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II 舶用工業の現状及び課題
II-1 舶用工業の現状(II-1〜3、表II-1参照)
 我が国舶用工業は、2001年末時点で690事業所、3.1万人の従業員により構成され、ディーゼル機関、発電機、艤装品、航海計器等多様な舶用工業製品を生産している。これら舶用工業製品の生産動向、その生産品の輸出状況及び海外から製品輸入状況は以下のとおりである。
 
(1)生産動向
 我が国舶用工業製品の2002年の総生産高は7,975億円となり、前年より5.0%増加した。
 品目別生産シェアは、舶用内燃機関(舶用ディーゼルエンジン、火花点火機関、船外機)が38.5%を占め、次いで、部分品・付属品(舶用内燃機関を含む各種舶用工業製品用)が20.0%、艤装品(弁・管継手、救命・消防機器等)が12.6%、舶用補助機械(ポンプ、発電機等)が10.3%などとなっている。
 
(2)輸出入状況
 2002年の舶用工業製品の輸出額は2,439億円と前年より19.6%増加した。輸出額の生産額に占める割合は全体で30.6%と3.7ポイント増加している。
 品目別シェアは、船外機が50.7%と半数を占めている他、部分品・付属品11.1%、舶用ディーゼル機関10.7%、航海用機器10.2%、舶用補助機器6.8%の輸出が多い。また、輸出仕向地別では、北アメリカ39.8%、アジア30.3%、欧州19.0%の順となっている。
 一方、造船事業者による輸入額は、362億円(前年比56.1%増)と前年と比べて大幅に増加している。品目別には、艤装品60.5%、舶用補助機械14.9%の順となっている。
 
II-2 舶用工業の課題と対策
 我が国の舶用工業は、我が国造船所における外航船の新造船竣工量が高水準で推移しているにもかかわらず、近年の船価水準の下落による製品価格の低迷や、欧州・アジア諸国のメーカーとの国際競争の激化等により、舶用工業製品の生産額は微増にとどまっている。
 また、建造需要が極端に落ち込んだ状態が続いている内航船・漁船向け機器を主として製造している一部メーカーでは、工場の操業量の確保に困難をきたす深刻な影響がでている。
 このような厳しい環境状況は、企業体力の低下をもたらしているだけでなく、設備投資・研究開発投資の停滞などの問題を顕在化させている。
 さらに、従業員の高齢化等の構造的問題ともあわせて、我が国舶用工業界の産業基盤の脆弱化が懸念される状況にある。
 一方、欧州舶用工業においては、国境を越えた企業同士の合従連衝により、市場支配力の強化とスケールメリットの獲得により強固な収益性を持つ企業グループの形成が進展している。近年、これら欧州舶用工業は、基礎分野の技術革新を積極的に取り入れた新技術の開発、エンジニアリング力等を背景に、極東市場に積極的に攻勢をかけている。また、韓国・中国における舶用工業製品の国産化や合弁生産が進展しており、国際市場に於ける競争は厳しさを増している。
 我が国舶用工業が、このような諸環境の変化に対応し、今後とも活力を維持し、高品質の機器を供給していくためには、コストダウン、経営資源の有効活用による企業体力の強化、高度な技術力の確保が必要である。
 こうした中、国土交通省では、「造船産業競争戦略会議 舶用工業分科会」を設置し、我が国舶用工業の産業基盤の再構築及び国際競争力の強化を図るための戦略を提言したところである。これに基づき、以下のような取り組みを推進していくこととしている。
 
(1)業界構造の転換
 我が国舶用工業事業者が、今後一層厳しさを増す競争環境の中で、造船需要の変動に対応しながら高い競争力を維持していくためには、構造的な経営不安定要因の解消を図るとともに、事業環境に対応可能な産業基盤・企業体力を確保することが重要である。そのため、集約・再編やアライアンスの推進、経営資源の有効活用といった業界構造の転換を推進する。
 
(2)生産性の向上
 コスト競争力を確保するために、情報化や標準化等を通じた「造船産業全体を通じた生産プロセスの最適化」、「従来の造舶間の取引形態の近代化」等、更なる生産性の向上を図る取り組みを推進する。特に、造船業界とも連携して、設計・技術情報に関する業界の全般的な情報化を目指すプロジェクト(造舶WEB)を推進している。
 
(3)技術競争力の強化
 国際競争力の確保には、社会的要請及びユーザーニーズを的確に捉え、これに応える製品をいち早く提供し得る技術力の強化が不可欠である。また、近年船舶からの排ガス等の環境問題や物流の効率化など、船舶に求められる社会的要請が一層多様化・高度化する中で、舶用工業が中心となって担うべき課題は増大している。このため、「企画力、エンジニアリング能力の強化」、「造船、海運等との連携の強化」及び「業種を超えた効率的な開発体制」の確立を図るとともに、環境分野等重要な新技術の開発・普及にも積極的に取り組んでいる。
 
表II-1 舶用工業製品の生産・輸出入実績(2002年)
 
品名 2001年 2002年
生産額
(百万円)
生産額(1)
(百万円)
対前年比 輸出額(2)
(百万円)
輸出比率
(2)/(1)(%)
輸入額(3)
(百万円)
舶用タービン 8,794 19,617 223.1% 13,246 67.5% 34
舶用機関 270,444 307,200 113.6% 152,283 49.6% 3,579
(うち火花点火機関) (14,351) (9,360) 65.2% (2,677) 28.6% (60)
(うちディーゼル機関) (157,121) (164,179) 104.5% (26,039) 15.9% (3,140)
(うち船外機) (98,972) (133,661) 135.0% (123,567) 92.4% (380)
舶用ボイラー 10,900 16,736 153.5% 660 3.9% 514
舶用補助機械 70,628 82,282 116.5% 16,478 20.0% 5,374
係船・荷役機械 41,143 33,133 80.5% 1,753 5.3% 1,189
軸系及びプロペラ 34,846 29,624 85.0% 3,290 11.1% 154
航海用機器 54,659 49,308 90.2% 24,998 50.7% 2,316
艤装品 101,947 100,223 98.3% 4,005 4.0% 21,875
その他 61 0 0.0% 0 0.0% 442
部分品・附属品 166,008 159,366 96.0% 27,184 17.1% 676
合計 759,431 797,490 105.0% 243,897 30.6% 36,155







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