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日台関係強化のための6つの提言
―良き隣人を再認識しよう―
東京財団「アジア島国紐帯強化(日台編)」提言プロジェクト
 
国・地域別GDP地図
2001年 単位:ドル
(世界年鑑2003年版より)
(拡大画面:20KB)
(作表の都合により、30億ドル未満は面積比率でない)
 
日台関係強化のための6つの提言
―良き隣人を再認識しよう―
●本報告は 日本と中華民国・台湾との関係(以下日台関係と略称)を改善強化するための研究報告と提言である。
●日本と台湾は地理的に隣接した海洋国家であり、両国民は歴史的・文化的に、強い紐帯で結ばれてきた。自由と民主主義の価値観を共有し、経済発展に不可欠なパートナーでもある。地政学的見地からも、日台は利害をともにする関係である。
●しかし、日中国交樹立、日台国交断絶によって、日本政府が良き隣人を切り捨てた結果、三十余年にわたり、政治的にゆがめられた不正常な日台関係が続いている。
●日台関係を将来ともこのまま放置しておくことは、日本の国益を損なうばかりか、東アジア、ひいてはアジア太平洋地域の安全と繁栄にとって、重大な支障を生じさせるだろう。
●日本は、一つの政治実体としての台湾を正しく位置付け、日台関係を政治的に、より正常な姿に近づける努力を積み重ねていく必要がある。
●この重要な日台関係をより強化するために、われわれは以下、6つの具体策を提言する。
 
[提言1]日台間で、FTA(自由貿易協定)交渉を直ちに開始せよ
 
[提言2]「日台安全保障フォーラム」を設立せよ
 
[提言3]政府・政治家交流のレベルアップを図れ
 
[提言4]「日台文化交流センター」を設立せよ
 
[提言5]国際組織への台湾加盟を積極的に支援せよ
 
[提言6]外国人登録証に「台湾」を明記せよ
 
【提言1】
日台間で、FTA(自由貿易協定)交渉を直ちに開始せよ
 台湾はアジアでは言うに及ばず、世界的に見ても経済大国である。領土面積は小さいが、一人当たり所得、貿易額、外貨準備高は世界の上位に位置し、民度が高く、インフラは高度工業国にふさわしく整備されている。中国とともにWTO(世界貿易機関)にも加盟を果たし、自由貿易システムを維持発展させる能力と意志を備えている。日本と台湾はFTAを締結する上での障害が最も少ない関係である。個々の業種、品目について起こりうる摩擦も、相互理解が容易に得られる間柄にある。研究開発、生産・販売、知的所有権等に関する法制・技術について相互乗り入れはさして困難ではない。何よりも、日台間でFTAが締結されるとき、日台間の貿易・投資及び人的交流が飛躍的に増大することはもちろん、極東アジア諸国及びASEAN(東南アジア諸国連合)諸国とのFTA交渉を促進させるだろう。アジア自由貿易圏の形成にとって、中国とともに台湾が果たす役割はけっして小さくはない。
 
【提言2】
「日台安全保障フォーラム」を設立せよ
 日台間には、すでに民間相互による各種の研究会やシンポジウムが定期的にあるいは断続的に実施されている。しかし両国にかかわる安全保障に関連したものは数少ない。地政学的に見て、日台間には共通する安全保障上の課題が少なくない。海難救助、海洋調査、海賊・麻薬・密輸犯罪防止、自然災害と環境保全、テロ対策、不法入国・難民対策など、警察・保安・防衛面での協力体制の確立は必要不可欠である。定期的な会合を通じて情報交換、共同研究および共同訓練を行うための「日台安全保障フォーラム」を設立することが緊急の課題である。将来は、米国も含めた近隣の友好国との軍事的な共同演習が可能な方法を模索することが必要になる。台湾海峡を含むアジア周辺の海域と空域は、石油その他重要物資の輸送上、死活的な重要性を持っている。これを日台及び関係諸国の協力によって、より安全なルートとして確保すべきである。
 
