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事業概要
 本年度も会員やボランティアの皆様、基盤整備の助成を頂いた日本財団、ヘリテイジセンター建設に助成をして下さった財団法人日本宝くじ協会をはじめとする多くの関係諸団体の皆様の多大な御支援の下、事業を円滑に推進することが出来た。
 特に第二次文化財取得保護計画事業では、「旧モーガン邸」(神奈川県藤沢市)の取得、「旧安田楠雄邸」(東京都文京区)の修復、「駒井家住宅」(京都市左京区)の修復を目的とした募金活動を開始した。
 本財団は英国のナショナルトラストの活動を模範に昭和43年(1968年)に設立以来、貴重な文化遺産や優れた自然景観の保全を進めてきており、本年度はまさに資産の保有団体として、資産―プロパティ―の保護・管理・活用へ向けた事業への新たな転換期であったといえる。このような状況下、第二次文化財取得保護キャンペーン募金は、多くの市民、行政、企業及び団体などから暖かい御支援をいただき順調に進捗している。
 一方、その他の保護事業では、昭和48年(1973年)から保護・管理をすすめている名勝旧大乗院庭園では大きな進展が見られた。園内にあるJR関連の保養所を含めた隣接地の名勝への追加指定と奈良市による土地の買い上げ、またこれらに伴う建物の取り壊しが行われたことにより建物の下に埋もれていた大乗院庭園の西小池の遺構を発掘する準備が整い、庭園全体の復元整備に向けて前進することとなった。
 調査事業では、これまでに文化遺産が中心であったが、観光資源専門委員長 宮脇昭先生(横浜国立大学名誉教授)の御指導の下、「五色が原の自然」(岐阜県丹生川村)の調査を行い、手付かずの優れた自然を活かしたネイチャートレイル事業の基本構想策定に協力を行った。さらに日本財団の新しい取り組みとして五色が原の保全を推進するため、保護対象への認定を行った。
 また、(財)日本宝くじ協会の助成を受け、第8番目のヘリテイジセンター「村上歴史文化館」の建設を行い、平成16年夏に開館する予定である。今後、市民及び行政と力を合わせ歴史を活かした町づくりの拠点として活用を推進する。
 この他 各ネットワーク事業をはじめ自然や文化遺産などの観光資源の保護活用を軸として事業を積極的に展開し、観光資源として我が国における国民の財産である貴重な歴史的遺産及び優れた自然景観の保護活用に大きな役割を果たした。
 
(1)飯高寺を中心とした巨木を育む文化(千葉県八日市場市)
 佐原や成田などを結ぶ交通の要衝であった八日市場市飯高地区には、重要文化財指定の飯高寺を中心として、寺や神社、茅葺き民家やタバコ乾燥倉などが点在する豊かな里山の景観が広がる。本調査では、これらを観光資源と位置づけ、住民参加でタウントレイルを設計し、「地域まるごと博物館」として活用するプログラムを提案した。
《調査代表》福川裕一・千葉大学教授
《調査委員》木下勇・千葉大学助教授 他
 
(2)近江八幡のホフマン窯と赤レンガ(滋賀県近江八幡市)
 近江八幡市内には社寺や重要伝統的建造物群保存地区、ヴォーリス設計の建造物など多くの文化財が残されているが、国内に現存する4基のうちの1基であるホフマン窯とその関連施設が残されている。本調査では、史料や実測調査をもとにホフマン窯とその関連施設の文化財としての価値をあきらかにし、構造補強も含めた保全活用策を提案するとともに、観光資源としての位置づけを明確にした。
《調査代表》三村浩史・京都大学名誉教授
《調査委員》石田潤一郎・京都工芸繊維大学教授、西澤英和・京都大学講師 他
 
