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TSK設立
 
●オタスケマン
 倒産してプラプラしてたら、みんなが「立川さん、悪いんだけど、俺も苦しいんで教えてよ。どうやったら会社が助かるか教えてよ」「じゃあ、ちょっと持ってきな、帳面」で、見てチェックしてあげたわけですね。そしたらお金くれるんですね、悪いからって昼飯代、夕飯代。「なんだ、これ、仕事なんだ。じゃあ俺、何もすることないから、とりあえずちょっと仕事してやるか」仕事するには会社名作らなきゃいけないんで、なんかいい名前ないかな。当時総研ブームなんですね、三菱総研、三和総研。よし俺も立川総研で、将来を目指してがんばろう。だけど1人しかいないもんですから、格好悪いですから、会社の名前を立川昭吾研究所、TSKとしたんです。ここに「オ」をつけます、すると、「オタスケ」となってちょうどいいかなと思いましてですね。
 
 
●偽手形
 で、看板出したんです、新宿で。誰も来ないんですね、胡散臭いんで。たまに来るとですね、「変な手形あるんですけど、これ見て下さい。」東京は売手形と買手形と、ごまんとあるんですね。持ってきたやつ、これ、分からないんです。第一勧業銀行東神田橋支店、(株)日立製作所430万、手形です。本物ですよ。「これ、ちょっとおかしくないですか」「なんで日立がおかしいの、400万位だったらどうってことないじゃないの」「でも、ちょっと変だ」「そうかね」ともう一度よく見たら、「目立製作所」と書いてある。そっくり一緒だったですね。こんなのが出回ってんですよ、1枚8万円で。恐ろしいですよ皆さん、手形なんか貰うと。何やりだすかわからない人がいっぱいいる。こういうのをチェックしてたんですけれど、あまりお金にならないですね。
 
●夜逃げ屋
 当時みんなサラ金に困ってたんですね。歌舞伎町という場所も悪かったんですけれどもね。バーのホステスさんとかがいっぱい来るんですね、サラ金で多重債務者が。だけど、自己破産教えるわけにはいかないんですね、知ってても。「非弁」といって、弁護士法違反なんです。それで私、何を教えたかというと、逃げること教えたんですね。夜逃げです。
 実は、私が日本で夜逃げの一番の大家なんですね。一番詳しいんですね。で、夜逃げなんていうと名前が悪いんで名前変えたんです。ミッドナイトラン研究会、そういう名前に変えてスタートしたんですね。これが来るんです、なんか知らんけど、バチャバチャと。ある日、私がやってたらですね、大学時代の友達が遊びに来まして、「おい立川、今何やってんだ」「俺、夜逃げ教えてる」「ハー、何じゃそれ」「みんなが来るから、しようがないから教えてんだよ」「ちょっとやってみろ」で、お客さんが帰った後で「ヘェー、これ、おもしろいな。これ、そのままテレビや映画になるぞ」「なるわけねえだろ」「いや、電通に俺の友達いるけどな、そいつ、連れてくるからな」で、私、1年後、中村雅俊になっちゃうんですね。映画「夜逃げ屋本舗」、あのモデルが私なんですね。そうすると、だんだんわかってきますでしょ、皆さん。私が何者かって。
 
●妻達を助けろ
 そうしてやってたらね、今度は普通の人がいっぱい来るようになった。普通の会社の人がどんどん。会社が困るとね、なにが一番困るかっていったら、すぐ辞めないんですよ、社長が。企業再生というのはね、早期再生、迅速着手というのが絶対条件なんですから。ところがね、みんな頑張る。誰も辞めない。誰が辞めさせるか。ドクターストップは大体奥さんか子供なんです。その電話が殺到してくる。「お父さんね、もう、辞めないんです、○○運輸を。あんなの全然儲からない。トラックばっかりあってね、何にもならない。トラックばっかりあって肉がないの、ウチは」「ウチのお金ね、私のお金、みんな持ってっちゃう。私、離婚しなきゃダメでしょうか」「ウチの娘ね、公務員なんだけれど、お父さん破産したらどうなんでしょう」「ウチの息子、銀行行ってるんだけど、ウチが破産したらどうなんでしょう」誰もお父さんのことなんか心配してないのね。冷たいですよ、皆さん。奥さん、ずっと味方だと思うでしょ。味方じゃないんですよ、あっというまに裏切っちゃうんですから。それで、あっと思った。「そうだ、これは奥さん、子供達を助けなきゃいけない。この人達を助けなきゃダメだ」それで平成7年に「妻達の倒産回避マニュアル」という本を出版させてもらったんですね。実は私はものすごく売れると思って期待したんですけれどね、あんまり売れないですね。時期が早かったですね。
 
