第3章 属性情報の整理・付加
第2章で収集・整理した観測資料について、属性情報を整理し、表形式のファイル(Excel形式)に入力した。なお、ここで用いる「属性情報」とは、観測に関する種々の項目を検索しやすいように整理したもので、以下では「インベントリー情報」と言う。
文献・報告書などから得られるインベントリー情報の多くは、昨年度既に整理・付加しており、今年度新たに収集した資料について追加した。
また、観測データのヘッダー項目から得られるインベントリー情報を別途抽出し、整理した。
第2章で収集・整理した観測データには、文献・報告書などの形でインベントリー情報 が整理されていない観測が多く含まれている。
そこで、収集した観測データセット(JODC保有の日本のデータ、KODCデータ、WOD2001)から観測期間、観測範囲、船舶コード、国コード、観測機関、プロジェクトコード、観測点数などのインベントリー情報を抽出した。
この結果、日本のデータからは9,952クルーズ、KODCデータからは1,056クルーズ、WOD2001の各層観測データからは534クルーズのインベントリー情報が得られた。
ここで、クルーズ区分は便宜的に5日として集計した。これは、2.1節でも述べたようにクルーズの区切りは観測データからはわからないため、1隻の船について観測日時が5日以上離れていれば別のクルーズと見なしたという意味である。
日本のデータのうち、水産試験研究機関によって行われた定線観測(プロジェクトコード:POD)が2.1節に述べたとおり6,421クルーズであった。
抽出されたインベントリー情報よりプロジェクト別にクルーズ数を集計すると表3.1のとおりであり、水産試験研究機関による観測(POD)が約65%を占めていた。なお、測点数は“POD”が101,204点、それ以外が177,675点で、“POD”は約36%であった。測点数で比率が低くなるのは、全データのうち船舶名(コールサイン)が不明なためクルーズ区分の集計を行わなかった観測点が約12万点含まれているためである。これを除けば、“POD”の測点数が約64%であった。
なお、プロジェクト名が“POD”以外のデータの観測機関別クルーズ数は表3.2のとおりであった。
表3.1 JODC保有のデータ(日本)のプロジェクト別内訳
JODCコード |
プロジェクト名 |
クルーズ数 |
CSK |
CSK(黒潮及び隣接海域共同調査、1965-1979) |
3 |
DNP |
DNP(国際的にデータを交換する意向を表明した海洋調査計画) |
35 |
JRK |
JRK (日中黒潮共同調査、1086-1988) |
9 |
KER |
KER(黒潮開発利用調査研究、1977-1988) |
59 |
POD |
水産研究所及び件水産試験場等の観測 |
6421 |
SAGE |
SAGE(北太平洋亜寒帯循環と気候変動に関する調査、1997-) |
9 |
WPAC |
WESTPAC(西太平洋海域共同調査、1979-) |
37 |
WPIC |
WESTPAC & KER |
63 |
|
その他のコード |
27 |
|
(プロジェクト名なし) |
3289 |
|
計 |
9952 |
|
表3.2 観測機関別クルーズ数(日本のPOD以外)
機関コード |
観測機関 |
クルーズ数 |
001 10 |
国立環境研究所 |
13 |
011 00 |
海上保安庁水路部(現海洋情報部) |
180 |
011 01 |
第一管区海上保安本部 |
205 |
011 02 |
第二管区海上保安本部 |
172 |
011 03 |
第三管区海上保安本部 |
101 |
011 04 |
第四管区海上保安本部 |
1 |
011 05 |
第五管区海上保安本部 |
1 |
011 06 |
第六管区海上保安本部 |
1 |
011 07 |
第七管区海上保安本部 |
30 |
011 08 |
第八管区海上保安本部 |
504 |
011 09 |
第九管区海上保安本部 |
283 |
011 10 |
第十管区海上保安本部 |
5 |
012 00 |
気象庁気候・海洋気象部 |
90 |
012 01 |
函館海洋気象台 |
368 |
012 02 |
神戸海洋気象台 |
27 |
012 03 |
長崎海洋気象台 |
222 |
012 04 |
舞鶴海洋気象台 |
675 |
012 11 |
八戸測候所 |
118 |
012 12 |
宮古測候所 |
3 |
031 00 |
水産庁研究部(旧 農林省も含む) |
66 |
031 01 |
北海道区水産研究所 |
12 |
