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政策提言書「日台関係強化の為の6つの提言-良き隣人を再確認しよう-」

 事業名 相互交流による国際ネットワークの形成及び政策課題研究等
 団体名 東京財団政策研究所 注目度注目度5


第4章 日台関係強化の具体策
1. 段階的強化策の必要性
 日台関係は、正式の国交はないものの経済交流は密接であり、人的交流も密接である。また、マスコミが北京と台北の両方に同時に事務所を持つことも当たり前になった。新聞、テレビ、通信の各社が常設の支局を置くことで、従来は珍奇な旅情報やグルメ情報に限られていた台湾事情について、一般日本人の理解が次第に深まっている。
 しかしながら、日台関係の歴史と日華断交の経緯、日中関係と日台関係との関連、日本にとっての台湾の重要性と日台関係強化の必要性についての理解は十分とはいえない。課題は多岐にわたるので、とるべき具体的対処策も重層的なものでなければならない。そこで、本章では、各分野にわたる日台関係強化の具体策を提言する。
 
《国民一般の啓蒙が第一》
 日台両国の関係強化のためには、第一に、政治家や外交関係者が具体的な強化策を進め易くする前提として、日本と台湾を取り巻く情勢に対する国民一般の理解を一層深める方策が必要である。そして、一般の国民の間での台湾に対する注目度を高める上で、スポーツや文化の相互交流の密度と頻度を引き上げる諸施策をとることが望ましい。隣国とのスポーツ、文化の交流が深まることは他の国際関係において、なんらの摩擦も抵抗も生み出すものではないし、自然に相手に対する認識や関心が深まるきっかけとなる。
 第二に、日台関係の重要性の理解促進は、日本においてのみならず台湾においても必要なので、台湾における対日理解、関心を深める方策がとられなければならない。台湾にとって日台関係が重要であることは間違いないが、同時に中台関係も経済交流、人的交流が頻繁である。また、安全保障からすれば、台湾にとっては米国こそが最重要な国だということもできる。台湾の対外関係のなかで、対中関係や対米関係重視の声があがることはごく自然である。その上で、台湾側に、「対日関係もまた大変重要であり、その関係を尊重し、促進しようという」という世論の盛り上がりがなければ、日本において日台関係の重要性が理解されても、日台関係の緊密化を実現することは難しい。
 前述のスポーツ・文化の交流のほか、さらに積極的な方策として、台湾の若者の日本への留学や、台湾の社会一般における日本についての正確で高度な情報の普及、浸透を図ることが必要である。そのため、より具体的には、学術交流や相互の留学支援のあり方、マスコミ報道の現状などが検討されなければならない。
 第三に、相互に恩恵をもたらす経済交流の促進が必要である。基本的に、日台経済関係では、日本の輸出超過が常態化している。これについて台湾側はかならずしも偏狭なナショナリズムによる対応をとってはいないが、長期的に経済関係が良好であるためには、貿易関係、投資、技術移転、人材育成などの総合的な観点から、互恵平等で障壁のない関係を築かなければならない。
 第四に、グローバル化が進む今日の世界では、環境・衛生などの分野において、一国では解決できない問題が増大している。これら分野における、日台相互の協力体制強化が必要である。
 
《安全保障にらんだ日台政治・外交のレベルアップを》
 第五に、以上の四点の施策が実行されるという前提で、両国間の政治・外交関係のレベルアップを順次実現していくことである。北朝鮮問題やいわゆる「中国の脅威論」の存在、台湾海峡両岸の不安定で非友好的な関係から、東アジアの安全保障情勢は、安定した状態とはいえない。そうしたなかで、自由と民主主義という価値を共有し、加工貿易立国として海洋や航空運輸の自由で安全な航行の確保が死活的に重要である日台両国においては、とりわけ相互協力関係の強化が必要になる。まず、海賊対策や海難救助における協調と情報共有、共同訓練から、進んでは、政治・外交と安全保障における協力関係の段階的レベルアップを図るべきである。
 以上のような視点に立って、以下、具体策について検討する。
 
