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(3)原画像の作成
 分類に用いた画像は、瀬戸内海伊予灘実験で収録された図83の海底音響画像である。原画像の濃度レベルは、0-255の範囲であり、小さい値ほど、散乱強度が弱く白で表現される。ただし、画像範囲でデータが存在しないところは(探査幅よりも外側部分)、255の値が入っており、同じく白で描画されている。したがって、音響画像データの濃度レベルは、0-254の範囲となるため、この範囲内においてヒストグラムの平坦化処理を行う必要がある。しかしPhotoshop等の汎用のソフトウェアでは、0-254の範囲のみを平坦化することができないため、平坦化ソフトウェアを開発し、処理を実施した。平坦化ソフトウェアの処理例を図83に示す。
 
図83. 原画像と平坦化画像
(上) 原画像(放射量補正未実施)
(下) 平坦化画像(放射量補正、地形歪み補正、ヒストグラムの平坦化を実施後、8値化したもの)
 
 図83の平坦化画像は、原画像に対して放射量補正、地形歪み補正、ヒストグラムの平坦化処理を行ったものである。左舷側に地形的な高まりがあるために、図中の散乱強度の低い帯状の記録は原画像に比べて外側へ移動している。また平坦化によるコントラストの改善が認められる。テクスチャ特徴量算出における計算時間の短縮のため、原画像の濃度レベル数をn=256からにn=8の画像に変換してある。その結果、1-8の値で表された平坦化画像は、255階調で表した原画像と同程度の情報量を読み取ることができることから、分類は可能と判断した。
 テクスチャ領域として、原画像(横2100ピクセル×縦2400ライン)に対して5×5の領域にメッシュ状に区切ることで、領域の数を(横420×縦480)とし、それぞれの領域における特徴量を計算した。通常、こういった分類では分類精度の決定のために、グランドトルスデータを初めとする数多くの学習データが必要となるが、今回はこういったデータが無いことから、画像上からあらかじめ分類グループを決定した上で、グループ毎にサンプルデータを抽出し、そのテクスチャ特徴量を学習データとした。図84にサンプルデータ抽出地点を示す。本研究では、図より散乱強度が極めて高いA、海底表面の凹凸が著しいB、比較的強度が一様なC、散乱強度が低いDの4つを分類項目として処理を行った。
 
図84. サンプルデータ抽出点
 
 本研究では、テクスチャ解析結果が、あらかじめ決定した分類グループに近づけることを精度決定の基準とした。分類は学習データの情報量と実際の画像データからの情報量との幾何学的な距離(ユークリッド距離)を計算し、最短のカテゴリにグルーピングする方式とした。図85(a)-(f)は、各グループのテクスチャ特徴量である。平均と分散以外は、4方向(0、90、135、45度)のそれぞれの結果を示している。図より、方向による値の変化はほとんど見られないが、コントラストだけは若干差異が見られた。散乱強度が低いDは、濃度値及びコントラストも低い値を示しているが、一様性については高い数値を示している。







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