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Lecture
ガンバレ中小企業
大競争時代を生き抜く経営戦略
 
有限会社 TSKコンサルタンツ
立川昭吾
 
 
日時 平成16年2月6日
場所 長崎全日空ホテル
主催 財団法人九州運輸振興センター
社団法人長崎県トラック協会
 
 みなさん、こんにちは。
 ちょうど春も近くなってきまして、景気も同じようにまもなく、ゆっくりですが上がってきそうな雰囲気があります。
 しかし「ウチの所は全然そんな影響がないじゃないか、何言ってるんだ」というご意見もあると思いますので、今日は、実際何でそうなったのか、なんでこんなに実態と合わないのか、また、それの対応策をお話させていただきたいと思います。
 
自己紹介
 
 まず、私の勝手な自己紹介ですが、多分、皆さんは、今日初めて私の名前を聞かれる方が圧倒的に多いんだと思います。立川昭吾って誰?実は私は小説のモデル、映画のモデル、テレビドラマのモデルになっております。そっちの方がとっても有名でございまして、そっちの方の名前を言いますと、「ああ、そう、あの人がそうなの」となっちゃうんですね。
 なぜ、こうなったのか。実は突然なっちゃったんですね。人生ってのは何が起こるかわからないので、今日はちょっとその辺の話から、皆さんの会社の実態とよく似てますので、お話をしていきたいと思います。
 私は学校を卒業してすぐにですね、普通のサラリーマンをやりまして、36才の時に私に会社から命令が出まして、「お前、元気がいいから子会社の社長やれ」そして、私は言われたとおり子会社の社長になるんです。そして人生が滅茶苦茶に変わっていくんですね。まさかその時は、自分がこうやって皆さんの前でお話するようになるなんて、まったく夢にも思わない。「ああ、そうなんだ」みたいな感じで出向に出ていったんです。「立川さん、あなた、こんなに頑張ってるから、子会社の方に行かない」「ああ、そうですか。どんな会社ですか」「うん、4億5千万円位の借金があるんだけど、まあ、たいしたことないから、みんな本部が面倒みるから、頑張ってよ」「ああ、そうですか」「頑張れよ。君の言うことは何でも聞いてあげる」というから安心して、私行ったんですね。
 でもね、失敗しましたね。中小企業はね、4億とか5億の赤字を持つとね、2度と戻らないんですね、これが。そんなの大企業と違ってね、債務カットなんてしてくれませんから。いわゆるキャッシュフローで借金返すなんて、とんでもない話だったんですね。わからなかったんですよ、私は。ただ頑張ればいいと思ってた。だから、がんばってやったんです。売上げは上がってきました。金も貯まってきました。金、貯まるとですね、なんか知らんけど、本社の経理が来てですね、みんな持って帰っちゃうんですね。いつも無いんです、私の所は。
 
