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熊本県 川柳の授業を体験して
 
平田 朝子
 
 川柳の高齢化が取り沙汰される中、ジュニア川柳の存在が注目されている。今年も第二十八回全日本川柳埼玉大会が行われるが、この中にジュニア部門(小・中学生)がある。沖縄、香川に続き、第三回目のジュニア部門の募集であるが、私がそのジュニア部門「さわやか」の選者に推薦されている。実は私の熊本県ではジュニア川柳の普及はほとんどない。でも選者をするからには、少しでも熊本の小・中学生に川柳を知ってもらいたいとの願いで行動を始めた。
 まず地元の新聞社に出向き、今年私が選者を務め、県内から事前投句を広く呼びかけていることを記事にして掲載してもらった。その折、『川柳とは?から作り方まで』ジュニア向けに分かりやすく解説した資料も、応募用紙と同時に配布した。これにはかなりの反響が来た。
 次に知人、親戚、柳友の協力を得て、数ヶ所の学校へも足を運び、川柳投句のお願いに行った。ちょうど学期末でもあり、先生方の対応はさまざまであったが、その中の一校をご紹介する。
 私立の女子校(中学校)で担任の国語の先生から、中学一、二年生合同での二時間の川柳授業を依頼された。大切な国語の時間を割いてのご協力だった。無論、川柳作句など始めての生徒さんばかり。約束の日、私は出来るだけのジュニア川柳の資料を整え、先生と全生徒に配り、熱っぽく川柳の魅力を説いた。始めの一時限目は、無言で私の説明を聞いていた生徒達も、休憩後の二時限目になると、あちこちから質問が飛び出してきた。題の「さわやか、まごころ」とはどんなときですか?どんな事でも書いていいか?五七五を出てもいいか?これは川柳になるか?等々、矢継ぎ早に手が上がった。
 皆が川柳に興味を示してくれている。あとはいかに思いを引き出し、純粋に文字にしてくれるかであった。私は教壇を下り、一人一人に声をかけ、「素直にストレートに、思いのままをぶつけて下さい。」と語って回った。一生懸命に川柳に取り組んでくれる生徒との心温まる二時間が過ぎた。そして五〇人全員が投句をしてくれた。
 最後に校長先生も、「こんなに生徒達が積極的に楽しく川柳に打込んでくれるとは驚きました。できたら次は高校生にも川柳教室を計画したい。」と話してくれた。教育現場でも、川柳の必要性を訴える学校のある事を知り、気を良くして帰った。ジュニア川柳の未来と自信のようなものを感じた授業であった。
 それにしてもジュニアには今年の「題」は難かしいように感じた。
 
 
宮城県 川柳宮城野社
あすなろ抄
 
平成十五年十二月号 津田 公子 選
弟のつった魚はよくはねる (多賀城・八幡小四)安倍 築
水のない堀で泳いでいたメダカ
赤とんぼ飛べば飛ぶほど日が暮れる (根白石小六)佐藤 雄馬
忘れ物先生説教母激怒 (石越中一)小野寺 迪
 
平成十六年一月号 松崎 正人 選
かけあったおちばのシャワー赤黄色 (神奈川・中原小三)坂野 亜月
紅葉のとびらが秋をむかえてる (中山小五)渡邉 花歩
制服がさまになったか一年生 (石越中一)菅原 巧
園児たち素直な心に夢いっぱい (石巻中一)千葉 留莉
 
平成十六年二月号 津田 公子 選
ゆびでなくこころのなかでかぞえたよ (四歳)かわい おとわ
ふゆやすみたのしいゆきがふってくる (台原小三)ちば めぐみ
白菜が雪にふまれていたそうだ (根白石小六)早坂 秀望
おっぴさんごはんはさっき食べました (矢本一中二)菅井 彩乃
 
