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5)HGPSフロートによる流況観測
 各種計測器で定点観測を行い、離岸流の特性がいくつか明らかとなった。ただし、離岸流の空間的な発生位置やスケールを明らかにするには、HGPSフロートが優れていると思われる。そこで、ヘリコプター探査時と、現地観測時にHGPSフロートを用いた計測を行った。このときの記録をそれぞれ示す。
 まず、図2.3.26にヘリコプター探査時に陸上班となった大学院生によるフロート実験と、後日、海岸工学の専門家による推定箇所を比較のために示す。院生による結果は、離岸流というよりは、feeder currentをとらえているようである。さらに、図2.3.27〜図2.330には、現地観測で計測器本体から得られる緯度・経度(ラジアン単位)情報のグラフと、それを、PC上で緯距・経距(m単位)に換算したグラフ、そして、離岸流発生箇所のデータだけを抜粋したグラフ、また、南側の離岸流だけを拡大したものを示す。HGPSフロートを使用することで、海岸の概況と、流況の把握が迅速に行えることを示している。ただし、HGPSフロートの投入に当たっては、離岸流そのものが目視で確認できても、砕波等のために投入希望地点まで近づけないこともあった。人力で投入する現状の手法では、波が高くなると必ずしも離岸流そのものにHGPSフロートを投入できない問題を抱えており、今後何らかの改善が必要であろう。
 今回は、2つの顕著な離岸流を確認したが、これらの離岸流は最終的に沖合で重なり合っていた。特に南側の離岸流に関しては、フロートを360m以上離岸流内で移動させた。このフロートには、約500mの釣り用の太目の糸が装着してあるが、消失しないよう安全を考慮して、これ以降はフロートを巻き戻した。計測された移動距離と移動時間から単純に移動速度を計算すると約12.6m/sと、異常な推測値となった。現地での実感では、数m/s程度の速度と推測されたが、ここで推算された値については、後日、複数回の実験をやり直した上で確定する必要があろう。
 
図2.3.26 
ヘリコプター探査時に測定された院生によるHGPSフロートの軌跡
 
図2.3.27 現地観測時のHGPSフロートの軌跡(代表例)
 
図2.3.28 現地観測時のHGPSフロートの軌跡(緯距・経距表示)
 
図2.3.29 現地観測時のHGPSフロートの軌跡(離岸流の抜粋例)
 
図2.3.30 南側の離岸流内でのHGPSフロートの軌跡







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