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海の生物のおもしろさ
 
海に生きる生物たち
 
プランクトン
 
 海水の中には、人の目には見えないほど小さな植物がたくさん漂って(ただよって)います。また、さまざまな微小な動物たちも、海水中を漂いながら生活しています。この海水中を漂いながら生活する生物をプランクトンとよび、植物は植物プランクトン、動物は動物プランクトンと呼ばれます。目合いの細かい捕虫網(ほちゅうあみ)を長くしたようなプランクトンネットで海水をこすと、これら微小(びしょう)な植物プランクトンや動物プランクトンを採集(さいしゅう)することができます。
 
プランクトンネット
 
植物プランクトン
 
 植物は太陽の光エネルギーをうけて、水と炭酸ガス、窒素(ちっそ)などから有機物を生産しています。この過程を光合成とよび、その生産物は植物から動物へと受け渡されながら、最終的に人間の食料となっています。植物なしには我々の生活は成り立ちません。陸上は、直接太陽の光を受け、森や林・草原などさまざまな植物におおわれています。一方、海中では光が深くまでとどかないので、大型の海草や海藻の生育はごく沿岸の浅い場所にかぎられます。海の大部分をしめる外洋域では、光のとどく表層(ひょうそう)に漂っている微小な植物プランクトンが生産の主役です。
 
植物プランクトンの種類
 
 海洋の植物プランクトンは、その大部分がケイ藻やウズベンモウ藻類と呼ばれる単細胞の藻類で、単体や群体をつくって海水中を漂っています。太陽の光がとどく表層にながくいられるように、体から長いトゲを伸ばしたり、体の中に比重の軽い液をためたりさまざまな工夫をこらしています。ケイ藻の細胞はちょうどお弁当箱のようになっていて、増えるときはフタと身にわかれ、その各々の内側に新しく身を作って2つになります。身のほうから作られる細胞はどんどん小さくなっていきますが、心配はいりません。最後は細胞質が結合してもとの大きさにもどります。
 
ケイ藻単体(走査電子顕微鏡写真)
 
ウズベンモウ藻類(ケラティウム)
 
ケイ藻群体(キートセロス)
 
動物プランクトン
 
 動物プランクトンには、単細胞の微小な原生動物から傘(かさ)の直径が1mを超し重さが150kgに達するエチゼンクラゲなど、海に漂っているさまざまな動物が含まれます。一生をプランクトンとして生活する動物もいますが、魚やイカの生まれたばかりの子供も泳ぐ力が弱いのでプランクトンに入れられます。そのほか、カニや貝類、ウニやヒトデの孵化(ふか)したばかりの子供は、プランクトンの生活をおくるため親とは姿がまったく異なり、それぞれゾエア、ベリジャー、プルテウス幼生(ようせい)と呼ばれます。
 
動物プランクトンの種類
 
 海洋の動物プランクトンとして重要なグループには、コペポーダ、アンフィポーダ、オキアミ類などの小型甲殻(こうかく)類、クリオネやカメガイなどの軟体(なんたい)動物類、ヤムシ類、クラゲ類、サルパやオタマボヤなど、一生をプランクトンとして生活を送るグループがいます。コペポーダとオキアミ類の多くは、植物プランクトンをこして餌(えさ)としています。大きさはずいぶん違いますが、陸上の草食動物にあたります。アンフィポーダやクリオネ、ヤムシ類と一部のコペポーダなどは、動物プランクトンをつかまえて食べる肉食者で、プランクトン世界ではけっこう強者です。海水中をふわふわ動いている弱そうなクラゲも、強力な毒をもつ蝕手(しょくしゅ)で小魚などを捕らえて食べるハンターです。
 
コペポーダ
 
カニ・メガロパ幼生
 
アンフィポーダ
 
ヤムシ
 
イカ子供
 
ネクトン
 
 泳ぐ力が強く、海の流れに逆らって移動することのできる動物をネクトンと呼びます。魚類やイカ類、イルカや鯨の仲間、ウミガメもこの仲間に入ります。動物プランクトンを主食とするマイワシやサンマなどの小型の魚類から、それらを食べるスルメイカやカツオなどの中型の動物、さらにそれらを食べるマグロやサメ類、イルカ類など大型動物と「食う−食われる」関係で結ばれています。これを食物連鎖(れんさ)とよび、陸上でも海洋でも動物たちの生活を支える最も重要なエネルギーの流れです。マッコウクジラやシャチ、大型サメ類などは、この食物連鎖の頂点に立つ動物たちで、最高次捕食者と呼ばれます。陸上では、だれが最高次捕食者でしょう?
 
ホオジロザメ







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