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茅葺きネットワーク IN 白川郷
第4回総会・シンポジウム報告
 茅葺き民家を次代に残すために、市民・研究者・行政担当者などの情報を交換し、ゆるやかにネットワークしていこうと設立された「全国茅葺き民家保存活用ネットワーク協議会」(以下、茅葺きネットワーク)の第4回総会及びシンポジウムと見学会が5月10日(土)・11日(日)に岐阜県白川村で開催し約100人が集まった。日本を代表する茅葺き民家集落である白川村荻町は、1976年に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定され、茅葺き民家の修理や修景事業を行い、1995年には富山県五箇山の菅沼集落[国指定史跡・重要伝統的建造物群保存地区]・相倉集落[国指定史跡・重要伝統的建造物群保存地区]とともに「白川郷・五箇山合掌造り集落」として国内で初めて集落として世界遺産に登録されている。この3地区は、合掌造りの家々が群となって集落景観を構成し、全国の他の農村景観と比較しても、きわめて特徴的である。また、道・耕作地・水路なども伝統的な形態をとどめ、周囲を取り囲む豊かな山林とともに独特の歴史的風致を形成している。
 基調講演は、農村景観にある茅葺き民家の魅力や近年注目されてきたグリーンツーリズムについて山崎光博先生(明治大学教授)にご講演いただいた。農村の過疎化・高齢化の対策や農業の副収入原としての手段として身の丈で出来る農家での民家やレストラン経営(農家の第2の軸足)の方法などを紹介いただいた。
 続いて代表幹事である安藤邦廣先生(筑波大学教授)による基調報告では、地球環境基金の助成を受けて3年にわたり調査してきた「すぐれた自然環境としての葦原・茅場の保全活用調査」、また財団法人都市農山漁村交流活性化機構が実施した茅葺き民家の初の全国調査である「全国茅葺き民家実地調査」の調査報告とかやぶき民家の現状を、スライドを交えながら紹介された。
 シンポジウム「世界遺産になった合掌集落の課題」では、各集落で活動されている市民団体を代表して池端滋氏(相倉合掌集落保存財団理事長)、酒井真照氏(五箇山自然文化研究会会長)、三島敏樹氏(萩町の自然環境を守る会会長)をパネリストに、コメンテーターには当協議会の顧問でもある宮澤智士先生(長岡造形大学教授)をお招きしておこなわれた。世界遺産に登録されることにより、観光客が増加し、観光化するにあたってのさまざまな利点や問題点を議論した。単に合掌造り民家を保存していくのではなく、伝統的な生活文化や自然との共生、子供たちへの教育などそれぞれの地域で集落全体の自然環境や景観、文化を保全し次世代にまで受け継いでいくためにさまざまな取り組みを聞くことが出来た。
 
参加者の皆さん
 
 翌日の11日には、事務局である財団法人日本ナショナルトラストが募金により取得し、「白川郷合掌文化館」(日松井家)にて総会を開催。一般の方々は白川村萩町内を自由に見学して回った。
 総会の後の見学会では、共に世界遺産に登録されている菅沼合掌集落・相倉合掌集落を訪ねた。菅沼合掌集落では参加者それぞれが自由に散策して回り、所々で安藤邦廣先生をはじめ、詳しい方が説明を加えながらの見学となった。相倉合掌集落では、中谷信治氏(相倉合掌集落保存財団事務局長)の案内で集落内を見学。相倉は集落の外れに茅場の造成に力を注いでいる。これまで急斜面にあった茅場を休耕田や昔の荘園などに移し、新たな茅場を造成し、コガヤと呼ばれる茅を生産している。全国各地の茅葺き職人も中谷氏の説明に割り込んで自分の地域の茅の結い方を熱く説明する一幕もあった。参加者の方は予想に反し初めて訪れた方が多かったことには驚きだった。
 世界遺産に登録されたことによってそれまで生活の場が観光地になる。その狭間でそれぞれの地域の住民が自らの集落を誇りと愛情を持って、末永く住み続ける住民の意識の高さがかいま見れた大会となった。
 次回は平成16年6月に京都府美山町で開催する予定です。(事務局)
 
