりした基盤を形成することにより自立が行われている。
 一方、日本で生まれたNGOのほとんどは組織の開始の時期にそのような資金を得ることができず、ボランティア的な状態で組織化が行われ、その結果、十分な資金がないまま自転車操業で事業を続けることになる。人の面では十分な給与を支給できずボランティア的なNGOの数が多い。また、比較的成功しているNGOでも、資金の確保の困難性に直面し、スタッフの長期確保に課題を抱えている。日本のNGOの組織強化、専門性の向上を望むならば、資金面で、事業に対する経費だけではなく、欧米の財団が行うようなNGOの組織強化のための財源の支出を行い、リーダーの能力の向上や組織の発展を考慮に入れた支援が必要である。
 一方、NGOとしての市民から募金を行う戦略も不十分である。確かに災害の犠牲者や内戦等の避難民に対して寄付を行う個人は多い。しかし、これらの寄付者を含め、寄付を行う個人に対して、長期的に個人の関心を引きつけ、積極的な支持者になってもらう取り組みが十分に出来ていないように窺える。NGOにはより洗練された募金の方法の構築が求められている。
 
7-2. 国際協力NGOを巡る社会環境の課題
ア. 日本のシビル・ソサエティセクター全体の脆弱さ
 日本の国際協力NGOの脆弱さの要因として、政府セクターと企業セクターとともに、社会の三つ目の柱として市民セクターを確立することの意義についての社会的な認識が大いに欠如していることが上げられる。日本の社会の中で、政府、企業セクターに次ぐ第三のセクターとしてシビル・ソサエティセクター(市民セクター)を発展させることについての理解が不十分であり、そのことが国際協力を行うNGOの脆弱性にもつながっている。
 市民活動には福祉、まち作りなどさまざまな活動があり、そのような活動に関わる市民が増加する傾向にある。社会の中でボランティア活動を行う基盤は次第に形成されつつあり、シビル・ソサエティの底辺は拡大していると言えよう。
 しかしその一方で、通常の職業として賃金を支払えるほどの財政基盤を持つNPOは極めて少数である。一方、政府の外郭団体では政府に準じた安定した職場
となっているが、類似した非営利で公益性の高い仕事をしていてもNPOの場合には就職の場としては極めて不安定で脆弱であるのが実態である。
 日本のNPOのなかで、政府から資金が環流するしくみができたために、近年、組織化、プロ化が進みつつあるNPOの活動分野として福祉分野がある。これは介護保険制度によってNPOにお金の流れる仕組みができたためである。国際協力NGOの分野も、政府からの資金が入るしくみがあることによって、日本の市民セクターの中では比較的、財政面で優遇されている。そのような資金を活用して現実に数十人の常勤職員のいる国際協力団体もあるが、その一方で、常勤NGOスタッフの平均年収が250万円という数字があるように、NGOにフルタイムの職業として従事するには極めて難しい。
 各地に自治体の手によってNPOセンターが生まれているが、ボランテイアやNPO活動の助長に力を入れているものの、職員を継続的に雇用できるNPO組織が続々と生まれるという状況には至っていない。政府や企業に次ぐ第三のセクターとして、市民セクターが確立されていくには、国際協力に限らずNPO全体が給与面でも魅力ある就職の場となり得ることが必要である。
 現在、NPO活性化のための政府の働きかけのほとんどは、ボランティア活動の促進に重点が置かれ、政府の関心の中心は行政サービスの効率的な代替役としてNPOが認識されているに留まっている。また、営利に近い分野での活動においてコミュニティビジネスと呼ばれる活動が活発化し、有給職員を持つ組織が促進される可能性はあるが、これら二つの活動領域は本来幅広い領域を持つ非営利分野の一部にすぎないといえよう。日本にNPO/NGOセクターが社会の第三の柱として必要であり、この新しいセクターを成長させるという発想がないと今のNPO/NGO支援制度ではこのセクターのプロ化は進展せず、他の先進国のようなNPO/NGOセクターの成長は見込めないと考えられる。
 