 
講師 立川昭吾氏
 
●マルヒの女
 突然変な人から電話がかかってきました。「立川さんですか。この本書いたのあんたですか。おもしろいね、これ。映画にしない」「おたく、誰ですか」「私、映画監督の伊丹十三といいます」どっかで聞いたことがあるなと思って「あの『マルサの女』の伊丹先生ですか」で、私、3回お会いしたんです。3回お会いして脚本を作った。そして4回目にアポイントしたら、自殺したんですね、先生が。びっくりしましたね、私も。
 その後、東映がこれを「もったいない」といって映画化したんです。主演夏樹陽子、「平成金融道シリーズ マルヒの女」。これを作ったのが和泉聖治さん、この人は「極道の妻たち」を撮影した人です。この方が私と会って打合せをした。「立川さん、あんた、おもしろい人だね。おもしろい個性してるね。いいキャラクターだ。映画俳優にならない」「いや、なりませんよ、そんなの」「教えてあげるから、やろうよ」「いや、いいですよ」「ちょっと1回やってみようよ」で、台本書いてくれました。私、倒産会社の社長役なんですよ。台詞があるんです。私が夏樹陽子に「すみません、助けて下さい」これだけなんです。この一言で、私は映画にデビューするんですね。
 「あんたおもしろい」からって、マスコミがあっという間にいろいろ企画を持ってきまして、今度は漫画です。週刊漫画サンデー。「裁きの銀」モデル、立川昭吾なんてね。単行本になって、今第5シリーズ位です。そしたら次はテレビです。今度はTBSです、ドラマ。もうだんだんいい男になって、ついに私は哀川翔と東幹久になっちゃいました。
 
勝ち組・・電工石化
 
●電光石化
 あっという間に、たった10年間で人生様変わり。この10年間の私のスピードが、実は皆さんの業界のスピードなんですよ。わかりますか、あっという間に、何がなんだか分からなくなってしまったんですね。
 先程から景気感が出てまいりました。確かに景気いいですよ。今、何がいいか、お教えしましょうか。製造業の勝ち組と負け組が猛烈に出てきました。こうやって覚えて下さい。
 「電光石化」これだけです、今、景気がいいの。ここに関わっている人達はみな勝ち組です。「電」超電導、デジタル。「光」光ファイバー。「石」セラミック。「化」バイオ。あとダメ、全部。建築、土木なんか最悪ですね。電光石化に関わってる人と食品ですね、外食関係、これはめちゃくちゃいいです。そっち以外は全部ダメ。
 
 
 それから、これから間違いなくよくなるのは、自動車とITと化学と環境。この4つです。特にバカにならないのは自動車産業です、これは凄いです。なぜなら、2006年からアメリカが環境問題のため、特にカリフォルニア州から始まったんですか、10台に1台はハイブリッドカー()にしなきゃいけない。
 さあ、今、愛知県知多半島のトヨタと松下電器の子会社、大規模な生産投資が始まりました。なぜなら、世界の3大自動車メーカー、GMとかフォード、自分のところで作るのをやめました。あまりにもお金がかかる。日産、トヨタ、ホンダ、三菱、マツダ、全部日本の自動車メーカーに委託しました。そうするとハイブリッドエンジンモーター、電池、その関連で今、滅茶苦茶な設備投資が始まりました。
 こんなのの影響が出てくるのが2年先なんです。だからその景気感ってまだ感じないんです、皆さん。でもそのシャワー効果は大きいです、自動車は。今日本で一番景気のいいのは東京なんです。その次は名古屋。その名古屋を軌道に乗せているのは、トヨタです。今日は、初めて1兆円の経常利益を出してます。自動車産業がものすごい勢いです。
 それから化学とIT、これは環境関係ですね。
 