シンポジウム
「世界遺産となった合掌集落の課題」
 
白川郷合掌文化館にて総会を開催
 
相倉集落
 
インフォメーション
6月1日より、新事務局体制に
 財団法人日本ナショナルトラストは、5月22日に開催した理事会・評議員会を受け、事務局体制が新しく変わりました。どうぞ、よろしくお願いいたします。
専務理事 小林 晋(常勤)
事務局長 米山淳一
理事会・評議員会については、次号でご報告します。
 
事務所移転のお知らせ
 8月11日(月)より、財団法人日本ナショナルトラストの事務所を同じビルの923号室に移転します。電話、FAXは変更ありません。
 
シンポジウム
葦原・茅場の保全活動を考える
 財団法人日本ナショナルトラストが、地球環境基金の助成を受けて平成12年度から14年度に実施した調査の報告会を開催します。
▼日時 平成15年10月11日(土)14時〜18時
▼会場 花王霞ケ浦研修所(茨城県美浦村、JR土浦駅よりバス「郷中」下車)
▼主な内容 I 基調報告、II パネルディスカッション「水辺の保全と葦原」、III パネルディスカッション「里山としての茅場」
▼12日は葦原、茅葺き民家の見学会を開催
▼資料代 1,000円
▼申込み・問合せ 事務局まで。詳しいご案内を差し上げます。
 
■ご支援ありがとうございます
新入会(4月1日〜5月31日)
個人会員
<岩手県>山田 一裕
<千葉県>関村 豊作、藤田 圭子
<東京都>池本 桂子、小野 吉彦、原 隆彦、杉山 利博・美智子、
小林 晋、Voltaire Garces Cang
<滋賀県>西川 嘉廣
<京都府>石川 和子
<大阪府>石田 忠範・美子
<兵庫県>多賀 俊介
<奈良県>益田 宗児
<岡山県>徳永 巧
<山口県>片桐 郁子
永久会員
<滋賀県>中川 宗孟
 
寄付者(4月1日〜5月31日)
〔一般寄付〕
◎300,000円 クリーンアップキャンペーン(株)JTB
◎100,000円 故宮脇 俊三 ◎30,000円 廣川 郁子
◎3,000円   向川 秀昭、曽我 健
 
〔民家庭園募金〕
◎2,300円 駒井家住宅募金箱
 
 
〔トラストトレイン募金〕
◎200,000円 故宮脇 俊三 ◎30,000円 北川 雄平
◎15,000円  木村 宣仁 ◎8,795円 車内募金(4/19)
◎8,587円  車内募金(5/24) ◎6,000円 佐野 郁夫、西崎 泰宏
◎5,000円  神田 直子、細矢 剛志、宮崎 保彦 ◎4,500円 杉山 利博
◎3,600円  坂詰 貴司 ◎2,400円 久保 芳彦
◎2,000円  キーホルダー募金(4/19)
◎1,300円  キーホルダー募金(5/24) ◎500円 山田 寿夫
                                  <敬称略>
 
プロパティ情報
旧駒井家住宅/京都府京都市
 毎週金曜日に公開中。ボランティアを募集しています。必ず希望日の週の火曜日までに、事務局または関西支部まで電話、FAX、メールでご連絡ください。折り返し、確認のご連絡をさしあげます。
 入館料は無料ですが、修理のための寄付をお願いします
 
編集後記
 白川郷合掌文化館が今年で10周年を迎えます。毎年夏には、白川村の会員で組織されている白川BOXのメンバーが交代で開館していただいています。世界遺産に登録され、高速道路のインターチェンジができるなど、村をとりまく状況はどんどん変化していますが、白川郷合掌文化館を支えていただける皆さんの活動拠点として、使っていただければと願います。
 
財団法人日本ナショナルトラスト
〒100-0005 東京都千代田区丸の内3-4-1
 新国際ビル810区
TEL 03-3214-2631 FAX 03-3214-2633
E-mail info@national-trust.or.jp
郵便振替口座番号:00120-2-106140
加入者名:財団法人日本ナショナルトラスト
■関西支部
〒630-8301 奈良県奈良市高畑町1083-1
名勝大乗院庭園文化館2階
TEL/FAX 0742-20-5060
【京都事務所(駒井家住宅)】(火・金曜日)
〒606-8256 京都府京都市左京区北白川伊織町64
TEL/FAX 075-724-3115







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