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東京財団研究報告書2004-1 教員免許状取得希望大学生に対して障害児教育に関する知識、技能をいかにして身につけさせるか

 事業名 相互交流による国際ネットワークの形成及び政策課題研究等
 団体名 東京財団政策研究所 注目度注目度5


 東京財団研究推進部は、社会、経済、政治、国際関係等の分野における国や社会の根本に係る諸課題について問題の本質に迫り、その解決のための方策を提示するために研究プロジェクトを実施しています。
 
 「東京財団研究報告書」は、そうした研究活動の成果をとりまとめ周知・広報(ディセミネート)することにより、広く国民や政策担当者に問いかけ、政策論議を喚起して、日本の政策研究の深化・発展に寄与するために発表するものです。
 
 本報告書は、「教員免許状取得希望大学生に対して障害児教育に関する知識、技能をいかにして身につけさせるか」プロジェクト(2003年7月〜2003年12月)の研究成果をまとめたものです。ただし、報告書の内容や意見は、すべて執筆者個人に属し、東京財団の公式見解を示すものではありません。報告書に対するご意見・ご質問は、執筆者までお寄せください。
 
2004年6月
東京財団 研究推進部
 
第1章
本研究の問題及び目的
1. 特殊教育から特別支援教育へ
 日本の障害児教育は学校教育法上は「特殊教育」(第6章)と呼ばれている。現行では、特殊教育とは、(1)盲・聾・養護学校、(2)特殊学級、(3)通級指導教室、における教育のことを指す。この3者で教育を受けている児童生徒の比率は約1.5%である。しかし、この比率は先進諸外国に比べて極めて低率である1。この原因は、日本においては、通常の学級に在籍している児童生徒を特殊教育の対象としていなかったことによる。しかし、近年、通常の学級に在籍する比較的軽度の障害を有する児童生徒にも特別な教育を与える必要があるのではないかという考えが浸透してきた。
 こうした流れの中で、文部科学省の調査研究協力者会議は、平成13年1月に「21世紀の特殊教育の在り方 〜一人一人のニーズに応じた特別な支援の在り方について〜(最終報告)」2を出した。そこでの重要な点は、副題にあるように一人一人のニーズを把握し、それに対応した特別な支援を講じるという点であり、障害児教育を場に規定された教育から、一人一人の特別な教育的ニーズに対応した教育へと転換しようという点にあった。こうした趨勢を踏まえて、平成13年1月の省庁再編に伴い、従来の「文部省特殊教育課」の名称が「文部科学省特別支援教育課」と変更され、同課が通常の学級に在籍する比較的軽度の障害がある児童生徒の施策も講じることになった。
 さらに、文部科学省は、平成15年3月に「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」3を出し、「特殊教育」から「特別支援教育」への転換の必要性を強調した。また、同報告では、全国の実態調査に基づき、LD(学習障害)またはADHD(注意欠陥多動性障害)に該当すると思われる児童生徒が小・中学校の通常の学級に6〜7%存在すると指摘している。このように、今後、小・中学校の通常の学級において、学習障害児を含めた比較的軽度の障害がある子どもへの対応が迫られることが予想されている。
 現在、学校教育法の第6章「特殊教育」の改正が検討されており、早ければ平成18年度に「特殊教育」から「特別支援教育」へ名称が変更される可能性がある。従来の「特殊教育」の対象は約1.5%であったのに対し、「特別支援教育」では、約8%の児童生徒がその対象となることになる。
 
2. 就学基準の改正
 また、近年のノーマライゼーションの理念の浸透を踏まえて、平成14年4月の「学校教育法施行令の一部改正について(通知)」(文科初第148号)において、学校教育法施行令が改正され、40年ぶりに盲・聾・養護学校への就学基準(第22条の3)が見直されることになった。そこでは、基準自体の内容を改めると共に、基準に該当しても小・中学校において適切な教育を受けることができる特別な事情があると認める者4については、小・中学校に就学することとし、就学の手続きも改正した5。この新しい就学基準及び手続きは平成15年度の入学者から適用されており、従来、盲・聾・養護学校に就学していた児童生徒が、今後、小・中学校の通常の学級に在籍するようになるとみられている。このような流れの中で、一部の地方自治体では、すべての障害児に小・中学校の通常の学級への在籍を認めようとするような動きもある。
 
3. 小・中・高等学校における交流教育の推進
 障害児と健常児が学校教育の様々な場面で学習や活動を共にすることは一般に交流教育と呼ばれている。障害児が早くから健常児と接することは、自分の障害に対する理解を深め、社会性を涵養するためにも重要である。健常児にとっても、障害児を理解し、障害児に対する差別や偏見をなくし、仲間意識を育み、自分の生活姿勢や態度を見直すよい機会となる。さらに、教職員の障害児に対する見方や考え方を変えさせる上でも効果がある。現行の学習指導要領以前は、交流教育に関して、盲・聾・養護学校の学習指導要領では取り上げられてきたが、小・中・高等学校の学習指導要領では全く触れられることがなかった。
 しかし、平成10年の教育課程審議会の答申において、「障害のある幼児児童生徒と障害のない幼児児童生徒や地域社会の人々とが共に活動し互いに触れ合う機会を設けることは、すべての幼児児童生徒にとって豊かな人間性や社会性をはぐくむ上で大きな意義があるとともに、地域社会の人々が障害のある幼児児童生徒とその教育に対する正しい理解と認識を深める上で極めて重要であり、このような観点から交流教育の一層の充実を図る必要がある」との認識が示され、幼稚園、小学校、中学校及び高等学校の学習指導要領等にも交流教育を明確に位置づけることが提言された。これを受けて、小学校の現行の学習指導要領では、「開かれた学校づくりを進めるため、地域や学校の実態等に応じ、家庭や地域の人々の協力を得るなど家庭や地域社会との連携を深めること。また、小学校間や幼稚園、中学校、盲学校、聾学校及び養護学校などとの間の連携や交流を図るとともに、障害のある幼児児童生徒や高齢者などとの交流の機会を設けること。」6と明記されている。今後は、従来の交流教育が、盲学校、聾学校及び養護学校からの一方通行に終わりがちであった傾向が緩和され、小・中学校が主体的に交流教育に関与するようになることが期待されている。事実、新学習指導要領で新たに導入された「総合的に学習の時間」で交流教育を実施する学校も増えてきており7、障害児が小・中・高等学校の児童生徒とふれあう機会が増えることが予想されている。
 