つぼみから花へ ―ジュニア川柳この一年―
 
川柳宮城野社主幹 雫石 隆子
 
 同人・会員の高齢化が進む中で、ジュニアの育成は宮城野社にとって長年の夢であったが、昨年の四月号でやっと実現した。「明日はヒノキ」の願いをこめて「あすなろ抄」と名づけ、選者には同人の中から現職とOBの中学教諭男女各一人を委嘱してのスタートだった。
 初回を振り返ってみると、小学生六人、中学生十四人の計二十人、延べ二十二句と選評が載っているが、児童・生徒の学校名は伏せられている。楽屋裏を言えば、中学生のほとんどは現職教諭の女性選者の教え子だったため、学校名を載せるまでには至らなかったのだ。
 よちよち歩きではあったが、同人・会員のお孫さんたちを中心に、少しずつ投句が増えてきた。六月には、カルチャーセンターに勤務していた編集長が「野外スケッチ」の講座で、仙台市内で唯一木造校舎が残る小学校を訪ねた際、六年生担任の先生がときどき児童に川柳を作らせているという話を聞き、その場で協力を頼んできたという、そんな幸運もあった。この小学校からは昨年八月号以降、毎号三〜五人の児童に登場してもらってきた。
 学校にも広がりが出てきたため、十月号からは学校名も表記するようにした。これも、協力校からは歓迎され、学校を通じて保護者からのお礼の声が届けられるようにもなった。
 満一年たった今年3月号を見ると、二十九人の二十九句が出ているが、四歳の子が一人、小学校が十一校、中学校が二校とバラエティーに富んでいる。つぼみの段階を経て、ようやく花が咲き始めたような感じがする。
 スタートから毎号欠かさず投句してきた小学三年の女児は、今年一月の宮城県新春川柳大会に参加し、佳作に五句も抜けて周りをびっくりさせた。この女児を含めて「皆勤賞」の子、佳句を寄せてくれた子の合わせて十五人に、満一年を記念して「あすなろ抄優秀賞」の金メダルを贈ったが、直接手渡した子の欣喜雀躍とでもいうべき喜びようが印象的であった。
 花が咲き始めたことは確かだが、課題もまだまだある。例えば、この欄は十八歳未満を対象にしているのだが、高校生の投句は一年間でたった一回だけであった。また、協力をいただいている学校の先生にも、転勤がある。実は、前述した小学校の先生も、この四月に転勤になった。転勤先の学校でも続けてみます、という連絡はいただいているものの、今まで通りにはいかないかもしれない。ジュニアは投句料無料、掲載誌一部贈呈にしているため、経費負担増の厳しさもある。
 こうした難題はあるのだが、咲き始めた花を大輪にするための努力だけは続けていかなければと、思いを新たにしているところである。幸い、この秋には仙台市内の市民センターの主催で小学生から高校生までを対象にした川柳講座が予定され、その講師を依頼されている。こうした機会を生かしていきたいと思っている。
 
千葉県
犬吠誌 平成十五年五月号
『あきこの楽しいジュニア川柳』
米島 暁子 選
○は秀句です
 
○春休みなんでこんなに早いんだ
もうすぐに四年生だよたいへんだ
岡田 友里(小四)
☆たのしかった、しゅくだいのない春休みは、すぐにすぎます。友里ちゃんは四年生になります。べんきょうも、川柳もガンバツテネ。
○春休みるすばんとてもたいへんだ
ピンク色はなびらいっぱいきれいだな
吉田 真歩(小五)
☆おるすばんもできる真歩ちゃんです。川柳は発見をしたことを書きましょう。
○お花見の桜のアーチ美しい
○ジャンケンで勝ってもらったチョコバナナ
渡邉 真美(小五)
☆真美ちゃんは、お花見をした時の句ですネ。二句ともいい句です。
○部活動春から日焼けして困る
開幕戦同時に桜咲いている
吉田 夏歩(中三)
☆部活も勉強も頑張る夏歩さん。日焼けは部活の勲章です。気にしないでネ。
 
