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3.1.3 観測知見に基づいた離岸流啓発アンケート
 水難事故予防を目標の1つとして、離岸流の観測を行ったが、水難事故を予防するには前述の「離岸流特性の判読・推定」と並んで、「海域利用者の意識向上」が重要である。そこで、平成15年5月10日に宮崎北高校で、離岸流に関するセミナーを行った。また、セミナー後に水難事故や離岸流に関するアンケートを実施した。
 その一部について、以下に示す。なお、ここで取り上げる設問は、以下のとおりである。
 
Q1. 海に年何回ほど行くか?
Q2. 海に行った場合、何をするか?
Q3. これまでに、溺れそうになったことはあるか?
Q4. 何時、溺れそうになったか?
Q5. 今日の講義の感想は?
 
 回答をまとめると、設問1に対しては、約半数の生徒が年1〜2回ほどしか海に行かないことがわかる。設問2に関しては、約7割の生徒が泳いだりしている。ただし、設問1から考えれば、海とあまり触れ合う機会が少なく海に関する知識が乏しいまま海の中に入る生徒も多いことになり、若干リスクが高い。実際、回答者の半数近い生徒がこれまでに溺れそうになった経験を持っており、予想よりも非常に多い結果となった。そして、溺れかけた時期に対しては、約9割が小学生時までに溺れかけた経験を持っている。しかも、この中で約73%の生徒が、幼稚園、小学低学年時に溺れかけた経験を持っている。したがって、子供でも分かりやすい広報プログラムと、子供を指導する父兄・教育関係者を対象とした啓発プログラムの開発が早急に必要な事を示している。また、最後の設問で、セミナーの内容が普通か分からないと答えた生徒が20%程いたわけであるが、これらの聴講者に関しては、海の流れについての知識が身につかなかったと感じ、さらに、セミナー内容を分かりやすくする努力が必要であろう。そこで、どのような生徒であるか、再度検討してみると、概略すれば、年に何回海に行くかと言う質問に対して、0回と答えた学生の中で面白いと感じた学生は約1割だったのに対し、面白いと感じなかった学生は約4割にも達していた。これは、日頃、海に親しみがあまり無い学生が講義を面白く感じていないと考えられるので、より視覚的なスライド等を用意して、海に関する関心そのものを涵養する必要があるとも思われた。
 
図3.1.10 Q1 海に年何回ほど海に行くか?
 
図3.1.11 Q2 海に行った場合、何をするか?
 
図3.1.12 Q3 溺れそうになったことはあるか?
 
図3.1.13 Q4 いつ溺れそうになったか?
 
図3.1.14 Q5 今日の講義の感想は?
 
図3.1.15 海に行く回数と講義への興味に関する検討?
 
 今回の研究調査を踏まえて、以下の課題が明らかになった。
 (1)今回、現地観測では数日程度の短期観測を実施したが、漂砂を介した地形変化と離岸流発生の相互関連を、より長期的な観測で把握する必要がある。
 (2)離岸流が海底地形に大きく依存していることが明らかになり、今後の離岸流機構の一般化に向けた解明や数値計算のモデル化に向けて、極浅海域の地形測量データの簡易的かつ高精度な計測システムの開発が大きな課題であることが再確認された。
 (3)突発的に発生する離岸流の成因を発生地点周辺の流体運動、海底地形を面的な広がりの中で捕らえる必要がある。
 (4)急勾配海浜で定常モードのエッジ波が原因となる離岸流を観測し、実験的、解析的なアプローチでその機構を把握する必要がある。
 (5)海岸の一般利用者や海岸(海水浴場)管理者等に、離岸流の特性、判読・推定方法、危険性、危険回避の方法等を周知させるための、啓蒙活動方法を海外の先進事例を参考に調査研究する必要がある。







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