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(5)水深データの補間
 不良データ及びターゲット除去後の水深データの補間処理を行う。本研究では対象とする範囲において、比較的単純な補間方法を検討した。ここで補間には内挿と外挿があるが、本研究で行う補間は、ビーム間の補間及び測線間の補間のため、外挿は含まない。したがって、求めようとする補間点が、データ点の分布する範囲に含まれている場合のみであり、その外側は含まれないことになる。
 補間にはいろいろな方法があるが、最も単純な方法としては、最近隣内挿により、補間点にもっとも近い点のデータを当てはめる方法がある。画像処理で使用されているこの方法は、平均化処理などに比べて、観測データの値を壊さないという特徴がある。また、おのおのの測定点を直線で結ぶ直線補間もある。このような最近隣内挿や直線補間は、データが密に存在しているグリッド内では有効であるが、SeaBat8101の外側ビームのように、データが密に存在しない揚合においては、補間によって水深差(段差)が生じる。また隣り合うビーム間で直線補間した場合は、前後のビーム間でやはり段差が生じる。したがって、これらの方法では、得られた結果が滑らかにならない。これは一般的に、補間点を含む周囲の水深データは、連続で滑らかと仮定してよい場合が多いからである。
 本研究では、補間点を含む周囲のデータを用いた面的な補間方法を検討した結果、最適曲面近似法による補間と共一次内挿による近傍四点による平均化処理を試みた。
 
(a)最適近似曲面法による補間
 3次元空間における曲面を作成する方法として、浅田(2000)による(4)式の4次関数による近似曲面を用いたデータの補間方法がある。Zは求める水深、Aiは係数、X, Yは補間点からの水平位置ベクトルである。
 
 
 この方法は、補間データの周囲360度を指定角度の区域に分け、各区域の中から近い順に指定個数までの水深データを抽出し、最適近似曲面を構成する。近似曲面は(4)式を仮定して、最小自乗近似法により係数を求める。次に、この近似式と計測データの差を計算し、(5)式に示すように、これらの差を距離の自乗に反比例した加重平均により、水深データとの整合を図るものである。
 
 
 この重み付けは図17に示すように、近似式を補間点から距離に近い計測データに近づけるため、差の荷重平均だけ近似式をシフトして補間値を計算する。すなわち、サンプル点から算出した近似曲面と各サンプル点との差の加重平均だけ近似式をシフトして、滑らかな曲面となるように補間値を計算するものである。
 
図17. 最適曲面近似法の重み付け
 
 本研究では、この方式に検索半径を設けることにより、その範囲内で指定した数のデータが存在しなければ、補間しないという選択を設けた。具体的には、補間点を中心として、検索範囲分の半径を描き、その円を4個のセクタに分けたときに、各セクタで最も補間点に近い順に指定個数分のデータを計算対象点としている。指定した4つの区域のそれぞれについて、3個以上のデータが得られた場合のみ、本方式による補間処理を実施した。
 
(b)共一次内挿(bi-linear)
 (a)と同様、補間点を中心に、検索範囲分の半径を描き、その円を4個のセクタに分けて、各セクタで最も補間点に近い点を計算対象点とする。(6)式でZが求める水深である。補間点における値の計算方法は、計算対象点のデータの重み付け平均とする。(7)式に示すこの重み付けWiは、グリッドから近い点のデータについては重みを大きく、遠い点のデータについては重みを小さくなるようにしたものである。
 
 
 
 (a)及び(b)のいずれの方法も、検索半径が大きいと適切な補間がなされないため、平成14年度の研究結果から、図18に示すように、外側ビームのビーム中心軸の間隔である3.92mを検索半径とした。
 
図18. 斜距離の違いによる照射覆域の大きさ(水深10m)
 
(c)多項式を用いた測線間のデータの補間
 図19に最適曲面近似法及び共一次内挿による補間結果を示す。ここで補間点の周囲360度を4つの区域に分けた場合、図19に示すように検索半径よりも広い測線間においては、これらの方法では補間することができない。この現象は探査幅の外側においても見られるが、本研究では外挿は対象としないため、測線間のみを考慮する。
 このような範囲では、補間する範囲を指定した上で、サンプル数が合計9個未満でかつ2個所以上の区域でサンプルが得られた場合のみ、(8)式を最小自乗法により算出し、荷重平均によって計測データとの整合性を測る補間法を実施した。
 
 
 補間後の地形図を図20に示す。赤枠が多項式による測線間の補間区域である。またターゲット設置付近の拡大図を図21に示す。
 
図19. 補間できない個所(図中の赤枠)
(左:最適曲面近似、右:共一次内挿)
(拡大画面:68KB)
 
図20. 測線間の補間例 (左:最適曲面近似法、右:共一次内挿)
(拡大画面:64KB)
 
図21. 
補間後のターゲット設置付近の拡大図(左:最適近似曲面、右:共一次内挿)
図中の赤丸は、ターゲットの設置位置を示す。







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