2. 文化・教育・学術分野の交流
(1)両国芸術家の美術作品展の相互・定期開催
 芸術分野の交流として、日本の美術館と台湾の美術館の間に相互交流協定・姉妹美術館協定を結ぶことで、両国間における美術作品展示の交流促進を図る。特に台北郊外の故宮博物院には、蒋介石国民政府軍が1949年に台湾に移転する際に、北京の故宮に収蔵されていた美術作品の精髄が移送されているので、これらを機会あるごとに日本の美術館で展示公開できれば、日本の美術界にとっても一般国民にとっても大変有益であろう。また、日本で毎年定期開催されている美術展には全国で巡回展示されるものもあるので、その巡回範囲を台湾に拡大して、定期的に展示する場を設ければ、台湾における日本の文化理解促進に役立ち、台湾美術界にとっても有益なはずである。将来、日台両国の芸術家の作品を集めて両国で交互に展示するような定期展覧会が実現することが望ましい。
 
(2)「アジアこども美術館」の設置
 「アジアこども美術館」ないしは「日台こども美術館」の設置は、両国の文化的交流関係の促進ばかりでなく、両国における美術教育の普及の手段ともなる。愛知県岡崎市には「岡崎子ども美術・博物館」が、島根県浜田市には「世界こども美術館」があり、特に後者では環日本海の文化交流を促進する先進的な試みがなされている。いずれも子供の創作活動の支援と展示および鑑賞が主であって、交流に主眼が置かれているわけではない。そこで、「アジアこども美術館」の設置で、展示・鑑賞はもちろんのこと、美術を通じた交流の拠点とすることを提案したい。ここでは、日本と台湾、その他アジア諸国の幼稚園、小学校、中学校の児童、生徒から募集した共通テーマ作品の中から、優秀な作品を展示することで、意義深い美術交流の場が実現できる。
 この美術館の設置は、入選した台湾、ひいてはアジアのこども本人のみならず、その関係者の相互訪問のよい機会にもなり、その際には美術館見学のみならずより広範な児童・生徒同士の交流を行う契機とすることが容易である。さらには、各県・各市町村の美術館や展示施設を利用した巡回展示を行うことにより、両国の美術交流のための相互訪問や交流イベントを各地でも組むことができる。日本における美術教育の普及、進展を促進する事業としても期待できる。
 こうした「こども美術館」による国際交流は、本来、日台関係に限定して考える必要はないが、日台関係から始めることには利点が多い。なぜなら、対象国が多いまま交流を始めれば、諸経費がかさみ、交流そのものの手間が大きくなって、交流継続によるレベルアップを実現することが困難になる。したがって、当初は対象地域を限定すべきである。
 一般的に、国際交流には移動の経費や移動に伴う時差による身体的負担、コミュニケーションのための言語理解の問題が伴う。この点、日台間には、移動距離が短く、時差が少なく、相互に言語コミュニケーションを比較的とりやすい環境がある。さらに、相手国との経済格差が大きい場合、相互交流といっても日本側の経済的負担が大きくなる。しかし、台湾はすでに先進国の仲間入りを果たす経済レベルに達しているため、交流が日本側の一方的経済支援の形に陥る心配がなく、相互訪問も対等な経済負担で継続することが容易である。児童・生徒やその父兄も自費で相互に訪問することがそれほど困難ではない。
 また、学校教育制度の普及とその内容にも双方で大きな違いがないので、美術交流の定着と発展を図る環境は整っていると思われる。以上の条件からすれば、台湾は、「こども美術館」方式による国際文化交流の相手国として第一の候補といえよう。
 
(3)日台映画・音楽・演劇フェスティバルの定期開催
 同様に、各種美術、音楽、演劇の定期的な国際交流イベントや合同の展覧会、フェスティバル開催についても、台湾を相手とすることが、日本にとって現実的であり、障害が少なく、有益である。たとえば、すでに作品の高い水準が世界的に評価されている日本映画の台湾での上映の機会を積極的に拡大することや、台湾映画を日本において積極的に紹介することも考えられる。
 一部には不定期で台湾映画の上映会が実施されているが、相互に両国映画の上映が一般に定着したといえない現状では、商業ベースはもちろん、文化交流としても上映される機会が豊富とはいえない。相互の上映機会としてフェスティバルを考えれば、日本映画の市場拡大の可能性もあり、また優れた台湾映画に日本人が触れる機会が拡大されることで、日本の映画文化向上のチャンスにもなると期待される。こうした目的の常設映画館が設置されれば申し分ない。
 また、各種ジャンルの音楽その他の交流を図るフェスティバル開催も考えられる。商業ベースに乗る音楽交流は敢えて考えるまでもないが、日台クラシックフェスティバルや民族舞踊、民族音楽のフェスティバルの定期開催、あるいは日台学生演劇フェスティバルなどの実施も実現可能性が高く、継続性と発展性を期待できるイベントである。繰り返しになるが、交流にともなう経済的、身体的負担や言語コミュニケーション環境、互恵性から考えて、これらのイベントは他の国とのあいだに実施する以上に、日本と台湾の間で実現することが比較的に容易でかつ有益な状況にあるといえる。
 日本文化を国際社会に紹介する趣旨では、歌舞伎・能の台湾巡回公演も実現すると有意義であろう。また、台湾の民間伝承である指人形劇の日本での巡回公演も刺激的である。
 