031 02 |
東北区水産研究所 |
11 |
031 03 |
中央水産研究所 |
1 |
031 05 |
西海区水産研究所 |
1 |
031 07 |
遠洋水産研究所 |
4 |
031 09 |
東海区水産研究所(現中央水産研究所) |
4 |
040 00 |
海上自衛隊 |
143 |
040 01 |
旧日本海軍 |
18 |
100 00 |
北海道大学 |
75 |
100 06 |
東京大学海洋研究所 |
4 |
100 10 |
水産大学校 |
1 |
100 36 |
長崎大学水産学部 |
2 |
110 01 |
北海道立浦河高等学校 |
1 |
110 45 |
岩手県立広田水産高等学校 |
1 |
201 00 |
北海道立中央水産試験場 |
5 |
201 03 |
北海道立函館水産試験場 |
4 |
201 04 |
北海道立稚内水産試験場 |
3 |
202 00 |
青森県水産試験場(現青森県水産総合研究センター) |
3 |
203 00 |
岩手県水産試験場(現岩手水産技術センター) |
6 |
206 00 |
山形県水産試験場 |
1 |
212 00 |
千葉県水産試験場(現千葉県水産研究センター) |
2 |
215 00 |
新潟県水産試験場(現新潟県水産海洋研究所) |
2 |
216 00 |
富山県水産試験場 |
2 |
217 00 |
石川県水産試験場(現石川水産総合センター) |
1 |
223 00 |
愛知県水産試験場 |
1 |
226 00 |
京都府水産試験場(現京都府立海洋センター) |
4 |
228 00 |
兵庫県水産試験場(現兵庫県立農林水産技術総合センター水産技術センター) |
1 |
231 00 |
鳥取県水産試験場 |
2 |
232 00 |
島根県水産試験場 |
6 |
235 00 |
山口県水産試験場(現山口県水産研究センター) |
2 |
240 00 |
福岡県福岡水産試験場(現福岡県水産海洋センター) |
40 |
241 00 |
佐賀県水産試験場(現佐賀県玄海水産振興センター) |
1 |
242 00 |
長崎県水産試験場(現長崎県総合水産試験場) |
33 |
243 00 |
熊本県水産試験場(現熊本県水産研究センター) |
1 |
360 00 |
海洋科学技術センター |
1 |
900 00 |
その他 |
48 |
Z0 |
不明 |
19 |
|
計 |
3531 |
|
また、WOD2001は測器(観測方法)別に観測データが区分されているので、インベントリー情報もこれに従ってそれぞれ抽出した。各測器によるインベントリー情報の概要は表3.3のとおりである。
表3.3 WOD2001から抽出したインベントリー情報の概要
データ種別 |
ファイル数 |
クルーズ数 |
総測点数 |
期間 |
国 |
OSD
(各層観測) |
67 |
534 |
10,133 |
1887/9/21-2001/6/26 |
アメリカ、ソ連、韓国、台湾、中国 |
CTD |
7 |
25 |
285 |
1980/8/19-1995/12/7 |
アメリカ、ソ連 |
XBT |
216 |
1,110 |
15,939 |
1966/7/22-2001/4/26 |
アメリカ、ソ連、韓国他13カ国 |
MBT |
285 |
1,672 |
20,276 |
1941/10/31-1992/11/22 |
アメリカ、ソ連、韓国他8カ国 |
PFL (中層フロート) |
1 |
(2) |
1,270 |
1999/9/14-2000/7/10 |
アメリカ |
MRB
(係留観測) |
2 |
(48) |
114 |
1993/9/12-1997/12/31 |
不明 |
DRB
(漂流ブイ) |
1 |
(3) |
1,059 |
1999/11/14-2000/2/6 |
アメリカ |
|
(PFL、MRB、DRBは連続的な観測期間を1単位として集計)
|
ここで、対象範囲のデータ抽出及びインベントリー情報の抽出にあたり、JODC保有データ及びKODCデータに対しては、付表−6に示す品質管理フラグによりフィルタリングを行い、位置や時間の疑わしいデータは除外した。
具体的には下記のフラグの付いているデータ(測点)を除外して集計した。
・測点情報フラグ:5: 船速チェックにより位置、日時、船舶コードが疑わしい
6: 位置不良(陸上)
6:9: 致命的なエラー
・プロファイルフラグ:9: 観測データなし。もしくは1測点に複数のプロファイルデータが存在