岩手県
はつかり誌
秀逸 子ども川柳 宇部 功 選
 
平成十六年一月号 課題「餅」
 
盛岡市立城北小学校 六年
ずんだ餅いなかの味をかみしめる 昴
種市町立宿戸小学校 五年
おじいさん入れ歯を餅にとられたよ 船渡 有列
山形村立山形小学校 三年
鏡餅たなの上ではえらそうだ 美菜子
西根町立寺田小学校 四年
焼き餅の中からオバケ飛び出たよ 滉
手まをかけ育てた米で餅をつき 智佳
西根町立寺田小学校 三年
餅料理いつもとん汁にあっている 央夏
 
平成十六年二月号 課題「髪」
 
盛岡市立城北小学校 六年
髪の色時代の流れ七変化 佐藤 昴
一戸町立奥中山小学校 三年
お母さん白髪ふえてる苦労する 岡田 美喜子
西根町立寺田小学校 六年
年をとり髪の命が消えていく 米田 一志
西根町立寺田小学校 五年
長い髪じつはあの人カツラなの 菖太
 
平成十六年三月号 課題「風」
 
盛岡市立城北小学校 六年
北風がみんなをこたつにひきよせる 菅平 諒平
矢巾町立煙山小学校 五年
たたかいの合図はいつも風が吹く 光祐
種市町立宿戸小学校 六年
北風が自然の楽器ならしてる 菜都美
山形村立山形小学校 六年
風が吹き合唱始める秋の山 静香
西根町立寺田小学校 六年
ふぶきの日うっすら見える雪女 裕紀
西根町立寺田小学校 四年
北風くんゴーゴー何をおこってる
あの時の記おくがもどる風の道 山本 隆生
 
16年2月に出版された「子どものこころ五七五」
著者はラジオ川柳でお馴染みの盛岡市出身
元小学校校長 宇部 功氏
新葉館出版
 
茨城県
つくばね誌
 
 つくばね川柳会では平成二年よりジュニア作品ページを設け、平成三年度より年度賞表彰をしてきました。各年度の受賞作品です。
 
第9回 たいようとうきうき今日はデートする
埼玉 小三 鈴木 愛
第10回 母の日に肩をたたいたプレゼント
茨城 小六 武田 翔
第11回 街中が桜色した新学期
埼玉 中一 出澤 麻奈美
第12回 太陽とお話すると元気でる
埼玉 小六 宮城 温子
第13回 トゲのあるバラの花にもちょうがくる
埼玉 小五 金子 ヒロミ
 
静岡県
いしころ誌 平成十六年一月号
「高校生の時事川柳」
浜松市立高校 鈴木泰舟 選
 
最後まで発言しない被告人 三年 古橋 和美
総選挙無関心さが浮き彫りに 〃 岩崎 利恵
泥沼のイラクで焦るブッシュさん 〃 栗田 梓沙
破たんして不安広がる融資先 〃 鈴木 沙織
新居町仲間はずれはもう終わり 〃 高橋 聖枝
自民党おんぶにだっこ支えられ 〃 吉田 真弓
バレーボール世界に挑む日本女子 二年 石津 明子
隊員に死ねというのか小泉氏 〃 荒木 直央
注目の長嶋ジャパン勝ち進み 〃 池谷 彩
自爆テロ平和に暮らす日は来るか 〃 石塚 陽子
アルカイダ日本名指しのターゲット 〃 小久保 路子
華やかにデビューをはたす女高生 〃 小笠原 志帆
ユネスコで伝統文化認められ 〃 伊藤 博美
日本の首相必殺はぐらかし 〃 黒野 礼美
ブラジル戦世界の壁は厚かった 〃 小林 香
進退の明暗分けた総選挙 〃 江間 さやか
生きるより二人のために死を選ぶ 〃 小栗 沙也佳
アテネヘの夢はコートをかけめぐる 〃 伊達 七瀬
虐待死親はしつけと言い逃がれ 〃 中村 恵
命たち英雄になる自爆テロ 〃 井指 由起子
いらっしゃい選挙を招くふじっぴー 〃 鈴木 翔子
動物を扱う側がいじめてる 〃 北村 朝美
十九歳日の丸背負い活躍し 〃 高柳 幸子
Qちゃんのまさかの銀にアテネ逃げ 〃 平井 千明







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