 
 40才すぎまして、ちょっとホッとしましたら、今度は親会社がおかしくなっちゃった。大企業はね、危なくなると私的整理といって、大体金融機関からみんな入ってくるんですね、役員が。当時は長銀だ、興銀だ、富士銀行だ、何だってみんな入ってきちゃう。それで取締役だ、専務だって入ってきちゃって、言うことがコロコロ変わるんですね、これが。右、左って。私の会社なんか、もうやめろと。やめるったって、私、45人の社員抱えてですね、やめろなんて言われたって困っちゃうんですね。
 その時、運の悪いことにですね、役員の方が私に、「立川くん、サラリーマンみたいな気持ちでやってたら、会社なんかやれねえんだ。出向なんかやめて、退職金、全部整理して、株売ってあげるから、これ貰ってお前やれ」「ああそうなんですか、分かりました。多分それがいいでしょう」なんて気楽に退職金を清算して、株に替えてもらってスタートしたんです。それが数年後には、「やめ」ですからね。「やめ」というと、どういうことになりますか。パーですからね、退職金も全部。「えっ、どうなっちゃってるの、これ」さあ、皆さん、悩みました、私。
 今日、もしこの中で会社経営で苦しんでいる方がいらっしゃるとよくわかると思うんですが。皆さん、会社が苦しくなったら、誰にご相談されますか。まず、専務とか、常務とか、経理部長だと思いますが、限界があるんですね。そうすると弁護士さんとか税理士さんになってくるんですね、今度は。私も当然ですね、会社が苦しくなって、どうやって再生したらいいか、そういうのを真剣に思うようになりました。そして弁護士さんに聞きに行ったの。「先生、どうやったら助かりますか」そしたら、先生、何て言ったと思う。「ああ、簡単だよ」「簡単ですか」「うん、明日200万円位用意して来いや」「どうするんですか」「自己破産する」「えっ、自己破産」初めてですね、それでわかりました。弁護士はですね、坊さんですね、完全に。清算決了という、会社が終わると戒名書いてくれるんですね。それでポクポクチーンで一丁上がりで、終わりですわね。「再生、そんなの俺の仕事じゃねえ。再生なんて司法研修所にはない。そんなのコンサルか誰かに聞いてこい。ウチは整理するだけだから」。それで、ザ・エンド。困りました。次は税理士さん。で、税理士先生のところに行ってね、「どうでしょう、ウチの会社、助かりますか」じっと彼は研究してくれました。そして私がですね、「先生、大丈夫ですか」私の顔見てですね、そして一言。「あのね、僕はね、血液型A型なんだよ」「ああそうですか」「大体、税理士ってA型が多いんだよね」「ああそうですか。ところでそれと私の再生と、どう関係があるんですか」「うん、まあ、こんなの分かるわけがないよね。こんなの分かったら私、税理士やらないで、社長やってるもんね」税理士はね、金持ちの味方だから、税金払えないような人に用はないんだ。だから、そういう勉強はない。だから税理士に聞くのは無理である。
 
主催者代表挨拶
(財)九州運輸振興センター理事長 村木文郎
 
連帯保証人制度とノンリコース融資
 
 結局、私は平成3年、ちょうどバブルが終わりかけた時に、会社を整理清算させられるんですね。早い話が倒産会社の社長です。家もなくなりました、お陰で。その時ふと思いました。あれ、俺は何だったんだ。俺、本当に社長って分かってたのかな。社長業って何なんだ。それで初めてですね、これはいかん、社長業を勉強しないとどうしようもない。44才。中学生ですものね、もう上の子は。これはあかんと思いました。それで、もう一回勉強し始めました、社長業を。
 
 
 そうしてる中に、「あれ、何かおかしいな」何がおかしいかというと、日本の中小企業の社長って、みんな銀行に騙されてるのと違う。おかしいんじゃないの、何でこんなふうになってるの。
 まず疑問をもったのは連帯保証人制度。会社倒産したら、家なんかあっというまになくなります。何なんですか、これ。どうしてこうなっちゃうんですか。誰がこんなふうにしたんですか。私は調べました。
 昭和22年にできたんですよ、銀行協会の約定・約款で、銀行協会の人が勝手に決めたんですね、これ。中小企業、当時、日本中みんなひどいんで、社長は資産はないんです。だから何か代わるものとして良い方法はないかね。そうですなあ、江戸時代に徳川家光が作った5人組連帯制度というのがある、これをやりましょうか。これで始まったのが、連帯保証人。それがいつのまにか、包括根保証。全部が保証しなきゃいけない。
 これ、ひどいです、おかしいです。公務員の方が一生懸命働いて退職金もらってですね、息子さんが何か仕事やりたいと言った。お父さん、ちょっと保証人になってよ。保証人になってあげた。そしたら子供が失敗したらですね、お父さんの退職金から家から、一瞬にしてなくなってるんですね。こんなの自殺ですよ。今、3万数千人が1年間に自殺してるという。その半数が連帯保証とかお金の自殺ですよ。こんな制度、世界で日本にしかない。戦後50年も経ってるのに、何にも変わってないの、これ。
 これ、改正せい。なんで改正しないんだ。私は年100回、講演に歩いてる。私は全国に何を言ってるか。2つだけ言っています。
 皆でこの連帯保証人制度をやめませんか。世界と同じような制度に替えませんか。もう一つ、ノンリコース融資にしませんか。長崎の一番繁華街の土地が、一番バブルの時、何十億円だった。今は何億円。銀行は「担保が足りない」と言って「もっと担保よこせ」おかしいじゃないですか。なんであんたがやらなきゃいけないんだ。あなたがやったんじゃないです、この値段に下げたのは。それを何で個人が、追加保証だとか連帯保証をやらなきゃいけない。世界でこんなバカなことやってるのは日本しかないんです。
 質屋に行ってですね、これローレックスだって質屋のおじさんに時計出した。おやじ10万円出した。偽物だった。質屋のおやじ文句言えませんよ、お客さんに。自分の目が悪いんです。これをノンリコースというんです。債権者、貸してる側の貸し手責任はどこにあるんですか。何もなくて、借り手責任ばかり負わされて、そして死んでっちゃう。こんなバカな。世界でちゃんとしたルールが共通にあるんです。なぜ日本だけが採りいれられない。私はめちゃくちゃ不思議になりました。平成10年、日本青年商工会議所の山形大会で私は講演させられた時に、その若い2世の社長さん達に「あんた達若い人がやめないと、お父さん達分からないから、立ち上がらない。あんた達で、みんなで立ち上がろう」と言ったら、みんな、ボーッとしていました。「このおっさん、何言うてんや」。
 