(1)観光資源としての鳴き砂(鳴り砂)の浜の総合調査(全国)
 当財団では、網野町琴引浜や二丈町姉子の浜の詳細調査、全国調査や鳴き砂(鳴り砂)ネットワークの活動を通じて、全国の鳴き砂(鳴り砂)の保全に取り組んできたが、今年度から継続で全国の鳴き砂(鳴り砂)の保全活動の実態を把握し、保全活用プログラムを提案していく。本年はネットワーク加盟の4地区を中心に詳細調査を実施し、3月に東京でヴァイオリンコンサートと報告会を開催した。
《調査代表》三輪茂雄・同志社大学名誉教授
《アドバイザー》尾崎都司正・名古屋学院大学教授
《調査委員》西山徳明・九州大学教授、小島あずさ、白幡勝美、松尾省二
*日本財団助成事業
 
(1)自然環境や文化財等の保護に係るボランティア活動に資する資金調達策に関する研究(全国)
 近年、わが国ではボランティアによる自然環境や文化財を保全する活動が活発になってきているが、活動を維持するための人材や資金などの点において、多くの課題を抱えている。本調査では、わが国の自然や文化財を保全活用するNPOなどの活動実態を把握するとともに、先進事例としてアメリカ西海岸の事例を調査研究し、NPO等の活動を支えていくための提案を行った。
*(財)国土交通省政策研究所からの受託
 
(2)街並み環境整備事業に関する調査・計画策定(岐阜県白川村)
 世界遺産で知られる白川村の南部に位置する平瀬地区は、岐阜県側からの白川村の玄関口で、白山の登山口でもあり、また温泉の町としても知られている。バイパス開通により道の駅・新たな温泉施設が計画されている平瀬地区において、これらの資源を活用し、環境改善の提案を行うために街並み環境整備事業による調査・計画を策定した。
《調査委託》(株)都市建築研究所
《ワーキンググループ》西村幸夫、小林史彦 他
*岐阜県白川村からの受託
 
(3)乗鞍山麓五色ケ原学術調査(岐阜県丹生川村)
 丹生川村では、これまで入山が制限されていた乗鞍山麓五色ケ原を活用していくための設備を整備するにあたり、環境に配慮した計画策定を進めている。本調査では、遊歩道や施設配置を検討するために動植物の調査を実施し、さらに、案内板などを設置するためのわかりやすい解説原稿をまとめた。
《調査代表》宮脇昭・横浜国立大学名誉教授
《調査員》原田洋、大野啓一、藤原陸夫 他
*岐阜県丹生川村からの委託
 
(4)乗鞍山麓五色ケ原施設整備運営計画策定(岐阜県丹生川村)
 五色ケ原を整備するにあたり、上記調査の結果や景観に配慮して、遊歩道の設計や具体的な施設配置などの提案を行った。
《調査代表》麻生恵・東京農業大学教授
*岐阜県丹生川村からの受託
 
(5)乗鞍山麓五色ケ原ガイドブック制作(岐阜県丹生川村)
 五色ケ原の自然を尊重し、自然の恵みを享受するために、遊歩道ごとのガイドブックを制作する。本年は、「滝」コース、「池」コースの2コースについて、ガイドブックの制作をおこなった。
《業務委託》松本清
*岐阜県丹生川村からの受託
 
(6)長浜鉄道文化館・北陸線電化記念館企画資料収集展示(滋賀県長浜市)
 当財団の5番目のヘリテイジセンターとして開館した長浜鉄道文化館の企画展示及び特別展示と平成15年度に財団法人日本宝くじ協会より助成を受けて建設し、7月に開館した北陸線電化記念館の館内展示について展示委員会を設け、検討した。
《調査委員》青木栄一、小池 滋、松澤正二 他
*滋賀県長浜市からの受託
 
(7)安芸の宮島の歴史的町並みに関する調査(広島県宮島町)
 世界遺産の厳島神社については、社寺など境内地とその後背地については文化財として指定され、手厚い保護がされてきたが、その門前町を形成する町並みについては、これまで本格的な調査がされていない。本調査では、町並みを構成する歴史的建造物の調査を実施し、今後の保全活用に関する方向を提案した。
《調査委員》西山徳明・九州大学教授
*広島県宮島町からの受託







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