●MIJ
 世界でメイドインジャパン、これは今、めちゃくちゃに人気が高いです。アメリカに行かれた方は分かりますね。メイドインチャイナ、どこにある。スーパーにある。生鮮から衣料、靴からバッグまで全部中国製です。じゃあメイドインジャパン、どこにある。ここにある。自動車、精密工業、ハイテクのものばっかりです。今、世界はメイドインジャパンといわないんです。MIJ(Made In Japan)というんです。ヨーロッパに行ってごらん。「どこの商品」「MIJ」「オー、クール(かっこいい)」今、世界で日本製品が高品質、高デザイン、この分野でむちゃくちゃ伸びてきたんですよ、これがMIJです。だから、勝ち組がすごい。
 
●小売業
 皆さんの業界には直接関係ないかも知れませんが、小売業どうなったか、小売業も様変わり、あっという間に変わってきた。脱生活用品。物販だけで1800億円売ったところがある、どこですか、東京ディズニーランド、東京ディズニーシー。さあ、これをみたイトーヨーカ堂、鈴木敏文会長、びっくりした。「日本変わった」もうこれからは生活に便利なものから楽しいもの、おもしろいもの、ファンタスティックな商品しかダメだ。なぜならディズニーで売ってるものは、生活のものじゃない。人形だとか、ぬいぐるみだとか変な帽子だとか、なんだか訳の分からないもの、おもしろい、楽しい、ファンタスティックな商品だ。そこでセブンイレブンが変えたから、あっという間に全国のコンビニは、みんな右に習え。あっという間に商品換えが始まった。こういうふうに、ちょっとした瞬間に時代はあっという間に変わってきます。
 
本当に不況?
 
 さあ皆さん、本当に不況ですか。ここにいらっしゃる皆さん、ほとんどの方は、経営者の方や企業の方だと思いますが、80%の方は不況だと言います。これを皆様の奥様方をここに呼んで「皆さん、不況ですか」とお聞きします。何と答えるか。「不況かも・・・」
 イギリスから最近経営者が来ました。イギリスのロンドンでは日本のことをものすごい不況だと言ってる。そこで彼らは心配で、日本はどんなふうになってるんだろうと思って来ました。新宿にあります京王プラザホテルに泊まりました。そしてそこに11あるレストランに入ろうとしました。ちょうどお昼でした。ところが1軒も入れない。1時間待ち。それで、その中の1人が私に聞きました。「ミスター立川、今日マダムの大会があるんですか」「いや、マダムの大会はないんです」「何をやってるんですか」「昼飯食ってるんです」「はあ、女性だけで何で、4500円のランチ食ってるんですか」ねえ、お父さん350円のシャケ弁当やざるそばですよ。奥さん、豪勢な昼飯食ってる。どうなってんですか。その後、表参道歩いてたらルイヴィトンという店がある。入ってたら、若い女の子が何十万円というバッグを現金でポンと買ってる。若いイギリス人が私に聞きました。「ミスター立川、日本は今不況だよね」「そうだ」「本当に不況だよね」「本当に不況だよ」「ホーッ。ここに来てよかった。俺は世界的発見をした。多分俺はイギリスに帰ったら大金持ちになる」「あ、そう。何で」「日本政府から俺はこの不況を輸出する代理店権をもらうことにした」「何でだ」「世界はこんなのを不況といわない。こんなのを不況というんだったら、みんな大歓迎する。これは好景気だ」
 
 
 どうなっちゃったんですか、これ。お金が動き始めたんですよ、お金が。そこに皆さんが気がついてないんですよ。猛烈に金が動き始めたんです。それはどんな金か。実は個人のお金が1400兆円あるといわれている。その中の使えるお金が800兆円位ある。これが動き始めたんです。ところが、この金、誰が持ってるかというと、何と65才以上の方が7割近く持ってるんですよ。そしてこの人達が1人平均2000万円持ってる。おじいちゃん、おばあちゃん2人で4000万です。そして、何がすごいかというと、これから平均年齢、男78才、女85才。このままご夫婦仲良く平均年齢で死ぬと、なんと25年分も使えるだけの金残して死ぬというんです。アホ。アメリカは2年です。
 そして悪いことに人類文化学者から言わせると、95年、平成7年、ここからわが国の女時(めどき)時代なんだそうです。女性と子供がこれから30年間、あらゆるものの中心になるんです。で、このお金を85%使わずにほとんどの方は死んでいく。ご苦労様です。これからあなたの奥様や子供達が使っていく。で、お父さん、働くだけです。
 さあ、こんな日本になりましたが、これからですね、日本はどうやればいいんでしょうか。







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