来賓ご挨拶
九州運輸局次長 小野芳計様
 
 それで私はもう言うのをやめました。けれどずっと全国、もう隅から隅まで歩きましたよ。各町村、5人だろうが10人だろうが人の集まってくれる所、説き伏せていきました。そしたら昨年、日本商工会議所が初めてです、いわゆる連帯保証人制度を見直そう。包括根保証制度を変えようと、ようやく立ち上がってくれました。10年かかりました。これから2006年に向かって、連帯保証の制度の改正がようやく動き始めました。ものすごい時間がかかりましたね。
 
破産法
 
 今年、破産法が改正されるんです。皆さん、今、会社倒産すると、どうなるか知ってますか。あんたは20万円現金持ってていいんですよ、会社から。あと2日分の食料だけです、法律で許されているのは。アメリカ、どうなってると思いますか。アメリカ、家OKですよ、車OKですよ。500万円現金OKなんですよ。全然違うじゃないですか。なぜなら第一抵当権者が住宅ローンの場合、どんな人でも第二抵当権を付けることはできないと連邦法で決められているんです。だから家にローンが残っている人は後ろにですね、金融機関が付けられない。付けたって何の意味もない。何故だか知ってますか。会社と生活は違うんや。奥さんと子供の生活まで奪っちゃいけない、法人が。そんな滅茶苦茶な、人間を略奪してしまうような法律はいけないんです。だからアメリカではきちっと分けている。日本はでたらめなんです。何でだ、昭和14年にできてるんだから、破産法は。ようやく今年変えようといってるんです。何十年経ったと思いますか。
 
不渡り時間
 
 金融機関なんかもっといっぱいおかしなことありますよ。お金借りたが、いつまで借りてていいのか。いつまでだったら返済が待ってもらえるのか。ちゃんとルールがあるんです。小切手、不渡り、何時ですか。みんな3時といいます。ところで、経験されたことありませんか。もし、お金がなくなった時、「ちょっとすみません、集金が遅れてるんで4時半頃持って行っていいですか」「いいですよ、裏から来てください」「5時は?」「いいですよ」「何だったら、明日の朝9時」ちょっと待って下さい。いつなんですか、不渡り時間って、3時じゃないんですか。きちっと決まってるんじゃないんですか、法律で。手形帳、小切手帳、くれる時教えてくれましたか。不渡り時間は何時なのか教えてくれませんね。知らしむべからずです。日本の金融機関は教えません。明日の朝の午前11時です。手形交換法でちゃんと決められてるんです。何で教えないんですか。こんなのいっぱいあるんです。私なんか、全然分かりませんでした。今日おいでになってる方も、ほとんど分からないんじゃないかと思います。そういうのが山ほどあります。







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