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特集(2)
湘南邸宅文化ネットワーク協議会
鎌倉大会
平成15年度総会及びシンポジウム報告
 当協議会は、平成13年より神奈川県の湘南地域に残る邸宅・別宅文化の、保存・継承について考えることを目的にシンポジウム・見学会を開催して、今回で3回目になる。昨年、開催した藤沢市でのシンポジウムでは、神奈川県南部及びその周辺地域に数多く残る別宅文化への理解を深め、その保存・活用に向けて地域の人たちが広く手を携え、次代に継承していくことを目的として、財団法人日本ナショナルトラストが事務局を務め、「湘南邸宅文化ネットワーク協議会」(通称:邸宅ネットワーク)を設立している。今回は、鎌倉市において、平成16年1月31日(土)に第2回湘南邸宅文化ネットワーク協議会シンポジウム「湘南邸宅文化とまちづくり」を開催した。
 午前中には、鎌倉市長谷を中心に見学会を行い、約70名が参加した。鎌倉はご存知のとおり、源頼朝によって幕府が開かれ政治・文化の中心地として栄え、中世の古都としてのイメージが強いが、近代に入り、横須賀線の開通などを契機に、別荘、保養の適地として注目され、政財界などの多くの著名人が別荘を構え、明治から昭和初期にかけて数多くの近代和風・洋風建築が建てられている。
 鎌倉文学館(旧前田家別邸)からスタートし、鎌倉市長谷子ども会館(旧諸戸邸)、寸松堂、白日堂など、鎌倉長谷地区に今も残る、近代の和洋風建築を歩きながら見て廻った。今回の見学会は、鎌倉市に大変ご尽力いただき、普段は中に入ることのできない住宅の建物内にも足を踏み入れ、見学することができ、参加者も情緒あるまち並みとその雰囲気を満喫した。
 
会場に活動団体のパネルを展示
 
シンポジウム風景
 
 午後のシンポジウムでは、約160名が集まり、ネットワーク会員の一年の取り組みをふり返るとともに、これからの運動のあり方、まちづくりのあり方を探った。
 基調講演では、西村幸夫・東京大学教授に「景観法と歴史的景観の保全」について、講演いただいた。
 つづいて、財団法人日本ナショナルトラストの保護対象に認定され、現在取得のための募金活動をおこなっている旧モーガン邸(藤沢市)の保存活動や、残念ながら、活動空しく解体され、部材の保存がなされた三井邸(大磯町)の解体工事と調査、鎌倉の歴史的資産調査など、邸宅ネットワーク会員や地域の活動団体のこの一年の報告をおこなった。
 
鎌倉文学館
 
 パネルディスカッションでは、菅孝能・邸宅ネットワーク顧問をコーディネーター、後藤治・工学院大学助教授をコメンテーターに迎え、失われつつある別荘建築等の歴史的建造物とその文化をいかに後世に伝え残していくか、建物単体だけではなくその周辺景観や風景など、いかに面として残していくか議論した。規模が大きい邸宅は、特に庭の手入れ等の管理や相続の問題、不況の影響で企業所有の邸宅に関しても資産処分の対象になっている。また、自治体が買い取り、公共施設として活用していくのも難しい現状であり、後世に残していくための新たな方法についても模索した。会場からも保存に関する事例や貴重な意見をいただき、充実したシンポジウムとなった。
 
寸松堂
 
*現在、当協議会では、活動にご賛同いただける会員を募集しております。邸宅の文化や建物に興味のある方なら個人・団体を問いません。事務局までお問合せください。
(事務局 前原)
 
のり真安齋商店







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