【提言3】
政府・政治家交流のレベルアップを図れ
 日台間には、断交以来、正式な政府間交流・交渉はない。交流と交渉は、双方の民間組織として便宜的に設置された「交流協会」と「亜東関係協会」とによって代行される形となっている。交流は政府の下位の官僚に委ねられてきた。最近になってようやく、課長・局長クラスにまで交流レベルが引き上げられたが、いまだに閣僚の台湾訪問は抑制されたままである。台湾側の高官の日本官庁への訪問も実現していない。欧米各国では閣僚クラスの訪台が繰り返されているし、台湾高官の欧米訪問が相手国から拒否されるケースは稀である。民間人となった李登輝前総統の訪米は自由(数次ビザ)であるのに、日本への自由な入国は困難である。2003年秋、現職の陳水扁総統すらニューヨークを訪問、米国高官と接触した。欧米諸国の対台湾外交と較べて、日本の過度な対中国配慮は異常である。中国の圧力から脱し、受身外交から積極外交へと転換すべきである。
 
【提言4】
「日台文化交流センター」を設立せよ
 日台間には歴史的な経緯から、文化面での民間交流も活発に行われている。囲碁や少年野球の交流はよく知られているが、観光も盛んである。この交流を芸術や音楽、映画、スポーツなど広い範囲に発展させることが望まれる。食文化、ファッションなどに見られる「台湾ブーム」「日本ブーム」を一時的現象に終わらせないためにも、半官半民の「日台文化交流センター」を設立して、恒常的な交流を持つことが大事である。かつて約1万人を数えた日本への留学生は、最近ではやや低調である。日本語世代の高齢化とともに対日関心が薄れることが危惧されている。日台両国の交換留学生制度を再活性化し、親日・親台湾ブームの衰退を防ぐ必要がある。「日台文化交流センター」の果たす役割は大きい。
 
【提言5】
国際組織への台湾加盟を積極的に支援せよ
 保健衛生問題は、今や世界では国境を越えた課題であり、人権問題ともなっている。
 SARS(重症急性呼吸器症候群)蔓延の深刻化は、孤立している台湾のWHO(世界保健機関)加盟を国際問題として提起させた。もし、台湾がWHOに加盟していたなら、SARSの拡大を抑制できたであろう。WHOに限らず、ユネスコ(国連教育科学文化機関)やIAEA(国際原子力機関)への台湾の正式加盟、もしくはオブザーバー加盟が世界全体の安全と利益に貢献することは疑いない。これら国際組織への台湾の参加は中台統一に関わる政治問題とは切り離されるべきである。中国のかたくなな台湾加盟拒否は、きわめて不自然であるばかりか、人権問題も含めて世界の不幸ですらある。台湾の国連加盟は当面困難であるとしても、国連諸機関への加盟実現のために日本政府は積極的に努力すべきである。APEC(アジア太平洋経済協力会議)への台湾首脳の出席も当然認められるべきであり、この面でも日本は主導的立場を取る必要がある。
 
【提言6】
外国人登録証に「台湾」を明記せよ
 現在、台湾人の日本における外国人登録証明書の「国籍等」(出身地)の欄には、「中国」と記されている。「中華人民共和国」でもなければ「中華民国」でもない。「一国二制度」下の香港人ですら「中国」ではなく、「香港」なのに、である。わずかな訂正で台湾人の国籍を「台湾」と記すことに何の差し障りもない。台湾人の対日不満の一つが、日本政府によって台湾人としてのアイデンティティが形式的にも無視されていることにある。日本国内の外国人犯罪は近年激増しているが、その多くは不法滞在している大陸からの中国人である。日本の治安上からも、「中国」「台湾」の区別が役立つはずである。いうまでもなく、台湾は国民が選んだ総統を持つ、独立した政治実体である。これにふさわしい待遇を提供することで、日本への信頼も高まる。







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