4. 大学における障害児教育関連科目
 第1、2、3節で指摘したような状況下においては、今後はすべての教員が、様々な障害に関する指導理論、指導技法を習得することが必要になるといえよう。
 この点については、平成9年6月18日に「小学校及び中学校の教諭の普通免許状授与に係る教育職員免許法の特例等に関する法律」が公布され、平成10年4月1日から施行され、これに伴い、平成10年度の入学生から、教員免許状の取得要件として、特殊教育諸学校及び社会福祉施設での介護等の体験が義務づけられることになった8
 また、平成9年7月28日に教育職員養成審議会が出した「新たな時代に向けた教員養成の改善方策について(第1次答申)」において、「II 教員養成カリキュラムの改善」の「2 教職課程の教育内容の改善」の「(3)具体的改善方策」の中の一つとして「特殊教育に係る内容の必修化」が挙げられた9。そこでは、「障害のある子どもたちの心身の発達及び学習の過程に係る内容を、現行の「幼児、児童又は生徒の心身の発達及び学習の過程に関する科目」の中に含めるべきであることを制度上明記し、すべての学校段階に属する教員の特殊教育に関する理解を深めることとする」と言及している。この答申を受けて、平成10年6月25日に、「教育職員免許法施行規則の一部を改正する省令」(文部省令第28号)が公布され、同7月1日に施行された。同令により、教職共通科目である「幼児、児童又は生徒の心身の発達及び学習の過程」が、「幼児、児童及び生徒の心身の発達及び学習の過程(障害のある幼児、児童及び生徒の心身の発達及び学習の過程を含む)」と改正され、( )付きで「障害」に関する事項が付加され、障害に関わる単位の取得が明記されることになった10
 しかしながら、介護等体験では、各大学が事前・事後指導を行うなどの対応を行っているが、時間数が限られているなど、障害児教育に関する知識・技能を質的・量的に十分に提供しているとはいえない状況にある。また、教職科目における障害児教育に関する科目の設定についても、各大学が障害児教育に関する科目を必修として、内容を整備し、体系的に設定しているとはいえない状況にある。
 
5. 目的
 以上の点を踏まえて、本研究では、大学が教員免許状取得希望学生に対して障害児教育関連科目をどのようなかたちで設定しているのかを把握し、その結果に基づいて、今後、障害児教育関連科目を、大学のカリキュラム上にいかなるかたちで位置づけるべきかについての基本的知見を得て、今後の方向性を提示することを目的とするものである。
 上記の目的を達するために、まず第一に大学を対象とした調査が必要不可欠であるが、本研究では、そのための基礎的情報として、教員免許状希望大学生が入学時において障害児者の問題について、どのような知識や意識を持っているのか、障害児教育関連科目を受講した学生が受講後、どのような考えを持つようになったか、教員が大学における障害児教育関連科目の設定についてどのような考えを持っているのか、についても把握することが必要であると考え、彼らに対しても調査を実施した。
 

1 OECD(1999)Inclusive Education at Work. のデータによると、アメリカは12.0%、イギリスは2.90%、ドイツは5.00%である。
 
2 21世紀の特殊教育の在り方に関する調査研究協力者会議(2001)「21世紀の特殊教育の在り方について〜一人ひとりのニーズに応じた特別な支援の在り方について〜(最終 報告)」
 
3 特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議(2003)「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」
 
4 該当者は「認定就学者」と呼ばれている。
 
5 改正の内容については、新旧の規定を対照させて示している以下の文献が参考になる。文部科学省特別支援教育科「学校教育法施行令の改正について」特別支援教育第7号36ページ
 
6 小学校学習指導要領第1章第5の2(11)。中学校学習指導要領では第1章第6の2(12)で同様な記述がある。
 
7 たとえば、北見健(2001)「茨城県小学校における総合的な学習の時間の実施に関する研究」平成12年度上越教育大学修士論文、などの研究がある。
 
8 介護等体験については、全国特殊学校長会編(2003)「新版盲・聾・養護学校における介護等体験ガイドブック」ジアース教育社、が参考となる。
 
9 教育職員養成審議会(1997)「新たな時代に向けた教員養成の改善方策について(第1次答申)」28ページ
 
10 その他、発達段階全体を見通した子どもたちに対する教員の適切な理解を促進するという意図を示すため「幼児、児童又は生徒の・・・」が「幼児、児童及び生徒の・・・」と改められている。







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