測点情報フラグ「5」が付与されているデータには、図3.1(1)に例示するように太平洋側の観測クルーズにおいて、位置情報が誤って記録(入力)されているために日本海エリアのデータとなったものもある。こうしたデータを除外すると図3.1(2)のようになり、本データベースに混入するのを防ぐことができる。なお、船舶コードが不明なデータにもフラグ「5」が付与されているので、船名不明のファイルに対してはこの処理を行っていない。
図3.1(1)位置エラーと思われるデータの混在例
図3.1(2)品質管理フラグによる除外後のデータ例
第2章で収集・整理した資料のうち、文献・報告書等が存在する観測については、この中からインベントリー情報を抽出し、昨年度作成したインベントリー情報ファイル(Excel形式)に追加した。
具体的には下記の観測について抽出・付加を行った。
・対馬海流域一斉観測結果(報告書)
・水産試験場の対馬暖流調査資料(報告書)
・昭和7・8年の日本海一斉海洋調査報告書(水産試験場報告)
・気象庁(春風丸)による日本海南部海洋観測報告(海洋時報)
・大和堆海域における「沖合漁場総合整備基礎調査」報告書
・ONRによる日本海観測の情報(同プログラム関連のWebサイト)
・地方自治体により実施された1994〜2002年の日本海沿岸海洋観測情報(第49〜57回日本海海洋調査技術連絡会議事録)
・官庁により実施された2002年、2003年の日本海観測の情報(第57、58回日本海海洋調査技術連絡会議事録)
・官庁及び地方自治体により実施された日本海西部における海洋観測の情報(西日本海洋調査技術連絡会議議事録)
このインベントリー情報ファイルは、CSR(Cruise Summary Report; 航海概要報告)の項目をベースとして昨年度設計したものである。しかし、その構成項目は3.1節で抽出した観測データセットによるインベントリー情報項目とは異なる。
最も大きな違いは、観測データから抽出した情報では船名、観測機関、プロジェクト名など全てのインベントリー情報がコード化されていること、また観測位置、範囲などの情報は、経緯度で検出できることである。
そこで、両者の項目を合わせてインベントリー情報項目を拡張し、表3.4のように昨年度設定した項目に加え、船舶コード、観測機関コード、プロジェクトコード、国コード及び経緯度範囲を追加することとした。
表3.4 観測インベントリー情報の項目
項目 |
内溶 |
共通項目 |
CSRの記載項目
+コード追加 |
照会番号 |
CSR情報のJODCにおける照会番号 |
船名 |
データを収集した船舶のフルネーム |
船舶コード |
上記船舶のコード(コールサイン)。JODCコードに準ずる。 |
選手 |
データを収集した船舶の種類 |
航海番号 |
航海の固有番号、名称または略称 |
航海期間 |
出港日と入港日、もしくは観測期間 |
出港地 |
出港した港の名称 |
帰港地 |
帰港した港の名称 |
担当機関 |
航海の観測計画を制作した調査機関の名称 |
観測機関コード |
観測を行った機関のコード。JODCコードに準ずる。 |
観測責任者 |
航海中観測を担当した者(観測班長)の名前と所属機関 |
調査海域 |
航海中にデータを収集した海洋または海域の名称 |
特定海域 |
調査が或る海域の特定区域に集中した場合、その区域のローカルな海域名、海底地名、または地理座標 |
調査範囲 |
MSQの海域番号図による |
調査範囲
(経緯度) |
経緯度範囲 |
交換制限 |
データ交換に制限がある(Yes)か、否(No)か条件付き(In Part)かを示す |
プロジェクト名称 |
航海が共同プロジェクト(または調査、計画)の一部であるならば、その名称 |
プロジェクトコード |
上記プロジェクトのコード。付表−5参照。 |
調整機関名 |
上記プロジェクトの調整機関名 |
航海の目的と
簡単な報告内容 |
収集されたデータを有効利用に供するための、航海の目的と性格についての情報 |
(データ項目) |
データタイプ |
データタイプのコード(付表−4参照) |
データ数 |
収集されたデータの量、または推定量 |
追加項目 |
情報源 |
インベントリー情報の情報源 |
測点図の有無 |
情報源における測点図の有無 |
観測位置 |
係留、海底設置機器および漂流システムの観測(投入)地点の経緯度 |
データ所在情報 |
データ保管機関またはデータ所有者(機関)の情報 |
観測国 |
観測機関が所属する国名 |
国コード |
上記の国コード。JODCコードに準ずる。 |
|
CSRの記載項目は、「海洋調査報告一覧」より引用
太字表記は追加項目を示す。
|
|