(4)プロ野球アジア・シリーズ、大相撲、NHKのど自慢の台湾開催
 次に各種スポーツのさまざまな方式による日台交流促進が考えられる。近年急速にスポーツにおける競技レベルが向上している地域であるだけに、各種スポーツの東アジア・東南アジア大会の開催は一般のスポーツファンの関心を集めており、競技力向上の機会としても有益である。
 すでにオープン戦ではプロ野球の交流試合が実現しているが、その機会と範囲を拡大すれば、将来、日本の野球少年が台湾球界で活躍し、台湾の野球少年が日本球界に憧れる機会も増えると期待できる。戦前の甲子園の中等学校野球大会(現在は高校野球)には台湾の学校も予選を勝ち抜いて参加していた。エキシビション試合としてでも、台湾に限らずアジア各国の高等学校チャンピオンチームと甲子園上位校(たとえばベスト4)との交流大会実現は、興味深いイベントになるだろう。いわば、アジア高校野球選手権を毎年開催するという企画である。
 無論、プロ野球のアジア・シリーズも実現可能性の高い企画である。日本、台湾、韓国のプロ野球各リーグ優勝チームによる優勝決定戦は、各国での関心をひくイベントになることは疑いない。また、アジア大学野球選手権を各国巡回方式で大々的に開催することも、日本のスポーツ交流、そして日台のスポーツ交流とスポーツ振興に資するものと考えられる。
 また、NHK衛星放送の受信などによって、台湾では大相撲を楽しむ人口も少なくない。したがって、かつてハワイで実現し、2004年には中国での開催も予定される大相撲の海外場所として、台湾こそが最もふさわしいといえる。
 さらには、サンパウロ、リマ、ホノルル、ブエノスアイレス、サンフランシスコ、北京、バンクーバー、シンガポールなど、すでに先例があるので、NHKのど自慢を台湾で開催することも可能なはずである。
 
(5)台湾の長距離選手を箱根駅伝で走らせる
 日本は、アジアでは多くの種目においてスポーツ先進国であるだけに、台湾を含む近隣国での野球や陸上競技、中でも長距離の駅伝、そして柔道などの種目の普及、競技力向上に貢献すべきであるし、それが日本のスポーツレベル向上の呼び水になることも期待できる。国際交流の機会が増えることでマスコミ報道の頻度も高まり、青少年スポーツの興隆のきっかけを得ることにもなる。
 世界でも日本が活躍する可能性の高い種目が、国際的に見て衰退傾向のスポーツになるより発展するスポーツとなることは、日本スポーツ界にとって有益であろう。
 例えば、柔道がオリンピック種目であり続けているのは、柔道が世界のスポーツとして定着してきたからで、フランスの方が日本より競技人口が多いほどである。しかしまだまだ世界で一般的なスポーツとは言いがたい現状にあるから、近隣国での柔道の普及、競技力向上は日本のスポーツ界にとって有益である。
 こうした観点からすれば、サッカーと比較して世界的スポーツとしては受け入れられていない野球の場合も、日本の内外における振興策に公的資金を投入する意義があるといえる。陸上長距離の駅伝も同様である。したがって、後に述べる一般の教育交流とは別に、台湾からのスポーツ留学を促進することは大変意義深いものといえる。
 交流は相互主義であることが望ましいので、「日台文化交流センター」の事業として、日本の高等学校や大学の野球、陸上競技、柔道の各種チームの台湾遠征、台湾の選手、チームの受け入れなどを推進することも考えられる。
 以上の施策をとればやがて、台湾のスポーツ少年・青年が、あるいは野球留学で来日して甲子園に出場し、はたまた神宮球場での大学野球選手権で活躍し、箱根駅伝で新春の箱根路を駆け抜け、学生体重別柔道選手権で日本選手に伍して技を競うことになるかもしれない。それらは日本のスポーツ界の発展、競技力の向上のために有益であるとともに、台湾において一般の人々、ごく普通の若い人々の対日関心を高める上で大きな効果があるものと期待できる。







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