イ. 国際協力NGOに対する市民の見方
 国際協力NGOに対して一般市民はどのように受け止めているのであろうか。2001年に国際協力推進協会が実施した国際協力NGOについての意識調査によれば、NGOについてほとんど知らないと回答した割合が64.7%を占め、多少知っていると回答した割合は33.2%となっている。
 よく知っていると答えた割合は2.1%にすぎない。NGOについて知っていると答えた人のうち、その情報入手の経路を尋ねるとマスコミが圧倒的に多く95.0%、NGOによる広報活動が8.0%と続く。少数派のNGOについて知っていると答えた人のなかでも、NGOから直接、情報を入手した人の割合は極めて少なく、マスコミからの情報が極めて大きな割合を占めている。
 昨今のNGOについてのマスメディアの報道のしかたを見ると、途上国に対する支援活動や緊急援助の活動という肯定的なイメージに加えて、北朝鮮の支援を巡るあやしげな組織であるとのニュアンスを持ってNGOが登場するようになってきている。
 またNGOということば自体が「非政府団体」という否定が頭につくことばであり、政府でないことを意味してはいるものの、組織としての活動内容が明示されることばではない。従って、NGOということばから積極的なイメージが想像されにくい面がある。またNGOの組織や活動についても多様性があり、またそれぞれの組織がNGOと名乗ることもできることから、一般市民にとってNGOが信頼に足る組織かどうかが不明瞭であると言わざるを得ない。NGOという言葉が示す曖昧さのために、個々のNGOの信頼性自体も影響を受けているといえよう。
 
ウ. 政府財源の限界
 政府および政府関連機関によってさまざまな財政支援が展開されている。政府はODA改革の一環として国民参加を推進することを掲げており、その意味でNGOに対する資金助成を行う枠組みを広げている。
 しかし、そのほとんどすべてがNGOの途上国における活動にのみ着目し、NGOの国内活動など多元的な活動を支援するものではない。外務省が実施する「日本NGO支援無償制度」の資金を受け取るNGOや緊急支援等を行う一部のNGOは、プロフェッショナル化が進められ組織は比較的多くの資金が得られるが、大半の中小のNGOについては、組織強化そのものに結びつく資金はほとんどないといった状態である。
 
7-3. 追い風の要素
 NGOを取り巻く現在の社会環境はきびしいといえるが、その一方で、国際協力NGOの活性化に寄与する要因として以下がある。
 
ア. 学校教育への浸透
 小学校から高校のレベルにおいて、総合学習の時間の導入とともに、国際理解がその柱の一つとして位置づけられてきている。総合学習の中で、国際理解は単に世界地理を学ぶだけではなく、より実践的な体験が重視されており、NGOの関係者が教室で自らの体験や途上国における状況を話す機会が増加している。NGOの活動について数多くの青少年が理解を深めることは、将来のNGOの理解者、支援者を増やす意味で大きな意義がある。またNGOが教育現場に入り込むことは、NGOについての社会的な認職を高める上で大きな意義がある。
 
イ. 地域レベルにおける国際協力活動の広がり
 従来の地域レベルの国際交流の関心は欧米中心であったが、1980年代になってアジアに対する関心が高まっている。アジアからの留学生の増大がアジアとの交流や協力関係の元になった事例も多く、またアジアヘの日本人の渡航者数の増大もアジアとの国際交流・協力に大いに寄与している。
 個人や数人のグループでアジアヘの支援活動を行う例も数多くなり、また青年海外協力隊のOBが国際協力を継続して行う例もある。草の根レベルで始まっているこのような国際協力活動の萌芽は、組織化されたNGOへと発展する可能性を秘めたものであり、「NGOの卵」が各地で生まれている。
 
ウ. 青年層の国際協力への関心の増大
 欧米志向が強かったといわれる日本人の中に、アジアや途上国に対する関心を示す人々が増加している。とりわけ青年層の中には、途上国において開発の支援に携わりたいと考える人々が増加している。国内においても、国際協力に関する大学や大学院が続々と設置されており、そうした制度的な体制の強化と相まって、国際協力についての単なる関心だけでなく、専門的な知識を持つ青年層が増加している。
 
エ. 企業退職者の再就職の場
 NGO活動の参加者は青年層ばかりでなく、企業の退職者や生活が安定している中高年の女性の間でも広まりつつある。商社など海外で暮らした経験を持つ人々、そして技術者としての能力を持った退職者の間で、NGOの海外現場でまたは国内で自分を活用する場を求めるケースが徐々に増えている。とりわけ、企業等の退職者たちの間で、これまでの専門知識を活かすことで、国際協力の活動に従事しながら、民間企業で受け取れるような額でなくとも、一定の収入(月10万円程度)を得たいと考える人々も増えている。こうした人口が増加していることは、NGO活動の裾野を広げることにつながると考えられる。







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